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    プロのベース練習、覗いてみた。– 第1回:高木祥太(BREIMEN)

    • 取材:伊藤大輔
    • 撮影:小原啓樹
    • Presented by Positive Grid

    プロのミュージシャンは、どんな練習を積み重ねてきたのか?──本連載では毎回、異なるベーシストに登場いただき、自身の練習遍歴や現在のルーティンについて語ってもらう。

    第1回に登場するのは、ソウル/ファンクを軸にジャンルを横断するサウンドで注目を集める5人組、BREIMENのベーシスト & ヴォーカリスト、高木祥太。バンドの音楽的中核を担う彼が、クリック練習を突き詰めて得た“タイム感の鍛え方”、基礎練を楽しむコツ、そして自宅練習ツールとして話題のワイヤレス・ヘッドフォン・アンプ“Spark NEO”のインプレッションまで、たっぷりと語ってくれた。

    高木祥太(BREIMEN)が語る、
    プロ・ベーシストの“自宅練習”

    高木祥太(BREIMEN)

    家族みんなが練習をしているという環境だったから、基礎練が当たり前でした。

     いろいろありますが、明確に覚えているのはマイケル・ジャクソンの『Off the Wall』とジャミロクワイの作品ですね。どっちもすごくフレーズが秀逸だし、ジェームス・ブラウンのようなルーツっぽいのとは違ってコード進行もあるなかでファンクの要素もあるので、フレーズの宝庫だと思います。

     でも、その後はひとりでコピーすることはあまりなくて、学生の頃はほかの楽器のメンバーと一緒にコピーして演奏するってやり方でした。一時は旧体制(無礼メン)の田中航(d)と一緒にずっと練習もをしていました。ドラマーはいろんなクリック練習のアイディアを持ってるから、それを一緒にやったり、タワー・オブ・パワーの「What Is Hip?」をふたりでコピーしたりしていました。

     これは俺のバイブルだからあんまり言いたくないけど、一番好きなベーシストのポール・ジャクソンがマイク・クラークと一緒に演奏している教則映像『Funk and Swing Grooves』が、教則ビデオっぽくなくて最高です。それとフランシス・ロッコ・プレスティアの『Fingerstyle Funk Bass Lesson』です。ロッコの左手ミュートのスタイルはけっこう参考にしていて、手でちょっとコンプしたいってときに彼のような左手のミュートを使っています。

     いや、全然やるし、むしろ基礎練好きですよ。両親がミュージシャンだったので、家に帰ると、家族みんなが練習をしているという環境だったから、基礎練が当たり前でした。ベースを始めたときも、何かをコピーするよりも前から基礎練をやっていました。ただいっとき練習をお休みしていて、今年から再び基礎練習を再開しました。

     ベースを弾くというフィジカルの部分が、自分のなかで“少し落ちたな”と感じたんですよ。高校生の頃から20代前半くらいは、毎日ベースを触らないと気が済まなくて、ずっと練習していて。でも、20代後半になって何だかんだで毎日ベースを弾く機会があるから基礎練習から離れていて……それでもう一回基礎に立ち返ろうと思い、年始から一日も休まずに基礎練していますね。

     そうです。あとはクロマチックとか、音楽的じゃない単純なフィジカルの鍛錬ですね。基礎練は自分がプリンターだとしたら印刷の精度を上げるために、フィジカルに振り切ったものだと思っています。基礎練って、普段はあまり使わない左手の動きとか、日常の中でデフォルトになっていないものを取り入れられることに良さがあると思っていて。そうすると新しいフレーズをコピーするときも、結果早くなるんじゃないかなって思います。

    俺はこう見えてもA型だから、めちゃくちゃ細かいんです。

    高木祥太(BREIMEN)

     俺はこう見えてもA型だから、めちゃくちゃ細かいんです。だから毎日やっている基礎練のメニューをiPhoneのメモに書いています。見ますか?

