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Interview – KAN INOUE[WONK]

  • Interview:Zine Hagihara

記譜では表わせないタイム感というか
その曖昧なニュアンスは特にこだわっている

ブラック・ミュージックに対して独自の解釈を持ち、音楽で実験を行なうエクスペリメンタル・ソウル・バンド、WONK。彼らが6月17日にドロップするフル・アルバム『EYES』は、実験的な要素は残したまま耳に馴染みやすい心地よさがある。このアップデートの鍵となるのが、ミックスや作曲・編曲も担当するベーシスト=KAN INOUEだ。彼のベース・プレイは“派手さ”と“機能性”のバランスが絶妙で、アンサンブルを支えながらも楽曲のフックとなるキャッチーさがある。プロデューサーとベーシスト。彼のふたつの視点がアルバムにもたらした要素について聞いた。

“ベースへのこだわり”が曲と合うか
って考えちゃうクセがある

━━2017年には『POLLUX』と『CASTOR』というふたつのフル・アルバムを同時リリースし、そこから3年の期間を空けて、新作『EYES』が6月17日に発表されました。

 3年も経っていたんですね……あまり実感がないですけど、確かにガッツリ制作に入ったのは久しぶりな感じのような気もします。

━━この3年間は、WONKとしても、それぞれのメンバーとしても多様な活動をしていた期間だったのでは?

 堀込泰行さん、iriさん、m-flo、香取慎吾さんなど、アルバムを作る以外にもかなりいろいろやってました。僕はアンダーグラウンドのシーンにいるヒップホップ・アーティストのバック・バンドでベースを弾くこともありますし、そういった方々の曲のミックスをすることもあります。一方で、香取さんに楽曲提供をさせていただくという違ったシーンでの活動もあって、この幅広さがWONKのいいところだと思うんです。

━━活動が始まった当初は、“ビート・ミュージックとバンドの融合”というコンセプトがありましたが、最近の活動や、新作『EYES』の収録曲の音楽性がかなり広いことから、このコンセプトにも変化があったのでは?

 まさにそのとおりです。バンドを始めた頃は、(HIKARU)ARATA(d)曰く、J・ディラ由来のビート・ミュージックのようなものをバンドでできないかというコンセプトのもと集まったんですが、当初はそれが僕らにとってかなり新しいことで、でも始めてから3、4年して、今はブラック・ミュージックを土壌にした日本のバンドがかなり増えてきた印象があるんです。僕らも良い時代になったと思っているんですけど、僕らが当初持っていたコンセプトは、今は僕らじゃなくてもできることになったのかなって。“自分たちにとって新しいこと”をどんどんやっていこうというのが今のWONKらしさなのかなと思っています。

━━今作は音楽性の幅が広がっていながらも、聴きやすいポップさも感じました

 昔の制作スタイルはパッと聴いて直感的にカッコいいと思えるものをそのまま採用して進める感じだったんですけど、今作は“この曲を何度も繰り返し聴きたくなるには?”っていうことについて話し合ったりしてましたね。それが結果としてポップな印象につながるのかもしれません。

━━なるほど。

 あとは、曲ごとではなく、全体をとおして考えたことも影響しているのかも。今作はコンセプト・アルバムということで、架空の映画のサウンド・トラックをイメージしていて、あらゆる音楽性を帯びたものを目指しました。全体を通して聴くとジャンルの振り幅がかなり広いですけど、1曲1曲は聴きやすくなっているのも狙ったポイントですね。自分たちでもかなり手応えを感じてます。

━━『POLLUX』と『CASTOR』は、WONKが持つビート・ミュージックの面と、バンド・サウンドの面をぞれぞれ両極端に表現したアルバムとして同時リリースしていました。それに対して今作はバンド・サウンドに寄った印象があります

 バンド・サウンドっぽくしようっていう意識はなかったんですけど、前2作よりも“自分が弾いた感じ”はありますね。前作はベースも弾きつつ、打ち込みやシンベも使った感じでしたけど、今回はもっとベースを弾いてるし、あとは自分で弾いたギターもふんだんに使ってますね。

左から、INOUE、KENTO NAGATSUKA(vo)、HIKARU ARATA(d)、AYATAKE EZAKI(k)。
『EYES』
Caroline International
POCS-23906

━━「Rollin’」は歪んだギターをかなりフィーチャーしてますよね。

 はい。今まではデモ・トラックで弾いたりはしていましたけど、本番に採用したのは初めてです。ほとんどの曲で弾いてますね。

━━INOUEさんはこれまでも楽曲のミックスを担当していますし、バンドのなかではベーシストとしてだけでなく、プロデューサー的な視点もあるのでは?

 そっちのほうが強いかもしれないですね。ただ、やっぱりベースへのこだわりはもちろんあって、それが曲と合うのかなって考えちゃうクセがある感じですかね。そういう意味では、ベース単体よりも全体をどうするかっていうことを考えているんだと思います。

━━ミックスの面では、ベースが低い帯域に位置しているアプローチが「EYES」などで取られていますが、これはどういった意図ですか?

 曲によりけりではありますけど、これまでよりもプロデューサー的な視点で考えることが増えていて。ベースの役割について、曲によってはベースの位置を高くしてガッツリ前に出したほうがいいときもあれば、ソフトな感じに聴かせたい曲が今作はあったので、その場合ではもっと腰を低くして、包み込むイメージでミックスしていますね。

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