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    INTERVIEW – 高田雄一[ELLEGARDEN]

    • Interview:Koji Kano

    4人で音を出したら何でもELLEGARDENになる
    っていう確信があった。

    ELLEGARDENが、前作『ELEVEN FIRE CRACKERS』から実に16年ぶりとなる新作『The End of Yesterday』を発表した。本作を一聴すれば、もはや説明不要とも言える“エルレ節”全開のロック・サウンドを体感でき、ついつい本当の意味で“おかえり”と言いたくなってしまう。ベーシストの高田雄一は、当時と変わらぬ骨太サウンドでバンドの屋台骨を支えつつも、以前には見られなかった楽曲に彩りを添える緻密なプレイを展開。ベーシストとしての新たな一面を提示している。そんな高田は10年にわたる活動休止期間中に何をインプットし、今作にどのような思いを込めたのか。“新譜を出すために必要な期間だった”と語る活動再開からの4年間と、制作の裏側を語ってもらった。

    とにかく“ベースを弾いていないとダメだ”って気持ちだった。

    ――ついに16年ぶりの新アルバム『The End of Yesterday』がリリースということで、待ちわびたファンも多いと思います。まず発売に至った今の率直な思いを聞かせてもらえますか?

     2018年にバンドが再始動して以降、ずっとライヴだけをやってきた数年間だったんですけど、2021年に関しては、細美(武士/vo,g)さんはほかのバンドをやりつつもエルレの曲を書いてくれていたんです。2022年に入ってからは本格的に制作に取りかかって、5月からはレコーディングのために2回アメリカに行ったんですけど、まずは無事に発売まで来れた安心感がありますね。以前にはリリースを延期したこともたくさんあったし、実際2008年に活動休止したときもアルバムを作っていた最中だったんですよ。

    ――えぇ、そうだったんですね。

     曲が全部出揃うくらいまで進んでいたのに結局作れなかった。今作にはそのときの曲は一曲も入っていないんですけど、やっぱり16年ぶりに作るということで、夏くらいまでは“本当にできるのかな?”みたいな気持ちもありました。曲を出揃えるまでの細美さんの苦しみというか、大変さは計り知れないものがあったと思います。でもレコーディングの前にはほぼ完成形のデモ音源を作ってくれていて、そこに自分のベースの色を付け足していく作業でだったので、わりとレコーディング自体はスムーズだったと思います。

    ――人気絶頂のなか2008年に活動休止して以降、メンバーそれぞれが個々に活動していたわけですが、高田さんもMEANING、MAYKIDZ、Street Storyなど、多くのバンドで活動していましたよね。それらの経験を今振り返ってみると?

     具体的にあの経験が今生きているなって実感はないんですけど、バンド以外にもアイドルのバック・バンドとかレコーディングとか、サポートもいろいろやらせてもらっていて、とにかく“ベースを弾いていないとダメだ”って気持ちだったんです。ただでさえ僕はカメラばっかりいじっているので(笑)、気が散るというか、バンドをやらなくなったらベースを弾かなくなっちゃうと思ったし、何かしらバンドをやっていないと、何年後かにまたELLEGARDENをやるってなったとき、“10年ぶりにベース弾きます”とかだとみんなについていけないとも考えていた。だからとにかくバンドをやろうということで、いろいろ活動していました。

    『The End of Yesterday』
    ユニバーサル/UPCH20642

    左から、高田、生形真一(g)、細美武士(vo,g)、高橋宏貴(d)。

    ――例えばハードコア・バンドのMEANINGでは、エルレとはまた違ったサウンドやプレイも求められたと思います。さまざまなバンドを経験することでベーシストとして得るものもあったのでは?

     MEANINGはジャンル的にけっこう激しい曲調のものが多かったし、それまでこういうバンドをやったことはなかったので、そういう意味ではいい経験にはなったと思います。あとはコーラスで叫び倒していたこともあったので、単純に楽しかったですね(笑)。

    ――ただ、どのバンドでのプレイを観て聴いても、ルートに忠実なプレイであったり、図太いプレベのニュアンスを生かしたサウンドなど、高田さんらしさというものは一貫して存在しているように思いました。

     突然こねくり回したベースを弾こうとしてもたぶんできないですし、MEANINGだと当時はギターが3人いたこともあって、“ボトムを支える”みたいなポジションはどのバンドでも大事にしていた部分だったと思います。

    ――エルレは2021年末、“2022年2月からアルバム制作を開始する”とのアナウンスを突如発表し、今作のリリースに至ったわけですけど、そこにはどんな背景があったのでしょうか?

     曲が揃い始めて4人での制作を始めたのは3月くらいなんですけど、それまではライヴがたまに入るくらいだったし、コロナの期間も重なったことで、実際に4人で会う回数って少なかったんです。再結成してどんな活動をしていくのかも具体的には決めていなかったし、ライヴをやっていくにしてもずっと昔の曲だけをやっていくわけにもいかないしって気持ちもあったので、新譜を作るという考えになったということです。2021年に(マキシマム ザ)ホルモンと10-FEETとツアーを回ったときは1ヵ月にまとめてライヴがあったので、そこで久しぶりにバンドっぽさとか、4人でいることを実感できました。対バンもこのメンツだったからツアーも懐かしくて楽しかったですね。だからこのツアーがアルバム制作への助走になったと思うし、活動再開からのこの4年間は新譜を出すために必要な期間だったと思います。

    ――今作はエルレらしい西海岸系ポップ・パンクやパワー・ポップなど、らしさ溢れる一枚になっていて、“帰ってきた!”と興奮してしまいましたが、制作にあたってどんな作品にしたいという考えがあったのですか?

     16年ぶりに出すってだけじゃなく、実際に今この年齢になって、当時みたいな速いビートの曲をやるのが正解なのか、近年ヒットしているような落ち着いた曲、大人っぽい曲をやるのが正解なのかって部分は細美さんが一番悩んでいたところだったと思います。でも結局は、細美さんが持ってきた曲をこの4人で音を出したら何でもELLEGARDENになるっていう確信というか、そういうものがみんなにはあった。だから昔のエルレっぽさにはとらわれず、今の4人のサウンドをイメージして制作に向き合えたと思います。

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