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Interview – 亜沙[和楽器バンド]

  • Interview:Zine Hagihara

ルートからなるべく遠くのポジションに行きたい

――フレーズ・メイクについて、亜沙さんもコンポーザーだからこそ、町屋さんの意図を汲んだフレーズを作ることができるものなのでしょうか?

 そうですね。でも、意図は汲むんですけど、それと同時に無視してもいるんですよ。あえて意図を崩すというか。それも闇雲にやるんではなく、試してみてハマればっていうところではあると思うんですけどね。けっこうよくあるのが、“これはいいぞ!”と思いついたアイディアが、試しにハメてみたら全然良くないということ。これはベース・パートだけでなく、どの要素にも言えることではあると思いますし、例えばアルペジオとかが音楽の理屈では合っているプレイだとしても、聴いてみた感じだとハマっていなくて気持ちよくなかったりとかっていうことがあるんですよ。その逆も全然ありますしね。だから、とにかくやってみるっていう風に試している感じだと思います。

――「生命のアリア」や「ブルーデイジー」を聴くと、セクションによってベース・アプローチが歌に合わせて柔軟に変わっているのが印象的なのですが、これもセクションごとにしっかりと当てハメてみて、ひとつひとつ試したということなのでしょうか?

 「ブルーデイジー」なんかは特にそうですね。Bメロの部分は町屋さんが用意してきたフレーズとはまったく違うプレイをしています。

――隙間のあるグルーヴィなプレイですよね。

 はい。聴いている方がどう感じるのかはわからないんですが、それこそThe 1975とかの影響も出ていると思います。休符を多く入れ込むようなベース・ラインになっていて、これもこのセクションを録っているときに思いついて弾いていますね。自分的にはノリを作りながら歌を支える感じにできたかな、と思っています。

――サビに入る直前での高音フレーズも印象的で、サビに入っていく歌に勢いをつけているようでかなり効果的ですね。

 ありがとうございます。やっぱり高音にいくフレージングが好きなんですよね(笑)。なかでもオクターヴを上げるのが好きで、これはもう手クセみたいなものでやりすぎかなと思うんですけど、やっぱり好きなんです。L’Arc〜en〜Cielのtetsuyaさんの影響もありますし、“まあここではこうするよな”っていう自分のなかの成り行きもあります。左手の動きとしては、なるべく遠くに行きたいんです。例えばルートに対して5thを弾くときは、ルートが3弦3フレットのCなら5thは2弦5フレットではなく、3弦の10フレットを弾きたいんです。なぜかというと、その音にたどり着くまでの間に鳴るグリス音が好きなんですよ。オクターヴを上げるのもそのねちっこい感じのグルーヴが強調されるからなんですよね。自分のなかでは合理的なポイントではあるんですよ。ただグリス音がほしいだけでなく、必要だからそのポジションの高音を弾いているわけで、自分のなかでも意味のあるアプローチです。

――『Starlight E.P.』の録音で使用したベースについて教えてください。

 最近はサドウスキーNYCのVintage 5かフェンダー・カスタムショップのカスタム・クラシック・ジャズ・ベースVでしかレコーディングしていなくて、『Starlight E.P.』ではジャズベを使ったと思いますね。

――最後に、和楽器バンドは8月から活動開始8周年を記念したライヴ・ツアーの開催を予定していますが、心待ちにしているファンの方々へのメッセージをお願いします。

 こういう状況下でライヴをやるということには賛否両論あると思うんです。ワクチンの普及も始まったりして、少しずつ世の中がもとに戻りつつあるところもあるんですが、待ってくれている人がいることはありがたいことですので、来れる方は一緒に楽しい空間を作れたらなと思います。来ることができない方も、それはひとつの選択だと思いますので、今だったら行ってもいいかなというタイミングが今後あったら、遊びにきていただけたら嬉しいです。興味のある方がいつでも観る/観ないの選択ができるような状態を維持できるように、俺らも頑張っていきます。

◎Profile
あさ●L’Arc〜en〜CielやJanne Da Arcから影響を受けて音楽の道を志す。詩吟、和楽器と洋楽器を融合させたハイブリッド・ロック・バンド、和楽器バンドのベーシストとして2014年にデビュー。2016年に初の日本武道館公演を敢行し、2019年にはさいたまスーパーアリーナでの2デイズ公演を成功させる。2021年10月にはアルバム『TOKYO SINGING』を発表した。北米単独ツアーを敢行するなど国外での活動も行なう。亜沙はソロ・アーティスト/ボカロPとしても活動し、これまでに5作のフル・アルバムと1作のベスト・アルバムをリリース。最新のソロ・アルバムは2021年3月にドロップした『令和イデオロギー』。

◎Information
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