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    INTERVIEW – キャメロン・ピクトン[ブラック・ミディ]

    • Question:Shutaro Tsujimoto
    • Translation:Tommy Morley
    • Live Photo:Burak Cingi/Getty Images
    • Artist Photo:Atiba Jefferson

    ディストーション・ペダルは、
    まだ満足するものに出会えていないんだ。

    ━━「Welcome To Hell」など、ベースの歪んだ音色が聴ける楽曲もありますが、どのような機材を使って“歪んだサウンド”の音作りをしていますか?

     僕は長年さまざまなディストーションを試してきたけど、まだ満足するものに出会えていないんだ。今使っているのはZ.VEXのMastotronなんだけど、これは実はかつて使っていたものでね。ギター、ベースのどちら用に設計されたものもいろいろとトライしてきたけど、この旅はまだ終わらないね(笑)。僕が求めているのはナイスで強い土台があって、可能ならサブ・ベース的な成分も得られるような、トリオでプレイするときでも勝負できるものが理想だよ。Mastotronはゲートのかかり具合が優秀で、各音のクリアさが得られたり音の長さもしっかりとコントロールできるのが気に入っている。ほかの歪みペダルだとどうしてもグチャッとして明瞭さが失われてしまうんだ。「Welcome To Hell」ではかなり深みのあるファジーなサウンドが欲しくて、これによって曲をさらにドライブさせたかったんだ。

    ━━クレジットを見ると、「Sugar/Tzu」、「Dangerous Liaisons」、「27 Questions」では、リッケンバッカーとヘフナーのSenator Bassが併用されているようですが、2本のベースはどのように使い分けましたか? 

     メインのテイクはリッケンバッカーで弾いていて、ヘフナーはダビングに使っている。ヘフナーはスタジオにあったものなんだけど、アメイジングなピックアップを搭載していて70年代のサウンドが得られるし、アンプを通したときに得られるウォームなサウンドが素晴らしいよ。リッケンバッカーよりも曲中でスッと収まりのいいトーンになったりするんだ。

    ━━自身がヴォーカルをとる「Still」や「Eat Men Eat」では、あなたはギルドのアコースティック・ギターを弾いていて、ベースを弾いていませんね。代わりにベースはジョーディが弾いていますが、これはライヴを意識してのことなのでしょうか? 自分でベースをダビングすることもできたと思いますが。

     これらの楽曲では僕がギターを弾いて作ったから、そのままレコーディングでもライヴでも僕はギターをプレイして、ジョーディがベースを弾いている。「Still」のベース・パートは僕が作り、「Eat Men Eat」についても作ろうとしたんだけどなかなかできなかったので、ジョーディに任せたんだ。ライヴでも彼がプレイするなら、彼が考えたベース・ラインを弾いてもらうっていうのは自然な流れだったよ。

    ━━レコーディングで使用したほかの機材など、録音環境について教えてください。

     コンプレッサーとして、Empress EffectsのCompressor MKⅡを使ったね。そして DODのMeatbox(ベース用オクターバー)、ブラック・カントリー・ニュー・ロードのタイラー・ハイドが使っていて彼らのライヴで耳にしてサウンドを気に入って手に入れたDamnation AudioのMBD2っていうベース用ディストーションも使っている。ただ残念ながらこれらのペダルはすべて紛失してしまったんだよね。そしてアンプには 1960年代に作られたアンペグのB-15も使っていて、これをマイキングしたものと DIのシグナルを混ぜて音を作ったんだ。

    ━━ライヴ用のエフェクト・ボードには、どのような機材を入れていますか?

     ORIGIN EFFECTSのCali76-CB(コンプレッサー)、EarthQuaker Devices のNight Wire(トレモロ)、Z.VEXのMastotron、そしてDeath by Audio から少し前に発売になったSPACE BENDERっていうコーラス/ディレイを使っている。このディレイはそんなに長くはないタイムのディレイにコーラスみたいなクレイジーなモジュレーションを加えることができるんだ。シグナルの最後にはボスのイコライザーGEB-7を置いてあって、これはフェスなどで必ずしも同じアンプが使えないときに細かく補正するために使っている。イギリス国内でツアーするときはアンプにアンペグのSVTを持って行き、10インチが4発のスピーカー・キャビネットと組み合わせている。リッケンバッカーとクレイマー、Serekを使い分けているけど、やはりリッケンバッカーが安心して使いまくれるので使用頻度は高いよね。

    右から、ピーターソン製StroboStomp HD(チューナー)、EarthQuaker Devices 製Night Wire(トレモロ)、ORIGIN EFFECTS製Cali76-CB(コンプレッサー)、Mastotron(オーバードライブ)、Death by Audio製SPACE BENDER(コーラス/ディレイ)、ボス製GEB-7(イコライザー)。パワー・サプライにはMXR製Iso-Brick(パワー・サプライ)が使用されている。

    ━━1stアルバム収録の「of schlugenheim」のライヴ・アレンジでは、おもしろいディレイ・ペダルの使い方をしていますよね。

     最初は確かボスのDD-6にあるWarpモードでやっていたんだよね。でも2019年の6月以降のライヴでは、この曲では日本に行ったときに購入したMASF PedalsのRAPTIOを使っている。このペダルを最初に知ったのは、アルバムの共同プロデュースをしてくれた人がBo Ningenと仲が良くて、彼らがこのペダルを使っているというのを教えてもらったのがきっかけだった。DD-6のトリックもクールだけど、このペダルはスタッターのレイトのコントロールが可能で、ペダルを踏むことでスロウダウンさせてさらに自由にコントロールすることができるんだ。

    ━━近年、ブラック・ミディに続いて、Speedy Wunderground(編注:彼らが最初の作品をリリースした、プロデューサーのダン・キャリーが主宰するレーベル)出身のバンドがたくさん活躍しています。ツアーで世界中を飛び回っている今でもロンドンのローカルな音楽シーンから影響を受けることはありますか? 

