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FEATURED BASSIST – ヘンリック[ダーティ・ループス]

  • Interview:Zine Hagihara and Tommy Morley

試行錯誤の先にある、超絶技巧の機能美

技巧派の凄腕が集まったスウェーデンの3ピース・バンド、ダーティ・ループス。彼らの音楽には、単にテクニック面での派手さがあるだけではなく、不思議とキャッチーさが共存している。それは、歌やリード楽器に対して最もフィットするプレイを、トライ&エラーを繰り返すことで追求するストイックさによるものだろう。1st作『ダーティ・ループス』(原題:Loopified/2014年)から約6年の期間を空けて11月に発表された2nd作『フェニックス』は、そのこだわりが発揮されたバリエーション豊かな楽曲が収録されている。ヘンリックは高速スラップなどのテクニカルなプレイも随所で聴かせてくれるが、今作においてはフレーズメイクを他メンバーに委ねる場面もあったという。その真意と、技巧派のテクニックを楽曲に生かす哲学について語ってもらった。

INTERVEIW

細かいリズムや音符の部分まで話し合って
かなりアレンジを詰め込んでいる。

━━新作アルバム『フェニックス』は、『ダーティ・ループス』(原題:Loopified)以来、6年ぶりのアルバムとなりましたが、作品をリリースすることになったきっかけとは?

 この2ndアルバムを作るにあたって、やらなければならないことがあまりにもたくさんあってさ。それで気づいたら6年間という期間になってしまったんだと思う。一番の理由というと、自分たちで自分自身を精神的に追い込んでしまったのが原因だったんだ、“納得がいく、良い曲を書かなければならない!”ってね。

━━新曲が5曲あり、そのほかにはボーナス・トラックとしてYouTubeで人気を博したセッション動画シリーズ“SONG FOR LOVERS”から4曲が収録されています。新曲に関しては、1曲ずつ時間をかけて作っていったんでしょうか?

 曲は2曲ずつ同時に進めながら作っていった感じだよ。2曲を同時に作っているから適度に気分転換もできて、それでけっこううまくいったんじゃないかな。“アルバムを作る!”っていう大きな考え方よりも、僕らは自分たちのペースを維持しながら、少しずつでも良いと思えるものを作っていくやり方が気楽でいられるんだ。楽しみながらできたし、ストイックなところもしっかりと向き合って、作品作りを続けることができたよ。

『フェニックス』
ダーティ・ループス

ユニバーサル/UCCJ-2188
左からアーロン(d)、ジョナ(vo,k)、ヘンリック。
『フェニックス』ティザー映像

━━ダーティ・ループスの楽曲は緻密な構成や見事に組み上がったテクニカルな演奏が魅力ですが、楽曲はDTM上で打ち合わせていくものですか?

 前に出した作品と作り方がちょっと変わったかな。このアルバムを作っているなかでもジョナ(vo,k)はソロ・アーティストとして活動していたから、まずはアーロン(d)と僕で曲の原型を作り始めて、アレンジの段階からジョナが合流するやり方だったんだ。で、アーロンはDTMの環境をあまり整えているタイプじゃなくてさ、Logicもバージョン9で止まっていたんだよ(笑)。それでもビートやグルーヴは充分に作ることができたし、たくさんのアイディアをもたらしてくれた。それに対して僕はキーボード・パートを当てハメてみたりして、小さなアイディアを膨らませていったんだ。

━━ベース・ラインはどのように当てハメていくんですか?

 いろんなやり方があるけど、このアルバムで言うと、例えば「ワーク・シット・アウト」のベース・ラインは、もともとはジョナがシンセサイザーを使って作ったもので、それを僕がエレキ・ベースに置き換えてプレイしている。「ロック・ユー」も同じやり方だったかな。

━━自分が担当する楽器だけでなく、他パートも含めてみんなで作り上げていったんですね。

 そうだね。僕がキーボード・パートのアイディアを出していたり、ジョナがベース・ラインを作っていたり、担当する楽器の範囲を超えたやり方だったけど、このアルバムではそれがうまくいったんだ。ほかにも、アーロンと僕でコード進行をいろいろと置き換えてみたりしてアレンジした曲もあるし、今回のアルバムは作曲面だと、従来の作り方とはけっこう違っていたかもね。

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