PLAYER
UP
INTERVIEW – Jun Yokoe[PLASTICZOOMS]
- Interview:Koji Kano
- Photo:Yuki Sugiura
ダークネスに映える“二刀流”の低音
ポスト・パンク、ニュー・ウェイヴ、ゴシックといったコアなサウンドを独自のフィルターでアップデートし発信するロック・バンド=PLASTICZOOMS。日本のみならず、ヨーロッパを中心に世界各国からも支持を集める彼らが、3月31日に4年ぶりとなるフル・アルバム『Wave Elevation』をリリースした。ベーシストのJun Yokoeは生ベースとシンセ・ベースの“二刀流”のプレイを展開。多様なサウンドを駆使することで、プレイヤーとしてのスキルの高さを証明している。この“4年”という制作期間で彼らは自らの音楽にどう向き合ったのか。ポスト・パンク/ニュー・ウェイヴの伝道師が鳴らす、“逆輸入”サウンドの実態に迫っていきたい。
ファッションと音楽を絡めてひとつのカルチャーにしたい
━━本誌初登場ということで、プロフィールから聞いていこうと思います。ベースはいつ始めたんですか?
ベースを始めたのは15歳のときです。地元のライヴハウスにライヴを観に行ったとき、その日出演していたベーシストにめちゃめちゃカッコいいプレイヤーがいて、“自分も触ってみたい”と思ってチャレンジしたのがきっかけです。
━━それはどんなバンドだったんですか?
ニルヴァーナやサウンドガーデンみたいな超オルタナティヴなバンドでしたね。当時爆音のライヴハウスでそのサウンドを体感して受けた衝撃は大きかったです。
━━なるほど。では影響を受けたアーティストは?
ニルヴァーナやアリス・イン・チェインズはずっと好きなバンドです。あと楽器に触れてからはストーン・ローゼズとかニュー・オーダーかな。最近は一周回ってミクスチャー系の音楽からも影響を受けています。
━━PLASTICZOOMS(以下略称、プラズ)は80’sポスト・パンク、ニュー・ウェイヴ、ゴシックといったコアな音楽がルーツにありますが、その音楽にはいつ触れたんですか?
プラズに加入してからです。加入するにあたってSho(Asakawa/vo)君におすすめのアーティストからファッションまでいろいろなことを教えてもらいつつ、おもしろいなと。バンドのコンセプトとしても“ファッションを通じての音楽”といったように、ファッションと音楽を絡めてひとつのカルチャーにしたいという思いも込められているんです。
━━プラズは2015年からは1年間ドイツ・ベルリンに拠点を移すなど、ヨーロッパをはじめとした世界各国からも評価を受けていますね。
もともと海外のリスナーからも評価をいただいていたんですよ。例えばMyspaceだと、なぜかフランスとかメキシコに僕たちのファンクラブがあったりとか、海外のファッションショーで知らぬ間に自分たちの曲が使われていたりとか(笑)。
━━すごいですね(笑)。では海外で人気が出たきっかけは?
強いて言えば、ザ・ホラーズの存在が大きかったかなと。スキニーとヒール・ブーツにあの音楽性っていうのは当時ひとつのシーンになりましたからね。UKインディーが世界中に広がっていくなかで、ちょうど日本でも僕たちが活動を始めたタイミングだったのかなと思います。
━━ポスト・パンクやニュー・ウェイヴのサウンドの特徴のひとつが“シンセ・ベース”ですね。プラズではシンベはいつ導入したんですか?
2012年の2ndアルバム『STARBOW』から入っていて、当時はメンバーにキーボードがいて、できることの幅が広がった時期だったんです。最初はシンベといってもレコーディングでMIDIを走らすくらいのベース・ラインだったんですけど、本場ベルリンのクラブ・シーンのようなバッキバキのシンベに影響されて、それを自分たちのなかで消化して形にできたのが前作の『PLASTICZOOMS』かなと。そこをきっかけによりシンベにのめり込んでいきました。
━━今作『Wave Elevation』は4年ぶりのフル作になります。この間にはシングルのリリースもありましたが、今作のコンセプトにはどのようなものがあったのですか?
今作は4年くらいの期間をかけて制作したんです。それこそ3年前にできた曲もあれば昨年できた曲もあったりと、合計200曲くらいSho君がトラックを作ったんですよ。それをパッケージ化するときのコンセプトとして、ここ一年の劇的な社会情勢の変化とそれに伴う人生の変化、そのなかで気持ちが落ち込むこともあれば、高揚することもある。そういったみんなのドラマティックなアップ・ダウン、“気の上昇”を表現したんですよ。このキーワードをもとに楽曲の選定を行なっていきました。
━━「The Worm」はプラズらしいダークでニュー・ウェイヴな一曲ですね。後ノリなシンベのフレーズも印象的です。
Sho君は自分の感性をアップデートするために、よくベルリンに行ってるんですけど、この曲はそこで出会った現地のDJやサウンド・プロデューサーと一緒に音色を作っていったんです。向こうだといかに踊れるサウンドにできるかがポイントで、加えてベースはローが飽和しないように、曲がいい意味で固まって聴こえるようにアレンジしました。なので“逆輸入”って感覚のほうが近いかもしれませんね(笑)。
▼ 続きは次ページへ ▼