PLAYER

UP

INTERVIEW – H ZETT NIRE[H ZETTRIO]

  • Interview:Kengo Nakamura
  • Photo:localmaze.co(Live)

コロナ禍を突き進む、革新的ジャズ魂

超絶技巧とパフォーマンス性を両立させたピアニストとアイディアに溢れた躍動的なリズム体による革新的なジャズ・スタイルが、国内/海外/老若男女を問わず魅了している3人組、H ZETTRIO。多くのアーティストがその活動を停滞させたコロナ禍においても、2019年1月から続く48ヵ月連続の新曲シングル・リリースをはじめとした精力的な活動を続けている彼らが、2020年に発表したシングルをまとめた6thアルバム『トリオピック ~激闘の記録~』をリリースした。彼らはいかにして、この世界的パンデミックという局面に立ち向かったのか。ベーシストのH ZETT NIREに、コロナ禍における活動について聞いた。なお、2022年1月19日発売のベース・マガジン2022年2月号でも『トリオピック ~激闘の記録~』でのプレイについて、別角度で行なったインタビューを掲載している。そちらもあわせてチェックしてほしい。

“うん、まぁ続けるでしょ”っていう感じになっていて(笑)。
逆に止まるほうが変みたいな。

━━このコロナ禍で多くのミュージシャンが活動の変更を余儀なくされましたが、H ZETTRIOはわりと早い段階で無観客ライヴをしていましたよね?

 コロナが流行り始めた本当に初期の2020年の2月にツアーを組んでいたんです。その頃って、“コロナってなんだ?”からだんだん、“これはちょっとヤバいぞ”となってきたくらいの時期で。ツアーの初日は開催できたんですけど、客席でマスクをしている人がかなり多くて“これはヤバいな”と感じましたね。そうしたらもう次の週からのライヴは全部中止になってしまって。どうしようかというところで手探りで無観客ライヴを始めた感じでした。

━━今でこそ配信ライヴも定着してきましたが、最初に戸惑いはありませんでしたか?

 最初は4月にスタジオで配信ライヴをやったんですけど、当時は1回目の緊急事態宣言が出た直後で、“家から出るな”みたいな空気だったのを覚えています。だから無観客とはいえ、そもそもライヴ自体ができるのかなと思いました。最初の頃は演奏し終わったあとの空気感が普通のライヴとは違うので、そこは戸惑いましたね。お客さんがいたら、曲が終わったら拍手とかワーッと盛り上がってくれるんですけど、無観客なのでシーン……としていて(笑)。“大丈夫? これみんなちゃんと聴こえているんだよね?”っていう変な感じになりましたね。ただ配信ライヴの良いところは、コメント機能で文字のリアクションをしてもらえるところ。“今の良かったですよ!”とか“聴いてますよ!”っていうリクションがリアルタイムで来たりして、これはこれでおもしろいかもなって感じ始めて。

━━ベースの場合は普段からラインで音を出すこともあり、配信ライヴになっても普段とあまり変わらずに音作りをできるという人もいますが、NIREさんはサウンドメイクについてはどうでしたか?

 セッティング自体は基本的に普段と変わらなくて、いつもラインで出しているので配信ライヴもラインで出しました。ただ、弾いている感触としては、ホールとかだと会場の響きがあるんですけど、そこがないというのは良い部分と悪い部分がありましたね。良い部分としてはスッキリして弾きやすいっていうこと。低音ってどうしてもまわるし、それがないと自分の音がハッキリとモニタリングできて弾きやすい。その一方で、普段のグワッと会場が響く感じがないと、やっぱりちょっと寂しいかなっていうのはありました。

左から、H ZETT KOU(d/銀鼻)、H ZETT M(p/青鼻)、H ZETT NIRE(b/赤鼻)。
『トリオピック ~激闘の記録~』
apart.RECORDS/APPR-3020(EXCITING FLIGHT 盤)
『トリオピック ~激闘の記録~』
anaked.RECORDS/QECW-1011 (DYNAMIC FLIGHT 盤)

━━2021年はコンセプト・アルバム『SPEED MUSIC ソクドノオンガクvol.3』、『同vol.4』、『同vol.5』の発売もありつつ、コロナ以前から継続している48ヵ月連続の新曲シングル・リリースもありと、ずっと何かしらリリースがある状態が続いていますが、これって結構ゴールが見えないような状態なのかなと思ったりもするんです。モチベーションはいかがですか?

 確か前回のインタビュー(2020年1月号)あたりは、“これ、どこまでやるんだろう?”っていう気持ちだったんですけど、今はもうその状態が普通になってきましたね。サイクルができてきたと言いますか。だから“うん、まぁ続けるでしょ”っていう感じになっていて(笑)。逆に止まるほうが変みたいな。コロナ禍でもそんなにヘコんでませんよっていう姿を見せることで、ファンの人が自分たちも頑張ろうと思ってくれるといいなっていうところもあったりしますね。

━━前作の『RE-SO-LA』も12ヵ月連続でリリースした配信シングルをまとめたものでした。月イチ配信が延長されたことで、いずれはそれがアルバムになるということも頭にあったと思いますが、楽曲の振り幅というのは、ある程度先を見据えていたんですか? 例えば2020年はこんな感じ、2021年はこんな感じにしていこうと、年の初めに話したりとか。

 そういうことを話し合って決めることはないんですよね。実際は何曲かまとめて録ったりするので、そのときに“この曲が先のほうがいいかな?”とかは決めたりしますけど。まとめるっていうことで言うと、年の終わりのアルバムが見えてくる頃になってから少しバランスを取ったりというのはあるかな。あとは基本的には曲を書いているH ZETT M(p)さんが多分調整したりバランスを取ってくれているのかなと思います(笑)。

▼ 続きは次ページへ ▼