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暴力的音像で鳴る7弦フレットレスの世界
2015年に結成され、メンバー・チェンジを経ながらも大阪を拠点に活動する5人組ヴィジュアル系メタル・バンドのDEVILOOF。 デスコア、スラミング・ブルータル・デスメタル、グラインドコアなどの凶暴なエクストリーム・メタル・サウンドで、国内はもとより海外のメタル・ファンからも熱い視線が注がれている彼らが、EP『DAMNED』でメジャー・デビューを果たす。バンドのリーダーであるベーシストの太輝は、7弦のフレットレス・ベースという超個性派の愛器を手に、バンドのなかでも特異な存在感を放っている。“ヘヴィ・ミュージックの頂へ”を掲げて突き進む彼に、これまでの歩みと最新作について聞いた。
“デスコア・バンド”だっていう認識は、
実はメンバーにはないんですよね(笑)。
━━ベースを始めたきっかけは?
中学1年生のとき、友達にXの『BLUE BLOOD』を聴かせてもらって衝撃を受けたんです。そのあとに『破滅に向かって』のライヴCDを聴いて、みんながギターやドラムに耳がいきそうなところを、なぜかそのうしろで奏でられている旋律に耳がいっちゃって。TAIJIさんのベースがカッコいいなと思って、親にお願いしてベースを買ってもらいました。当時はXとBUCK-TICKにハマってましたね。
━━それ以前は特に音楽に興味はなかったんですか?
親が言うには、生まれたときからめちゃくちゃ音楽が好きな子供だったみたいです。父親も、今でもアコースティック・ギター1本持ってライヴハウスで歌ったりしているような人なので、音楽が好きな血は引き継いでいるのかもしれません。ただ、意識して音楽が好きになったのは、X以前で言うと、中学に入学してからブルーハーツに数ヵ月くらいのめり込んでパンクが好きになって、ギターをやろうかなと思ったくらいで。ちょうど同じタイミングでXを薦められて完全にメタルの道に行っちゃいましたけど(笑)。Xに出会ってなかったら、僕はパンク・バンドをやっていたと思います。
━━ブルーハーツはお父さんからの影響だったり?
いや、父は松山千春さんとか長渕剛さんのフォーク系が好きなので、まったく関係ないですね(笑)。
━━デスコアなどのエクストリーム・メタルのコアな音楽へはどのようにたどり着いたんですか?
実は僕自身、デスコアなどのエクストリームなメタルを聴いたり演奏したりするようになったのは、DEVILOOFの前身バンドをやるようになってからなんです。当時、ネットのメンバー募集で“高校生がデスメタル・バンドをやる”っていうのを見つけて、おもしろそうだなと、僕は高校生ではなかったんですけど応募してみたんですね。そこで前身バンドのメンバーに出会って、DEVILOOFにつながっていくんです。僕自身は、Xをきっかけにヴィジュアル系を知るんですけど、そのままヴィジュアル系を追うというよりも、『BLUE BLOOD』が衝撃すぎて、“どういう音楽を聴いて育ったら、こんなにすごい音楽が作れるんだろう”と思って、当時のXのメンバーが聴いていたルーツとなる音楽を辿っていったんですね。そうすると、アメリカとかヨーロッパのハードロックやヘヴィメタルを聴くようになり、メタリカとかメガデス、ハロウィンをはじめとしたヨーロッパのパワーメタルやスピードメタルを知ることになるんです。そこからはガッツリとメタラーの道を行って(笑)。そんななかで、ラウドパークに出ていたDIR EN GREYを観て、日本にもこんなにカッコいいバンドがいるんだなと。そこから、摩天楼オペラやGALNERYUSなど、日本にもウマいバンドがいるんだと知って、自分でもそういうバンドがやりたいと思うようになりました。だから当時は、メロディのあるバンドを組みたいなと思っていたんです(笑)。
━━そうだったんですね。太輝さんはDEVILOOFの創設メンバーでリーダーということですが、自身の音楽的趣味とバンドの方向性は違うということですか?
まったく違うということはないですけどね。ただ、ほかのメンバーは音楽的にやりたいことをやりたいという感じだと思いますけど、僕の場合は戦略的に考えているところもあって、どうやったら注目を集められるかなというところはありました。DEVILOOFを結成した当時は、ヴィジュアル系で本格的なデスコアをやっているバンドっていなかったし、メンバー全員のルーツにあるヴィジュアル系と、海外で評価されているような本物のエクストリーム・メタルを混ぜ合わせたら、おもしろいものができるだろうと思ったんです。
━━“ヴィジュアル系”って音楽性を表わす言葉ではないですし、音楽的にはすごく間口の広いものですよね。“ヴィジュアル系”という言葉のもとにそのバンドらしさが確立されていれば、同じバンドのなかでもさまざまなジャンル違いの曲調を内包できるというか。DEVILOOFも2ndアルバム『鬼』に入っている「流転」には演歌要素がありますが、DEVILOOFの曲として自然に聴けますし。
まさしくおっしゃるとおりで。メイン・ソングライターの桂佑(vo)ともよく話すんですけど、そもそもデスコアを取り入れたっていうのもそうだし、“ヴィジュアル系ってこういう音楽だ”っていう概念にはとらわれずに曲は作っていこうと思っています。僕らのことを“V系デスコア”って言ってくれる人もいるんですけど、僕らのディスコグラフィを聴いていけば、純粋にデスコアしているのは1st EP『PURGE』とか最初の1年くらいで(笑)。1stフル・アルバムの『Devil’s Proof』にはすでにメタルコアの要素が入っていたりするし、“デスコア・バンド”だっていう認識は、実はメンバーにはないんですよね(笑)。
━━どんどん音楽性を拡張していける可能性があるということですね。では、メジャー・デビュー作となる『DAMNED』はどんな作品にしようと思っていたんですか?
お客さんがDEVILOOFに求めるものって、やっぱりブルータルな部分が多いので、僕らとしてもそこをずっと追求してやってきたんです。でも一昨年に出した3rdフル・アルバム『DYSTOPIA』で、ブルータルさの追求に関してはやり切った感覚があって。これ以上そこを追求してもおもしろくないし、次はまったく違うものにしたいというか、例えばブルータルさのある曲をあえて入れないとか、とにかくメンバーから湧き上がってきたものを入れた作品を作ろうと思いました。リード曲の「Damn」にはハードコアの要素がちりばめられているんですけど、これもヴィジュアル系にハードコアの要素を取り入れているバンドって少ないなっていうところだったりします。