    高木祥太(BREIMEN) 基礎練メニュー
    高木の基礎練メニュー

     これは確か、リットーの教則本『地獄のメカニカル・トレーニング』にあったフレーズだった気もするんですけど、一見したらただのクロマチックなフレーズです。若い頃はこれを普通にクリックをオモテで鳴らして合わせていました(EX-1)。でも、今は基礎練のクリックの意義を考え直していて、クリックに合わせにいくんじゃなくて、ズラしていく練習をやっています。

    基礎練メニュー Ex-1
    Ex-1

     例えば、クリックの1拍の間隔を3拍で捉えつつ、フレーズは4音で進行していくと、ひとつずつズレていくっていう。

     左手の4音のフレーズのほうがズレていくんだけど、あくまでテンポの主軸はそっち(左手)側にあって、クリックのほうがズレていくような意識なんです。どっちを意識して聴くかっていうだけですが、演奏する側としてはこの意識の差がすごく大きい。そうやってクリックを捉えることで……なんていうんだろう、すげぇタイムのいい別の楽器のプレイヤーみたいに感じて、なんか変なところにずっと入れてくるみたいな感じになる。

     俺的にこの練習の意義は基礎練っていう単純な指の反復運動とは別に、どれくらいまわりの音を常に聴けているかというトレーニングになると思ってます。この方法だと意識してクリックを聴きながら弾かないと、本当に戻ってこれなくなります。だからクリック練を突き詰めたパターンだとは思いますけど。

     初心者の人はクリックのアタマに合わせるでもいいし、もうちょっと弾ける人ならウラ拍に合わせるのでもいいと思います。フレーズ自体は簡単だから、例えば俺がNARUTOのロック・リーだとしたら、重りを付けてやっているような感じですね。

     そうだなぁ、これはいいかも。ジャコパスが教則ビデオで弾いていたフレーズ(Ex-2)が元になっていて。スケール練習になるんですが、Gmでルート、3rd、5th、7th、9th、11thまで上がったら下降していき、オクターヴ下の9thを入れてからGに戻る。次は半音上がってルートがA♭で、M3th、5th、M7th、9th、♯11th、同じく下降でオク下の9thを入れて、という繰り返しです。エクササイズ系ではあるけど、ちゃんと音階があって展開もできるから、弾いていて楽しいです。

    基礎練メニュー Ex-2
    Ex-2

     もうひとつ、基礎練の良いところは、ほかの練習と組み合わせられることですね。例えば、自分が体得した指弾きのメカニカル・フレーズを今度は全部スラップで弾いてみるとか。そうしたときに指で弾いたときとどのくらい差が出るのか、それを正確に測ることができます。あとは……どうなんですかね。今回のべーマガ5月号の練習企画だとみなさん、どんなフレーズを紹介しているのかな。

     そうなんだ……そう言われると何だか俺も対抗したくなるな……じゃあ本当に何の元ネタもなくやっている最高難度を紹介します。さっき話したクリック連の発展形ですが、3連のフィールでテンポをBPM80くらいに落として、これを8分ウラで捉えると、クリックが鳴っている場所が全部、弾かないタイミングになります(Ex-3)。これをキープして弾くのはめちゃ大変ですね。

    大体はクリックが鳴る場所と自分が弾く場所がどこかで合致するから、そこで調整ができるけど、これはそれが1回もない。譜面に書くとただの3連符なので伝わりにくいかもだけど、これが俺が知ってるクリック練習のなかで一番難しい……っていうやつです。

    基礎練メニュー Ex-3
    Ex-3

     いろいろと難しい基礎練の話をしましたが、練習は楽しくやるのが絶対に良いと思ってて、俺はたまたま基礎練が性に合っているからこれが楽しいんですよ。でも、基礎練なんて楽しくないよって思う人もいるし、それならやらなくてもいい。そういう人のほうが多いと思うから。コピーでもいいし、楽しく弾ける練習方法を探したら良いと思います。あと俺はアンサンブルのなかで実践を積んでいくのが、一番の練習だと思っているから、基礎練はその前提のうえにあるのが良いと思います。

    ▼ Ex-1〜3の実演 &解説 動画も公開!▼

    Spark NEO × 高木祥太(BREIMEN)

    スマート・アンプでおなじみのPositive Gridが手がけたSpark NEOは、ヘッドフォン・スタイルで自宅練習の自由度を大きく広げてくれる注目アイテムだ。Spark NEOを使った自宅練習の可能性について、高木に聞いた

    Spark NEO
    Positive Grid / Spark NEO

    練習をするときって、あまりストイックな環境じゃないほうがいいと思っていて。
    Spark NEOがあれば、相当楽しく練習できると思いますね。

     これ、普通に欲しいですね。まず練習に特化した製品というのが良いです。俺がベースを弾くときはアンプを鳴らすことが多いけど、面倒くさがりだからアンプの電源を入れてシールドをつなぐのすら面倒だと思うこともあり、ベースそのままで弾くこともあります。でも、Positive Grid / Spark NEOはヘッドフォンをつけて楽器にトランスミッターを挿せばすぐに音が出せる。このスピード感がすごく良い。

