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    Interview – 亜沙[和楽器バンド]

    • Interview:Zine Hagihara

    歪んだベース・サウンドとダンス・ビートって
    けっこう相性がいいと思う

    ――今回の『Starlight E.P.』の楽曲はすべて町屋(vo,g)さんが作曲しています。「Starlight」はクラブ・ミュージック的に低音の効いた重厚なバンド・サウンドになっていて、その中核にベースがあるというアンサンブルになっていますね。これはある視点では洋楽的なアプローチともとれると思うのですが、ここに今言ったような影響はありますか?

     まず、「Starlight」に関しては完全に町屋さんマターだったので、彼がインプットした要素が多く出ていると思います。けど、そのなかで和楽器バンドは活動8周年を経て9年目をやっている感覚なんですが、やっぱりバンドのアプローチは変わってきていますよね。メンバーそれぞれの進化がありますし、そういった個々のアプローチのなかでそれぞれの要素が出ているんだと思います。

    WGB (和楽器バンド)/「Starlight」MV

    ――バンドらしい躍動感とはまたひと味違ったこの重厚な低音感のベース・サウンドについてはどのように考えましたか?

     ベースの音色の考え方についてもちょっとずつ変わってきていると思います。そのなかではやっぱりソフトウェアなどの技術的な進歩も影響しているんですよね。今までは音作りにKemperを使ったりしていたんですけど、最近はダークグラスのペダルをモデリングしたプラグイン(NEURAL DSP/Darkglass Ultra)を使っていてかなり気に入っています。ここ最近の録音のほとんどはこれで音作りをしてますね。このサウンドが重厚感の要因になっているかもしれません。あとは真空管のプリアンプ(AKIMA&NEOS製Multi Tube D.I. )を取り入れたりもしてますし。ただ、ちょっとEDMを取り入れたようなダンサブルな楽曲だと思うので、そのなかでエンジニアさんがコンポーザーの町屋さんと相談してそういった方向性の処理もしているだろうし、そうやって最終的にこういう重厚なサウンドになっているのかもしれないですね。

    ――ダークグラスのモデリングのプラグインを使用しているとのことですが、ダークグラス・ペダルは歪みサウンドが話題に上がることも多いなか、「Starlight」のベース・サウンドは一聴して歪んでいるように聴こえないのですが、この曲には微妙な塩梅のサウンドメイクがあるのでしょうか?

     実はこれ、けっこう歪んでいるんですよ。 “これ、けっこう歪ませてますか?”ってベーシストの知り合いにも言われることもありますね。アンサンブルのなかだとあんまり歪んでいるように感じないと言われたことがあります。

    ――対して「生命のアリア」、「雨上がりのパレード」などは歪んでいるサウンドがわかりやすいですが、「Starlight」はもっと絶妙な塩梅で機能的に歪みサウンドを使っているということでしょうか?

     そうなんです。歪みの量に関しては曲ごとでも微妙に変わってきますし、そのなかで「Starlight」に関しては比較的に歪み量が少なくなっているんですけどね。基本的に俺のベースのサウンドは歪みをかけていますが、“歪んでいるんだけど歪んでいるように聴こえない”っていう塩梅にしていて、それがアンサンブルに馴染んでいるんだと思います。

    ――そうだったんですね。

     やっぱり、“発想”だと思うんですよ。歪んでいるベースと言っても、チェインスモーカーズとかでも聴けるような、歪んでいるように聴こえるベース・サウンド……それはエレベなのかシンベなのかわからないんですが、そういうものを洋楽から取り入れていて。つまり、歪んだエレキ・ベースのサウンドとダンス・ビートってけっこう相性がいいと思うんです。まあ、組み合わせてみてハマりが気持ちよかったので、それがすべてですけど。エンジニアさんとかメンバーみんなとかいろんな人の力が結集してできた作品でもありますけどね。

    ――「Starlight」のベース・フレーズについては、イントロ直後ではドラムのハーフ・タイムの刻みに対してオクターヴ・フレーズを弾いていて、さらに同じベース・フレーズをサビ後の4つ打ちビートとも組み合わせることで、楽曲全体を通して一貫性のあるフレーズ・アプローチをしているのがおもしろいですね。

     ありがとうございます。ベース・フレーズに関しては、今回のコンポーザーの町屋さんがデモで打ち込んだものがあるので、基本的にやるべきプレイはあるんですけど、それをそのまま弾いてもカラーが出ない場合もあるので、そこからアレンジしていく瞬間もあります。むしろ、最近はキメとかのアンサンブル全体で重要な部分以外はあえて聴かないようにしているところもあって。やっぱりアイディアが引っ張られちゃうんですよね。

    ――その塩梅があるからこそ、フレーズにアイディアが生まれるんですね。

     そうですね。あと、最近は家でレコーディングをしているので、セクションごとに集中して考えながらフレーズを構築できているのもあります。レコーディング・スタジオのなかでその場で考えたり、ディレクションしてもらって録音するやり方もいいところがあると思うんですが、俺の場合は家でやっているほうが自分の納得のいくフレーズをゆっくり考えられるから向いているんですよね。音色の追い込み方で考えたら機材の揃っているスタジオでやる利点もあると思うんですけど、それよりも納得のいくまでフレーズを追い込むほうを重要視しています。まあ、それでも自宅の機材にはけっこう投資しているので、けっこう音のクオリティもいいと思っているんですけどね……(笑)。

    ――やり方次第では宅録のサウンドがスタジオ・クオリティに見劣りしない時代ですもんね。

     そうなんですよね。まあ、レコーディング・スタジオで録る良さっていうのもあると思うんですけどね、雰囲気とか空気感も含めて。現場で生まれるアイディアの良さっていうのもありますし、スタジオはスタジオでいいとは思います。

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