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INTERVIEW – KAN INOUE[WONK]

  • Interview:Zine Hagihara
「If」や「Filament」で使用された中国の楽器メーカーALPによるコンパクト・ベース、RG5-101AX。ネックはカナディアン・メイプル、指板はローズウッドで、金属アルミ製のボディは折りたたむことができるため、持ち運びがしやすい。INOUE曰く“音がかなり個性的”だったため、ピックアップをEMG製に、ブリッジをヒップショット製に替えるなどして大幅な改良を施している。

過去の作品の焼き増しを作っても
しょうがないじゃないですか。

━━使用機材について聞かせてください。INOUEさんは、5弦のプレべやPBタイプを使うことが多かったですが、今作ではどうですか?

 フラット・ワウンドを張ったフェンダー・アメリカン・スタンダードの5弦のプレべを「Depth of Blue」や「In Your Own Way」などで、パーツを集めて自分で組んだPBタイプを「Sweeter, More Bitter」や「Orange Mug」などで使いました。あとは中国のALPっていうブランドのトラベル・ベースを新たに導入しています。細い金属のボディの輪郭だけがあって、しかもヘッドレスなんです。もともとヘッドレス・ベースが欲しかったんですけど、スタインバーガーだと右肘をボディに乗せられないし、かといってボディが普通にあるヘッドレスがなんとなくバランス的に好きじゃなくて、そんななかでボディは“あるけどない”うえにヘッドレスっていうドンピシャの見た目が気に入ったので、いろいろ改良して使ってます。

━━どんな音がするんですか?

ソープバー・タイプのピックアップをふたつ付けているんですけど、フロントがPBタイプ、リアがハムバッカーなので、“めっちゃイカついPBタイプ”っていう感じのサウンドですね。だけどEMG特有のカリカリ感というか、いい意味で温かみがないキャラクターだと思います。「If」での歪ませたサウンドは、いつも使っているプレべだとハイの成分が足りなくて、それはそれでシブいんですけど、もっとギャリっとした感じの音がよかったのでこのベースを使ってます。ギターとベースの間の子ぐらいのニュアンスがほしいときに重宝しますね。

━━ヒップホップやジャズなど、2010年以降のブラック・ミュージックに影響を受けているバンドは、昨今のバンド・シーンでは珍しくなくなってきていると思いますが、それについてはどう思いますか?

 僕らにとってもかなりやりやすい環境になったなっていうのがまずあります。ブラック・ミュージックがバックにあってそれを自分流にミックスするということを、SuchmosやKing Gnuなどが活躍したことで理解されやすい環境になりましたよね。

━━なるほど。

 一方で……それに便乗した似たようなものが増えているという意味で“もういいかな”と思うことはけっこうあります。WONKはブラック・ミュージックに影響を受けているバンドではありますけど、そういうジャンルのなかで使い古されているコード進行だったりは極力避けてきたんですね。というのも、過去の作品の焼き増しを作ってもしょうがないじゃないですか。もちろん影響を受けてリスペクトをしつつも、“WONKとして解釈するなら”ということを念頭にアプローチしたほうがおもしろいな、と。自分の周りには僕たちと同じようにアイデンティティを重んじるミュージシャンも多いですけどね。

━━“WONKらしい引っかかり”は、結成当初から意識している部分だと話していましたもんね。

 そうですね。常に自分たちらしさを大事に、これからも作品を作り続けたいと思います。

◎Profile
かん・いのうえ●1990年9月15日生まれ。12歳からギターを手にし、高校時代にベースを弾き始める。ジャズを演奏する両親の影響でジャズに目覚め、大学時代にさまざまなセッションを渡り歩く。その先でARATA HIKARU(d)に出会い、WONKを結成した。バンドではベースのほか、作曲・編曲、ミキシング・エンジニアなども担当する。IT企業に会社員としても所属しており、ゲームのサウンド・デザインなどを行なう。

◎Information
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