プランのご案内
  • 2024年12月27日(金)12:00 ~ 2025年1月6日(月)11:00まで、サポートをお休みいたします。期間中のお問合せは、1月6日(月)以降、順次対応させていただきます。
  • PLAYER

    UP

    INTERVIEW − 前田恭介[androp]

    • Interview:Kimiya Mizuo
    • Photo:Taichi Nishimaki

    継続してきたからこそ、届けられる原点回帰

    『effector』(2021年)、『fab』(2022年)とアルバム・リリースを立て続けに行ない、昨年は日比谷野外大音楽堂や東阪Billboard Liveでのワンマン・ライヴを成功させるなど、精力的な活動を展開してきたandrop。そんな彼らが通算13作目のアルバム『gravity』を8月23日にリリースした。CMソングに抜擢された「Arata」を筆頭とする鮮やかな光景を描いた美しい楽曲や、新基軸のR&Bチューン「Black Coffee」を含む、全7曲が収録されている。ベーシストの前田恭介は、事前にベース・ラインを作り込むのではなく、すべてのフレーズをレコーディング現場で生み出すという制作プロセスのなかで、ロックのみならずジャズやフュージョンを含むさまざまなジャンルを下地にした多彩な表現で今作の低音を彩る。来年で結成15周年を迎える、長く活動を続けてきた彼らが、“原点回帰”をテーマに掲げ、“メンバー4人のサウンド”にこだわって楽曲制作を行なったという今作について、前田にじっくり語ってもらった。

    原点回帰としてメンバー4人が中心の曲を作りたくなった。

    ━━フル・アルバムとしては前作の『effector』が2021年12月、ミニ・アルバムの『fab』が2022年12月リリースと、けっこうスパンが短いですよね。今作『gravity』の制作期間はどのぐらいでしたか?

     今年の4月頃に“アルバムを作ろう”ってなりました。最近はサブスク主体で動いているので、シングルをいくつか配信でリリースして、ある程度配信したらそれらをまとめてアルバムにするということをしています。なのでレコーディングだけでいうと2ヵ月とか。我々はちょっと録り方がおもしろくて、プリプロとかがないんですよ。当日の朝に内澤(崇仁/vo,g)くんからデモが送られてきて、それをその日にレコーディングするみたいなやり方をしているので。なので、何を弾くかは“曲が来るまでわからない”みたいな感じ(笑)。これはきっと、ほかのバンドではあまりなさそうですよね。

    ━━今作を制作するうえで、バンド全体で共有していたコンセプトはありますか

     前作まではサックスが入っていたりと新しいことをたくさんしていましたが、来年僕らがデビュー15周年ということで原点回帰として“メンバー4人が中心の曲を作りたいね”みたいな話はしていました。なので今作はギター・リフとかが多めに入っていると思います。

    ━━ベーシストとしては、今作を作るにあたってのテーマや方向性などはありましたか

     テーマみたいなものはなくて。ただ、鼻歌を歌うのと同じようにベースを弾けるようにというのは常に心がけていますね。当日に曲を聴いてレコーディングするということもあって、何が来ても自分が思ったものを表現できる状態にしておこうって。

    ━━普段バンドとしてはどのようにアレンジを進めるんですか?

     まず、内澤くんが持ってくる時点でデモは各パートの楽器が入った状態で構成されていて、スタジオに着いたらそれをドラム、ベース、ギターの順番でレコーディングします。内澤くんの世界観はそのままに、“こんな感じかな?”という2、3テイクを録って、それを多少差し替えて、という流れですね。

    『gravity』
    SPACE SHOWER MUSIC
    PECF-9054(通常盤)

    ━━ベース・ラインは、デモにどのくらいアレンジを加えるのでしょう?

     今作で言うと「Arata」とかのあまり動いてないベース・ラインはデモどおりだったりしますけど、例えば「Black Coffee」では、デモに入っていたリズムが単純だったので自分で歌いながら違うベース・ラインを弾いていきました。なにせ曲をその日に聴いて録るので、ベース・ラインを覚えられないこともあって(笑)。「Parasol」も、デモの段階では90年代のロックのような感じだったんですけど、僕の解釈が違ったみたいでベースはモータウンっぽい雰囲気になりました。作曲者の意図とはちょっと離れたところに行っちゃったんですけど、でもそれもバンドって感じですよね(笑)。

    左から、前田恭介、内澤崇仁(vo,g)、佐藤拓也(g,k)、伊藤彬彦(d)。

    ━━「Parasol」はアルバムの冒頭を飾る曲ですね。そのモータウン的な、ハネるリズムを演奏するうえで意識したことはありますか?

     これは一度音決めで録ったときに、“音価の感じが違うかも”みたいなことを言われたので、音価を短くしすぎないように伸ばすことを意識していました。あとはギター・ソロのうしろでベースが若干動いていますけど、あそこは全体を録り終わったあとに“何かやってください”と言われて。そのときちょうどヴルフペックのジョー・ダートみたいに(アーニーボール)ミュージックマンのスティングレイにフラット弦を張っていたので、“ジョー・ダートならどうするかな?”みたいな雰囲気で弾いてみました(笑)。

    ━━2曲目の「Arata」ではベース・ラインを動かすのではなく、あえてルートで支えていますよね

     この曲はCMで使われる曲だったんですけど、あんまり音を詰め込みすぎると映像になってテレビで流れる際に適してないんですよ。特別なことはしないほうが歌が聴こえることが多くて。たぶん内澤くんもそれを意図してデモの時点でルート弾きをしていたので、それに徹しました。

    ━━そこからラスサビでは、まさに“世界が変わった”という歌詞のとおりにベース・ラインにも動きが出る瞬間がありました。ここはどのようにフレーズを作りましたか?

     デモでも最後は動いている感じがあったんです。そこは譜割りだけデモの感じを拝借して、ヴォーカルのメロディ・ラインを追いかける形で弾いてみました。これは1テイクしか録っていないと思います。

    ▼ 続きは次ページへ ▼