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    INTERVIEW – キャメロン・ピクトン[ブラック・ミディ]

    • Question:Shutaro Tsujimoto
    • Translation:Tommy Morley
    • Live Photo:Burak Cingi/Getty Images
    • Artist Photo:Atiba Jefferson

    リッケンバッカーはほかの楽器よりも荒々しく、
    激しくロックするのに向いている。

    ──バンド全体の作風としては、1stアルバムの頃は即興音楽的な要素も強かったのですが、前作と今作ではアレンジを作り込むような構築的な作曲方法に変わっているように感じます。作曲メソッドの変遷について教えてもらえますか? 

     1stアルバムは、ジャム・セッションとソングライティング的なアイディアの融合という側面が強かったと思う。ジャム・セッションのなかで見つけたクールな瞬間を20秒ぐらい切り取りどこかとくっつける、みたいなやり方とかね。でもいつしかその方法だと行き詰まるようになり、フレッシュなやり方を求めるようになった。具体的には、曲全体を一度用意してから、ちょっとずつ構造を変えていく方法だね。もちろんジャムを土台とした作り方も続けてはいるけど、今作にはもっと意図や計画性があると思う。

    ──特に今作には、「Still」、「The Defence」など、コード展開と歌メロがしっかりとあるポップス的な作曲方法がなされている曲が収録されていて、バンドの新フェーズを感じました。このような曲ができたのには、どのような背景がありますか? 「Still」はあなたが作曲していますね。

     パンデミックで家にいる時間が長くなり、“これをバンドに聴かせたらどう思われるだろう?”なんてことを考えずにじっくりと作曲をしていたというのがあるだろうね。ブラック・ミディはメンバー全員にとってのメイン・プロジェクトだし、この期間にそれぞれが作ったものをしっかりと固めていったら今まででベストな作品ができあがると確信していたので、それを使わないという手はなかったんだ。

    ──今作は前作から1年という短いスパンでの新作ですが、実際の制作作業はいつ頃行なったのですか?

     ギアがしっかりと入っていったのは『Cavalcade』のレコーディングが終わってからかな。最初にでき上がったのは「Sugar/Tzu」で、そこからは数ヵ月でほとんどの楽曲が仕上がったよ。レコーディングが終わったのは2021年の8月で、ミキシングが終了したのが2022年の1月。ミックスに時間をかけたように感じられるかもしれないけど、僕らはツアーもしていたから作業自体はほんの数日間だったよ。

    ──機材についても聞きたいのですが、今作でも近年メインで使用しているリッケンバッカー4003が使用されています。このベースを使い始めたきっかけは?

     2019年の1月にグラスゴーで手に入れたんだ。これは多彩なサウンドが得られる素晴らしいベースだよ。急激な温度変化に耐えることもでき、安定しているところも信頼性の高さの一因だ。ほかのベースでは、クレイマーのDMZ-4001も時折スペアとして使っていて、あとはSerekのThe Grandも自宅のアパートでレコーディングする際には頻繁に使っているんだけど、これらはツアーでプレイするにはちょっとデリケートなところがあってね。一方、リッケンバッカーはほかの楽器よりも荒々しく、激しくロックするのに向いているからツアーでもプレイしているんだ。あまりにも使い込んでいるからボロボロの状態になっているしネックのラッカー塗装なんて剥がれ始めているけどね。

    ──リッケンバッカーをピックで弾くスタイルというと、イエスのクリス・スクワイアが思い浮かびますが、彼から影響を受けている部分はありますか? また前作の『Cavalcade』以降、音楽性に英国のプログレッシブ・ロックの影響が出ていると感じます。カヴァーEPの『Cavalcovers』ではキング・クリムゾンの「21st Century Schizoid Man」もカバーしていますよね。