     ヘッドホンはワイヤレスで付け心地も良くて、あとはベースの音量をヘッドフォンのヴォリューム・ボタンで直接調節できるのがとても使いやすい。例えば、YouTubeに合わせてベースを弾くときも、DAWだとベースとオケ(YouTube)の音量バランスを取るのが絶妙にめんどくさいけど、ボタンですぐに調整できるのが便利でした。

    高木祥太(BREIMEN)
    密閉性に優れたイヤーパッドは長時間の装着でも疲れにくく、集中した練習をサポートしてくれる。

     アンプのエミュレートはかなりリアルというか、ヘッドフォンだけどアンプをマイク録りしたようなエアー感や奥行きがあって、新感覚のサウンドでした。俺の経験だとヘッドフォンで聴くベースの音って基本的にラインがメインだから、アンプだけの音を耳につけるデバイスから直接聴く機会はなかったので、その意味でもSpark NEOの音はすごく新鮮に感じました。エフェクターは、ギターと比べてベース専用のものはまだこれから充実していく段階だと思うけれど、個人的にディレイがすごく好きなので、いろんなディレイ・ペダルを試せたのが楽しかったですね。こういうところから生まれるフレーズもあって、弾いていてふと思いついたものをすぐに試せたり、新しい音色やアイディアが生まれる可能性を感じました。

     AI機能はAuto Chordsに未来を感じました。Apple MusicやYouTubeと連携できて、試しにヴルフペックの曲を選択したら自動でコードが表示され、AIによるコード分析もここまできたんだなと驚きました。一方で、自分でコードを探るプロセスを大事にしているようなストイックなプレイヤーにとっては、どう活用するかがポイントになるかもしれませんね。もちろんライトに楽しんだり、効率的に練習したい人にとっては、本当に便利な機能だと思います。

     俺は練習をするときって、あまりストイックな環境じゃないほうがいいと思っていて。そういうときこそ楽しく弾けることが続けていくためにもすごく大事で。Spark NEOがあれば、相当楽しく練習できると思いますね。

    Spark NEO
    トランスミッターとのセットで接続も簡単。低レイテンシー設計により音切れもなく、快適なプレイが可能。ヘッドフォン、トランスミッターともに付属のUSB-Cケーブルで充電して使用する。
    Spark NEO
    専用アプリSpark Appと接続すれば、音作りからジャム・セッションまで多彩な機能が利用可能だ。33種のアンプと43種のエフェクト、10万以上のToneCloudトーンにアクセスでき、ベース用のアンプやエフェクターもラインナップされている。

    ▼ Positive Grid / Spark NEOの詳細はこちら ▼

    高木祥太 Profile
    たかぎ・しょうた●1995年生まれ、神奈川県出身。高校時代にベースを始め、亀田誠治主催のコンテスト“亀田杯”では、ベース歴わずか1年ながら最年少の17歳でファイナリストに選出される。 2015年に6人組バンド“無礼メン”を結成し、2018年からは現編成でベース/ヴォーカルを担当、バンド名を“BREIMEN”に改名。 以降、3枚のアルバムを経て、2024年4月にはメジャー1stアルバム『AVEANTIN』をリリース。2025年1月には、TVアニメ『Dr.STONE SCIENCE FUTURE』第4期ファイナルシーズン第1クールのエンディングテーマとなる新曲「Rolling Stone」を配信リリースし、さらなる注目を集めている。バンド活動と並行して、TempalayやTENDREのサポートなど、セッション・ベーシストとしても幅広く活躍している。
    BREIMEN HP X Instagram
    高木祥太 X Instagram

    ベース・マガジン5月号でも「練習」を大特集!

    ベース・マガジン5月号でも「練習」を大特集! 亀田誠治×矢花黎(B&ZAI)の対談のほか、武田祐介(RADWIMPS)、穴見真吾(緑黄色社会)、リチャード・ボナ、 山下昌良(LOUDNESS)、吉田一郎不可触世界、二家本亮介、MINA、朱李(トゲナシトゲアリ)× 綿引裕太がそれぞれの練習法を公開。さらに、腱鞘炎の予防や弱点克服のトレーニング・カリキュラムまで、“ベースがうまくなりたい”すべての人に贈る保存版特集となっています!