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【Heavy Bassists Meeting】Sayaka(HAGANE)× 高畑治央(兀突骨)× HARU(BRIDEAR)
- Interview:Koji Kano
- Photo:Chika Suzuki
メタルにスラップを入れることでバンドの差別化を図りたかった。
━━高畑治央
――プレイ・スタイルとしてはHARUさんがピック弾き、高畑さんとSayakaさんは指弾きになりますね。
高畑:最初はマルチ・プレイヤーになりたくてピックでも弾いていましたけど、指のほうが自分にもバンド・サウンドにも合っていたんです。信じられない速さでユニゾンするようなプレイだとピックのほうがいいかもしれませんけど、そこまでの速さを必要としていない。だから自分のスタイルとして割り切ってやっています。
Sayaka:私はもともと好きなベーシストが指弾きだからっていうところが入りですね。でもその後もピックをやらなかった理由としては、私は野球とかバドミントン、卓球みたいな道具を持ってやる競技が苦手で、体操とか水泳みたいな体ひとつでやる競技のほうが好きだったので、そういうところから指弾きにしているんですよね(笑)。
HARU:意外な回答(笑)。
高畑:うん、その気持ちもわかるよ。一個考えるところが増えますから。
HARU:私は単純にピックが好きだし、ピックで弾いたときのアタック感が欲しいんですよ。感覚としてもピックのほうが楽しいし、どういうピッキングをしたらアンサンブルに絡んでいけるか、オルタネイトで部分的に粒を抜いたらまた違ったニュアンスが出せるなって考えるのも楽しいんですよね。
――高畑さんと言えばスラップでもありますが、ヘヴィロックにおけるスラップ・ベースの意義・強みとしてはどのように考えていますか?
高畑:きっかけとしては、メタルにスラップを入れることでバンドの差別化を図りたかったんです。ほかのバンドがやっていないことをやりたかったってこと。90年代はクロスオーバー・ブームでそういうバンドもいくつかいましたけど、デスメタルにスラップを入れているのはレアだったんですよ。加えてヴォーカルもやることでより個性的になったし評判も良かった。“兀突骨高畑のベース・サウンド”っていう名刺にもなったし、もっとこのスタイルを突き詰めたいなってことで、兀突骨の曲には必ずどこかにスラップを入れたいとは思っています。まぁ疲れるんですけどね(笑)。
HARU:もちろん作曲的な目線もありますけど、私はスラップを飛び道具的な立ち位置として考えていて、おもしろくするためのひとつのフックとして取り入れています。あとスラップのときはスラップ用の音作りにしていて、音が細くならないようにミドルを意識した音作りにしています。最近はやっていないんですけど、スラップしながらワウ・ペダルを踏むのがめちゃ好きで、もともとそれをやりたくて練習しだしたんです(笑)。
高畑:メタルでワウ・ペダルって難しいよね。俺もワウ・ペダルが大好きでしばらく入れていましたけど、なかなか使う場面がないんですよ。
HARU:そうなんです。なかなかやらせてもらえないんですよ。昔ワウのスラップを入れたいがためのフレーズを考えたこともありましたから(笑)。
高畑:変にファンクっぽくしちゃうと“お前らメタルじゃないじゃん”って言われちゃうし。
HARU:一瞬のためにワウを持ち歩くのは重すぎますしね。
Sayaka:ワウ・ペダルは気にはなりますけど触ったことないなぁ。私もスラップ自体は好きなんですけど、これから先もHAGANEの曲にスラップが出てくることはないと言われています(笑)。
――近年日本のヘヴィロックは世界的にも注目を集めていて、多くのバンドが海外リスナーを取り込んでいます。日本のヘヴィロックが海外から支持されている状況をどう捉えていますか?
高畑:日本のロックって独特でオリジナリティがあるんですよ。海外にはいろいろと行っていますけど、まず向こうにはガールズ・バンドってシーンがないですから。
HARU:そう言われてみると、私たちも海外でガールズ・バンドに出会ったことは一回しかないですね!
高畑:ただ兀突骨でシンガポールに行ったとき、女の子のスラッシュメタル・バンドがいましたね。でもキャワワ系じゃなくて“ぶっ殺すぞ系”でしたけど(笑)。怖かった〜。
Sayaka:“ぶっ殺すぞ系”ってどんなんですか(笑)。
高畑:紅夜叉とか女子プロレスラーみたいな感じで、とにかく話しかけづらかった(笑)。だからガールズ・ロックのほかにもウチみたいな純和風なバンドがいたりとか、日本のシーンって海外からすると新鮮さがあると思うんです。実際、海外のリスナーに“西洋の文化の影響を受けてない東洋のバンドはすごく斬新だ”って絶賛してもらったこともあるし、日本人がどんなに西洋的なことをやってもどこかアジアンチックに聴こえるみたいなんですよ。俺らは海外だとMCも英語でやるんですけど、爆笑を取ったりとか、ユーモア・センスを評価してもらえることも多いですから。
Sayaka:海外でもすべり知らずなんですね。
高畑:“こういうバンドはヨーロッパにはいない”って言われるしね(笑)。だから日本独自のこのシーンをもっと海外に示したほうがいいと思います。向こうにもキャワワ系が現われてほしいですけど(笑)。
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