     それはあると思う。例えば、近いうちにSpeedy Wundergroundからシングルをリリースすることになるだろうバリトン・サックスとドラムによる“O.”っていうデュオと最近ツアーをしたのだけど、彼らは独自のサウンドを作り上げていて驚異的なんだ。エフェクトを多用しながらすべてを自分たちでプレイしていて、ドラムなんてトリガーみたいなものなんて一切使っていない、素晴らしいキットのサウンドで勝負している。ドラム自体にエフェクターでディレイを加えたりしていて、サウンドにすべてを捧げている人たちなんだ。あのバンドは本当にインスパイアしてくれる存在だよね。

    ━━さて、2022年は数々のフェス出演で忙しいあなたたちですが、私たち日本のファンにとっては12月の来日公演が待ち遠しい限りです。

     ジャパン・ツアーではこれまでにないくらいにタイトに引き締まった状態を披露することになると思うよ。この公演は僕らにとって休暇前の、2022年のラスト4回のパフォーマンスにあたるので、ベスト中のベストな状態でのプレイになると思う。前回、2019年に日本に行ったときは本当に素晴らしくて、あれは僕らの人生において最高の時間だったよ。これは日本の雑誌のインタビューだから話しているわけじゃなくて、常に友人たちにも話していることなんだ。ずっと待ち続けてきたから、本当に楽しみだよ。

    ━━最後に、もし日本の音楽やカルチャーで関心がある/影響を受けたものがあれば教えてください。

     ボアダムスは確実に僕らが日本に入り込むきっかけをくれたよ。あとはtoeも好きで、さっき話したO.ってバンドも最初はtoeって名乗っていたのだけど日本にすでにその名前のビッグなバンドがいたから名前を変えたらしいんだ。日本の音楽シーンにはアメイジングなバンドがたくさんいるよね。それからDos Monosも長年仲良くさせてもらっている素晴らしいラップ・グループで、過去には一緒に作業をしたことがあるよ。ヴァースをシェアしながら歌っているところがウータン・クランみたいで、本当に賛辞を贈らざるを得ないよ。

    熱狂のライヴ音源を収録した来日記念盤の発売が決定!

    『Live Fire』
    Beat Records/Rough Trade
    RT0363CDJP(解説付/日本独自企画盤CD)

    延期となっていたジャパン・ツアーを12月に控えるブラック・ミディが、熱狂のライヴの模様を収録した来日記念盤CD『Live Fire』を11月25日にリリース。サポート・メンバーのセス・エヴァンス(k)を迎えた4人組編成で2022年6月に行なわれたプリマヴェーラ・サウンド・ポルトガルの模様を収録した本作は、『Hellfire』を含むオリジナル・アルバム3作品からの人気楽曲に加え、初音源化となる「Lumps」を含む初CD化音源15曲を収録。デヴィッド・ラドニックのデザインによる帯と解説が付属した日本独自企画盤は各店にて随時予約受付中だ。詳細はこちらから。

    ◎Profile
    きゃめろん・ぴくとん●幼少期にギターを学び、14歳でアップライト・ベースに初めて触れる。ロンドンの音楽学校“ブリット・スクール”に入学後、同学校で出会ったメンバーで2017年に結成されたブラック・ミディに加入し、ベーシストとしてのキャリアを本格的にスタートさせる。2019年にデビュー・アルバムをリリースし、マーキュリー・プライズにもノミネート。2019年9月には初の来日公演も実現し、東京・名古屋・京都、すべての公演を完売させ称賛の嵐と共に幕を閉じた。2021年5月にリリースした2ndアルバム『Cavalcade』から約1年、早くも3rdアルバム『Hellfire』を2022年7月15日にリリースした。2022年12月には東京・大阪・名古屋で全4公演を行なう日本ツアーも決定している。

    ◎Information
    ブラック・ミディ
    Official HP Twitter Instagram
    キャメロン・ピクトン
    Instagram

    ◎black midi japan tour 2022
    <東京公演>
    2022年12月4日(日)
    SHIBUYA O-EAST (※東京公演は1日2回公演)
    ※ 制限キャパに達し販売停止していた東京公演、1st show、Late show共に待望の追加発券が決定!
    ● [1ST SHOW] OPEN 17:30/START 18:15 (追加販売開始!)
    ● [LATE SHOW] OPEN 20:30/START 21:15 (追加販売開始!)

    <大阪公演>
    2022年12月5日(月)
    UMEDA CLUB QUATTRO
    SUPPORT ACT:おとぼけビ〜バ〜
    OPEN 18:00/START 19:00

    <名古屋公演>
    2022年12月6日(火)
    THE BOTTOM LINE
    SUPPORT ACT:∈Y∋ (DJ)
    OPEN 18:00/START 19:00

    TICKETS 
    前売 ¥6,380(税込)1ドリンク別途/オールスタンディング/整理番号付 
    ※未就学児童入場不可 
    ※購入制限:一人様2枚まで(要同行者登録)

    ツアーに関する詳細はこちらから。