自分にしか出せない音、自分にしかできないプレイをもっと突き詰めていきたい。

━━今作では4弦／5弦ベースをどういう基準で使い分けたんですか？

　自分のなかで下を聴かせたい曲では5弦を使った感じですね。やっぱり5弦ベースのサステインって独特じゃないですか？　よりシンベっぽくなるというか。だからそういうものを出したいときには5弦を使いましたね。たとえば「Will」なんて5弦特有のニュアンスがめちゃくちゃ合ったなって思っています。

━━「Will」は比較的ストレートなベース・ラインで構成されていますが、音価や発音のニュアンスが多彩で、ベース的にも聴き応えがある一曲だと思いました。

　全体的に単調なフレーズではあるんだけど、発音の感じが5弦ベースにマッチしましたよね。特にAメロはローB弦じゃないと出せないグルーヴかなって。ゴースト・ノートに関しても5弦のほうがばっちりハマるし、そういうならではの楽しみ方が顕著に表れた一曲だと思いますね。

━━ちなみに今回の7曲には、ワウやファズといった飛び道具系の音色が少ないように思います。いつもだったらフィルター系のエフェクトでガンガン行きそうだなって部分もナチュラルな音色で録られていますし。

　ストレートに行きたかったんですよね。1stアルバムを作るような感覚というか。一曲一曲を突き詰めていった結果として、ファズとかベース・シンセって選択には至らなかったんだろうなと思います。「Bright Night」のサビとかはガッツリファズを踏んではいるけど、タイトに8ビート弾くってプレイだったりとか。とにかくシンプルに“グルーヴを作る”って部分に振り切っていたのかなって今となっては思います。それが今の自分のモードってことなんでしょうね。

━━改めて、今作でのベース・プレイを振り返り、どのように実感していますか？

　肩の力が抜けたシンプルなアレンジができたと思っています。リキまない感じが自分の旬だったってことでもあると思うし、5弦ベースを使い始めたのもそうだけど、ゆとりのあるグルーヴを見せられたと思いますね。今回は自分の今の旬のプレイだったりソング・ライティングを詰め込められたけど、今後どうなるかはわからない。もしかしたらライトハンドなんかをノリで使っちゃうかもしれないし（笑）。とにかく今回はムダを省きながら、グルーヴとしっかり向き合えた一枚だと思っています。

━━今後ナッシングスでは5弦ベースをメインで使用していく予定なんですか？

　もう解禁しちゃったからね（笑）。これからのナッシングスではメインで使っていくだろうと思います。でも既存曲を5弦用にアレンジする気はないし、JBじゃないと成立しない曲もあるからどんどん竿が増えていっちゃうっていう。ローディ泣かせですね（笑）。

━━今作は5弦ベースという新しい方向性を見出した一枚になりましたが、自身の次なるベーシスト像について、何か思い描いているものはありますか？

　自分にしか出せない音、自分にしかできないプレイをもっと突き詰めていきたいし、僕はロック・プレイヤーからジャズ・プレイヤーまで、どんな人に見られてもすごいなって思われたいんですよ。そこを凌駕するために、セッションだったり曲のアレンジだったり、もっといろいろなことにチャレンジしていきたいですね。加えてよりジャンルレスなプレイヤーになりたいし、とにかくファンキーなベーシストであり続けたいなと思っています。“ベース・プレイヤー”っていうシンプルな称号を、さらにワイドなものにしていきたいですね。

日向秀和（Nothing’s Carved In Stone）の過去インタビューは以下から！

◎Profile
ひなた・ひでかず●1976年12月4日生まれ、東京都出身。愛称はひなっち。2002年にART-SCHOOLでデビュー。その後、ZAZEN BOYS、ストレイテナー、FULLARMOR、Nothing’s Carved In Stoneといった数多くのバンドのメンバーとして活躍する。また、米津玄師やTK from 凛として時雨、MIYAVIといったアーティストのスタジオ・ワークもこなす。近年ではロックのカテゴリーに留まらず、ジャズやR&Bといったシーンでのセッション活動も積極的に行なっている。Nothing’s Carved In Stoneは2024年4月15日にEP『BRIGHTNESS』をリリースした。

◎Information
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