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INTERVIEW – 高田雄一[ELLEGARDEN]

  • Interview:Koji Kano

録音の時点でどう変化するかわからないなって緊張感もあった。

――今作では、以前にはあまりなかったようなベースの動きも多く、2022年9月にデジタル・リリースされた活動再開後初の音源「Mountain Top」のCメロ部分では、グリス・ダウンからハイ・ポジションで印象付けるプレイもありますね。

 活動を休止していた10年で成長した結果こういうフレーズが入った、ってことでもないんですけどね(笑)。この曲で言えばデモを聴いた段階で曲の完成形がある程度見えたので、その骨組みをベースでアレンジしていくって感覚でした。膨らませていったというか、曲に合わせたフレーズを入れていったイメージですかね。ほかの曲とかも特別、“新作だからベースを動かしてやろう”みたいな意識もなくて、とにかく曲に合わせていった結果こうなったって感じかな。

「Mountain Top」Music Video

――「ダークファンタジー」の後半でも同じように伸びやかなフレージングがあります。ウワモノ楽器がない部分をベースで際立たせる、という思惑も感じ取れます。

 ここはデモからベースをアレンジしていく際、空気的にベースが何かしたほうがいいんだろうなって部分だったのでフレーズを入れていきました。曲に合わせて、構成的に必要なパーツを入れていった感じですね。

――そういうフレーズを作る際、バンド内では意見共有しながらラインを付けていくのでしょうか?

 動いたほうがいいなって部分は、デモの時点からハイ・ポジションでの白玉が入っていたり、動いたりしていて、ベースで動く雰囲気を感じ取れるので、そこに自分の色を足してアレンジしていく流れですね。あと今回のレコーディングだと、プロデューサーが各パートに対してアイディアを出してくれたので、各楽器のアレンジは彼からの提案も大きかったですね。でもフレーズを固めて“いざ、レコーディング!”っていうとき、“コッチで弾いてみて”とか“全部ドロップDにしてみて”とか、昨日の練習を全部台無しにするような提案もあったりして(笑)。

――それは突然言われるとちょっと焦る(笑)。

 “ドロップDだとどこを押さえるんだっけ?”みたいな(笑)。だからレコーディングしながらアレンジしていくことも多かったですね。今回のレコーディングで一番驚いたのが、録音の順番がドラムが最後、ベースがその前だったんです。だからベースはギターとかのウワモノが入った段階の、より完成形が見えた状態で録音できたし、プロデューサーからの提案も全体像を見据えたうえでの提案だったので、ベースはアレンジしやすかったです。

――なるほど。それで言うと「Bonnie and Clyde」のサビでは、ギターのバッキングに合わせてスライドでオクターヴ上まで駆け上がる、迫力あるプレイが展開されていますよね。

 デモの段階ではオクターヴのフレーズはもう一個上のオクターヴの音で入っていたんですよ。でも正直、“マジでこのフレーズでライヴをやるのか?”みたいに思ってしまったので、レコーディング中にギターに合わせてこのアレンジに変えました。今回のレコーディングだと、考えていったフレーズをその場で変えることも多かったので、録音の時点でどう変化するかわからないなって緊張感もありました。

――「Strawberry Margarita」の2番Bメロではルートに5thの音を使ってかすかに彩りを付けるようなフレーズもありますけど、この部分は音量やピッキングを限界まで絞っていて芸が細かいなと。こういったプレイは特に以前のエルレにはなかったアプローチだと思います。

 簡単なフレーズですけど、確かにこういうアプローチはなかったですね。これもまさにレコーディング中に変わったフレーズで、アレンジ的にいろいろフレーズを試してみようってことでその場で弾いて出たフレーズなんです。この曲はもうライヴでやっているんですけど、この部分ではコーラスを踏んでいるんですよ。

――高田さんがモジュレーション系とは珍しい……。どんなコーラスなんですか?

 ボスのコーラスです。しかも僕のじゃなくて生形さんに借りたペダルを借りパクしました(笑)。この曲とか「Mountain Top」でコーラスを使いたいなと思ってエフェクターを探していたとき、生形さんが余っていたものを貸してくれたんです。

「Strawberry Margarita」Music Video

――「Firestarter Song」のAメロとBメロではドラムのキックに合わせて音価がコントロールされています。ドラムとのコンビネーションや兼ね合いも考慮した部分? 

 フレーズ的にはデモの段階からこのイメージに近いものがあったんですよ。でもレコーディングで何パターンかフレーズを試しつつ、ドラムとの兼ね合いはけっこう試行錯誤しましたね。Bメロ部分は音を切ってドラムとノリを作っていくみたいな、ざっくりしたイメージから詰めていったフレーズですね。

――ポップ・パンクやパワー・ポップでは、ベースの重心の位置というのも重要になると思います。この曲を聴いていても、ギターやメロディに合わせてルートの位置を箇所ごとにコントロールしている印象を持ちました。

 僕は基本的にルート弾きで、たまに経過音とかオクターヴの上か下を入れてみたりってくらいなので、そういうバリエーションを付ける意識は以前から大事にしています。今回はほぼ全曲ドロップDで弾いていて、ドロップDの音がキーになっている曲だと一番下の音、D弦の開放をどこでどう使うかが重要になってくるので、そこは意識した部分ですね。サビのアタマに持ってくるならAメロやBメロではまだ使わないようにしたりとか、逆に上のDを使うとか、そういう考えはいつも持つようにしています。

――「Perfect Summer」はこれまでエルレにはなかったような楽曲で、打ち込みテイストのドラム・ビートが鳴ったインディー/エレクトロ・ポップな楽曲です。こういった新しいエルレの形も今作のトピックですよね。

 この曲が一番ドラム的には苦労していて、パーカッションをわざわざ日本から持っていったり、現地で新たに用意したりとか試行錯誤していたようでした。リズム的にはこれまでにないパターンの曲だと理解していたので、僕自身も音の入れる位置には注意しましたね。

――ベースとしては白玉と休符を生かした、このジャンル特有のアプローチになっています。こういった引き出しはどこから?

 こういう引き出しあったのかなぁ(笑)。正直、レコーディングが一番不安な曲ではあったんですけどね。この曲はコードが複雑なので、転調しているのを自然に聴かせるってイメージを持ちつつ、音価をコントロールしたフレージングを意識してラインを構成していきました。

――ベースの音色はトーンを絞ったような丸い音になっていますね。

 音作り自体は全曲同じようなセッティングで始めたんですけど、曲調に合わせて右手のタッチは変えていきました。だから弾き方で変えている感じかな。ピッキングの位置とかピッキングのニュアンスとか。

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