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FEATURED BASSIST – ヘンリック[ダーティ・ループス]
- Interview:Zine Hagihara and Tommy Morley
弾いたテイクをMIDIで書き出して、シンセで作った低音をブレンドさせた。
━━「ロック・ユー」は、フィル・インごとにベースとドラムの強弱やアクセント、リズムなどが見事に組み合っていてアレンジの緻密さを感じました。こういったプレイやアプローチは綿密な打ち合わせで作られるものですよね?
そうだね。そういった細かいリズムや音符の部分まで僕らは話し合っていて、かなりアレンジを詰め込んで作っているんだ。だけど、それと同時にコピー&ペーストじゃ済まないような、ドラムとベースのインタープレイにも細心の注意を払っている。そうやって生まれたフィル・インやフレーズが、曲としては一定のグルーヴを保っていながらも部分部分でバリエーションをもたらしているんだと思う。
━━「ワーク・シット・アウト」では、ベース・プレイの強弱や配置などがかなり精密で、プレイする際のコントロール力を感じさせました。でも、ただ機械的なだけでなく、ときおり入れる空ピッキングなどは生々しいニュアンスを生んでいて深みのあるプレイになっていますね。
僕らは納得がいくまで何度も何度もテイクを重ねるんだ。だけど、それでも時にはちょっとしたエディットを加えたりもする。人間らしいサウンドにしたいっていう思いは常にあるけどさ、曲のキャラクターを考えた結果、どうしてもカッチリ当て込む必要が出てくるときがあるんだ。そんなときにエディットをする。
━━なるほど。
例えば、16分でリズムを刻んでいるなかで、“ここ!”っていうポイントだけにアクセントを加えたほうがいいって判断した場合は、そのポイントだけヴォリュームをちょっと持ち上げるなんてこともある。これは、あくまでポスト・プロダクションの一環としてやっている感覚ではあるね。
━━何度もテイクを重ねるプレイヤーとしてのこだわりもありながら、ポスト・プロダクションで追い込めるコンポーズ的視点もあわせ持っているんですね。
僕は自分が弾いたテイクをMIDIで書き出して、アクセントになるようにシンセで作った低音をオリジナルのテイクにブレンドさせたりもするんだ。オーディオ信号を直接MIDI化する方法もあるんだろうけど、やり方がわからなかったからグリッドを見ながらMIDIで打ち込んでいったよ。
━━「ワールド・オン・ファイア」は16分の裏拍にアクセントを置いたファンキーなプレイが最高にクールです。
この曲はブリトニー・スピアーズの「サーカス」のカバーのグルーヴに近いんだけど、サビの最初のふたつのコードもまったく同じでね。これをどうにか別のものに展開できないかって考えて作ったんだ。ベースのフレーズ、リズムも、そのベーシックのグルーヴに基づいて弾いている。
━━ベース・ソロも秀逸で、細かいパッセージのスラップからコーラスのかかったメロディ・プレイという流れになっていますね。
このベース・ソロに限らず、今回のアルバムは素晴らしいエンジニアのサイモンによって最高のサウンドに仕上がっていてさ、このソロにもディストーションを少し加えてくれていて、それによってよりメロディックな仕上がりになったんだ。サイモンに録音したテイクを送ると“OK、なんとかするよ!”と言って僕の気に入る形で送り返してくれた。このベース・ソロが素晴らしいサウンドとプレイになったのは彼のおかげでもあると思っているよ。
━━なるほど。スラップもいつもよりアグレッシブなサウンドに感じたのはそのためなんですね。
スラップの部分も僕のスタイルそのものといった感じだけど、いつもよりは少しラウドに感じるかもね。少しだけステレオで広げたり、ほかにもサイモンが手を加えてくれたみたいだ。何をどうしたのか、細かいところまでは把握しきれないけど、気に入っているからこの形でよかった。