     そうだね……実はイエスってあんまり通ってきたバンドじゃなくて、あの頃のバンドだと、やっぱりピンク・フロイドやキング・クリムゾンのほうをずっと聴いてきたんだ。イエスをちゃんと聴くようになったのは20歳になってからだったから、あまり深く聴き込んできたわけじゃなかったよ。それでも彼のベース・プレイが素晴らしいことは言うまでもないけどね。

    キャメロンのレコーディング/ライヴでのメイン器である、2019年1月に手に入れたリッケンバッカー4003。
    インタビューでは言及されていないが、2022年9月のバーミンガム公演などでメイン器として使用されたPeavey製T-40。

    ──先ほどの“ギターでの経験を生かす”話もありましたが、改めて、ピック弾きの魅力はなんだと感じていますか?

     リズム・ギターみたいに大ぶりで弾いて、ミュートさせた弦を一緒にかき鳴らすことでアタック音が得られることかな。余計な弦をミュートをした左手と、コンスタントに刻み続ける右手により、ギター・プレイヤーが得ているようなリズム感を感じることができるんだ。あとは、ロックなプレイをするうえで、指弾きでは得られないような強めのアタック感を出せるのもメリットだよね。特にトリオともなると、パワフルなサウンドを出せるピック弾きのスタイルはかなり有効だよ。

    ──「Sugar/Tzu」のベースは、中間部(0:45〜)での高速ベース・フレーズ、終盤(2:50〜)高速でのルート弾きなど、凄まじいプレイの応酬でした。こういったフレーズはどのように発想したのですか?

     この曲のデモを録っていたとき、スタジオでまずはヴァースや冒頭のメロディックなパートを考え付いたんだ。それから時間をかけて練るうちに、終盤の強烈に弾き倒すところができていったね。この曲ではほかにもクレイジーなパートをいくつも作っていたから、さらにブーストするくらいにクレイジーなものが欲しくなって低いEの音をやたらと強調させたんだ。

    ━━この曲でも聴けるように幾何学的なベース・リフはブラック・ミディの魅力のひとつですが、ベース・リフはどのようにして生まれることが多いですか?

     可能な限りメロディックなものをプレイしつつ、歌のメロディやギター・リフに追随していくものにさせたい、と常々思っている。それでいてベースがすべきこともキチンとやっておきたいよね。そういった意味で言うと自分でも満足しているのが「The Defence」でのプレイ。ジョーディ(グリープ/vo,g)のヴォーカルに対するカウンター・メロディをプレイしながらもベースとしての役割も同時に果たせていると感じているんだ。

    ━━ブラック・ミディの音楽は高度な演奏を聴かせながらも、テクニックをひけらかしているような印象がありません。技巧についてのさじ加減については、どんなことを意識していますか?

     僕らは“この曲はシンプルだから、もっとクレイジーな演奏パートを入れておこう”なんて風に考えることはなくて、“曲が向かっている方向と合致しているか、より良い曲に仕上げるためには何が必要なのか?”ということを常に考えているんだ。例えば「The Defence」の真ん中でクレイジーなアルペジオを入れることには何の意味もないけど、「Sugar/Tzu」みたいな曲でみんなでフリーキーな演奏をするところではクレイジーなプレイをするべきで、その瞬間に対して適切にハマるものを弾くことってやっぱり大切だよ。

    ━━クレイジーなプレイで言うと、「The Race is About to Begin」のウォーキング・ベースも高速でありながらメロディアスで素晴らしかったです。この曲でのベース・プレイはどのように発想しましたか?

     デモを使ってループを作り、それに合わせてひたすら弾いていたんだ。みんなでフリーキーな演奏をしているこのパートのフレーズはかなり練って作っていて、クレイジーながらもキチンとした構造のあるものを弾いている。曲自体がかなり壮絶だからナチュラルな部分も作っておきたかったし、これによってBセクションから7/8拍子に移るところも唐突な感じがしなくなっているよね。ライヴでは完全にコピーはせず、フリー・スタイルでプレイしているよ。

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