SPECIAL
バンド・サウンドを拡張する低音哲学
2020年に記念すべきデビュー15周年を迎えていたRADWIMPS。世界的パンデミックの影響で予定していたツアーが変更を余儀なくされるなど、ほかの多くのアーティストと同様に苦難のときを過ごした彼らが、3年ぶりのニュー・アルバム『FOREVER DAZE』を完成させた。昨今の世界的音楽事情を踏まえたかのような、既成概念的ロック・バンド・サウンドを超越したアプローチの楽曲群が並んだ本作は、多くの曲でシンセ・ベースが取り入れられ、ベーシストの武田祐介は、だからこそ生ベースのアプローチに対して悩んだ部分もあるという。生ベースのアプローチは2022年1月19日発売のベース・マガジン2月号掲載のインタビューに譲り、ここではシンセ・ベースのアプローチについて聞いた。
Interview
エレキ・ベースを弾くだけのポジションではいられない。
━━新型コロナの問題が勃発した2020年はメジャー・デビュー15周年というメモリアル・イヤーでもありました。初のドーム公演を含む国内ツアーや、一部未発表でしたが予定していた中国本土、ヨーロッパ、北米、アジアを回る海外ツアーは中止となってしまいましたが、武田さんはコロナ禍をどう過ごしていたんですか?
初めて緊急事態宣言が出た当初は短いスパンで終わると思っていたし、一度にすべての公演が中止になったわけではなく、次々に公演が中止になっていって。さすがに1ヵ月後にはできるだろうと思っていたのに、結局はすべてダメになったんですよね。そこから少しの間は本当に何も手につかなくて家でボーっとしていました(笑)。でも少し経ってから、ありがたいことに音楽番組で“パフォーマンスしませんか?”というお誘いをいただいて、それに向けて曲を作ろうという提案が(野田)洋次郎(vo,g)からあったんです。そういう状況が僕らの背中を押してくれたというか、ようやく一歩前に進めるようになりました。
━━コロナ禍の過ごし方をベーシストに聞いてみると、家にいる時間が増えて、ベースの練習をしたり、自身のルーツに再度向き合ったという人が多かったのですが、そこはちょっと違う感じだったんですね(笑)。
みんなマジメだなぁ(笑)。そういうのってベーシストっぽいですよね。でも、そういう人たちも1週間くらいはボーっとしたんじゃないですか?(笑) 僕の場合はバンド自体が動き出してからはずっと活動していて、本来はツアーの予定でレコーディングはしないはずだったところを、こういう状況になったからにはということで、洋次郎にも火がついてずっと制作していました。だから逆に忙しかったです。
━━そんななかでアルバム制作を目指すことになったタイミングは?
最初はアルバムを作ろうというわけでもなく、空いた膨大な時間をいろいろな実験とかスキルアップに充てようというマインドで曲を作り続けていた感じです。2020年の夏過ぎくらいに“アルバムどうします?”みたいな話があって、多少は意識した部分もありますけど、全体像が見えてきたのは2021年の春とかじゃないですかね。
━━前作『ANTI ANTI GENERATION』は、いわゆるバンド・サウンドだけじゃなくヒップホップやビート・ミュージックのテイストを積極的に取り入れたアルバムでしたが、今作『FOREVER DAZE』もその延長線上にある気がしました。バンド・サウンドではないものが増えているというのは、コロナ禍でライヴが遠のいたことも影響があるんでしょうか?
間接的にはあると思いますが、バンドの形として新しいものを洋次郎が模索しているので、その延長線上というのが強いと思います。
━━バンドでこういうサウンドが増えていくなかで、武田さん自身にとっての“ロック・バンド像”みたいなものは変化していますか?
変化しまくりです(笑)。10年前だったら考えられないことを今しているし、ありがたいことに映画の劇伴とかもやらせていただいているし。そういうことをやっていくなかでは、エレキ・ベースを弾くだけのポジションではいられないなっていう自覚もできたし、まわりから求められることもあったので、10年前のバンド像とはかなり変わっていますね。
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