PLAYER

UP

INTERVIEW − 前田恭介[androp]

  • Interview:Kimiya Mizuo
  • Photo:Taichi Nishimaki

続けることで、おもしろい音楽に出会える。

━━ところで本誌2023年8月号の『新時代の低音形式 エレベ/シンベ“二刀流”』特集のアンケート企画に登場してもらいましたが、今作ではシンセ・ベースは使っていないのですね。

 そうなんですよ。最近シンセ・ベースを使っている音楽が増えたじゃないですか。僕らはちょっと天邪鬼なので逆張りしたがるところもあって、最初に話した“原点回帰“ということで今回は使わないことにしました。今回は使ってないんですけど、ライヴでは“ここで音伸ばしたらおもしろいかもな”と思っていきなりシンセ・ベース弾いちゃったりもしますよ。そこら辺はフレキシブルにやっています。

━━ちなみに、シンセ・ベースはいつ頃始めましたか?

 2018年頃からで、それまで鍵盤は触ったこともなかったんですよね。

━━どんなきっかけでシンセ・ベースを取り入れるようになりましたか?

 宇多田ヒカルさんのコンサートを観に行ったときにベーシストのジョディ・ミリナーが使っていたんです。それがめちゃめちゃカッコいいなって思って、埼玉スーパーアリーナの客席でそのままデジマートで買いました(笑)。

━━まさに衝動買いですね(笑)。特にバンド・メンバーにも言わずに?

 言わずに(笑)。次の日にメンバーに“シンセ・ベース買ってきたわ”って言ったら、内澤くんが“おもしろいね”って言ってくれて、それからデモにシンセ・ベースを入れてくれるようになって、バンドのなかで使い始めましたね。昔の曲でも、実はシンセ・ベースのほうが合うなっていう曲とかもあるので、ライヴでは1曲のなかでシンセ・ベースとエレキ・ベースを使い分けたりもよくします。その辺はけっこう自由にやっていますね。

━━ウッド・ベースはどんなときに使っていますか?

 ウッド・ベースはビルボードとかでライヴするときに使います。アコースティック・セットで演奏をするときは、見た目込みで使いますね(笑)。もともと僕はジャズから入って昔から持っていたので特に抵抗はなかったですね。むしろシンセ・ベースが一番馴染みがないというか、最近始めたものという感覚です。

━━今作を引っ提げたリリース・ツアーandrop one-man live tour 2023“fab gravity”はどんなツアーにしたいですか?

 今回は去年リリースした12thアルバム『fab』と今作のフル・アルバム『gravity』のアルバム・ツアーになっているんです。アルバム曲をちゃんとお客さんに聴かせられるというのと、それによって過去の曲も聴こえ方が変わり、楽しいライヴになると思うので、ぜひアルバムを聴いて来てもらえると嬉しいですね。

━━今後、andropとしてはどのような未来を描いてますか?

 続けることですね。 僕らはずっと同じジャンルの音楽をやり続けるタイプのバンドじゃなくて、いろいろ取り入れていくタイプのバンドなので、続けることでおもしろい音楽に出会えると思っています。なので、バンドを続けるということが、一番大事だと思っています。あとはメンバーそれぞれがバンド以外にもさまざまな活動をしているなかで、andropは外で吸収したものを好きに出せる場所だなって思っています。

━━いちベーシストとしてはいかがでしょうか?

 自分を表現するようなことはしたいと思っています。それはベースなのか、それとも今ずっと練習しているピアノなのか、はたまた歌うことで表現するのかはわからないんですけど。いち表現者として自分自身でいろんなことを経験していくことで、さらに自分のベーシストとしての能力が上がっていく気がしているんです。やってみることで良し悪しをジャッジされたり、いろんな批評を自分自身で受けるということはしていきたいと思っています。

◎Profile
まえだ・きょうすけ●2008年に結成されたロック・バンドandropのベーシストとして、2009年12月、ミニ・アルバム『anew』にてデビュー。緻密に構築されたバンド・サウンドに加え、映像やアートワークを含めた表現方法で注目を集める。デビュー15周年アニバーサリー・イヤーとなる2024年を見据え、現在も精力的な活動を展開中。2023年8月23日に13thアルバム「gravity」をリリースした。

◎Information
androp Official HP
前田恭介 Twitter Instagram

関連記事