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INTERVIEW − 津川久里子

  • Interview:Koji Ishizawa
  • Photo:Daisuke Abe、Yoko Nakata

日本を長く離れて暮らしていたからか、
日本の美によく気がつくようになりました。

──コロナ禍といえば、「Silent City」は大輔さんがパンデミックで人気のないニューヨークの街並をイメージして書かれたそうですね?

 はい。タイトルを決めるときにニューヨークにちなんだ曲にしようと。眠らない街と言われていたニューヨークが静まりかえってしまった。早く私たちがいた頃のように元気が戻ってほしい、という思いを込めて演奏しました。

──ベース・ソロは非常にメロディアスですが、意識したアプローチだったのでしょうか?

 この曲には思い入れもあったので、“おいしいソロを!”と思って、音数を少なくして、いつも以上にひとつひとつの音に気持ちを乗せました。気づいてくださってありがとうございます。

──それからギターとピアノのソロのかけ合いが素晴らしかったです!

 ですよね! しかもレコーディングであのレベルなので、すごいことです! 最高でした!

──「My Past Life」は再びご自身のオリジナルですが、意味深なタイトルですね。

 前世療法というもので見えた自分の過去生をイメージして書きました。中世のヨーロッパにいた自分が変装をしてお城を抜け出す、というビジョンが見えておもしろそうなので、それを曲にしてみたんです。

──イントロとエンディングでは再びアルコ弾きが登場します。

 おとぎ話のはじまりと終わりというイメージに、アルコがちょうどよかったのでやってみました。

「My Past Life (私の前世)」阿部 大輔&津川 久里子

──大輔さん作のバラード「2020」は、個人的にはちょっとパット・メセニーの世界観を感じられました。

 大輔の作品はほとんどの曲が壮大な世界観があって。たしかに彼が大好きなメセニーの影響がかなりあると思います。

──ピアノ・ソロも素晴らしいです! こういう場合はベースを弾いていて熱くなりますか? それとも、そこは抑えてしっかりリズムをキープをしなければ、という感じなのでしょうか?

 素晴らしいソロですよね! いやいや、こちらも熱くなりますよ! そして、熱くなっても、ソリストをもっと熱くさせるために、しっかりサポートをしてあげるようにしています。そんな、みんなでいい演奏を作り上げるのがたまらなく楽しいです。

──アルバムの最後は、言わずと知れた名曲「夕焼けこやけ」で終わります。

 今住んでいる場所が、この曲の作者の中村雨紅の出身地で、娘の小学校の大先輩でもあるのです。美しい自然いっぱいのこの土地に感謝の気持ちを込めて取り上げました。それに、日本を長く離れて暮らしていたからか、日本の美によく気がつくようになりました。ジャズや洋楽も素敵ですが、日本にも素敵なものがたくさんあるし、自分たちのルーツでもある音楽を、普段もよく演奏しています。

──アルバムで使用したアコースティック・ベースはどこのものですか? ジャケットなどに写っているものがそうですよね?

 そうです。コルスタイン製で、2016年にニューヨークで買いました。前のオーナーが友人なのですが、とんでもない凄腕の素晴らしいコントラバス奏者なんです。その彼が弾き込んでいたものなので、よく鳴るんですよ。また、難しいパッセージも弾きやすくするために、スケールが普通のベースよりも若干短いので、小柄な私にも弾きやすくなっていて、そこも気に入っています。ピックアップは同社のプラネット・ウィングという、あまり日本ではまだ出回っていないものを使っています。お薦めですよ!

──弦や弓は?

 弦はずっとスピロコアのライト・ゲージを使っていたのですが、友人のベーシストからお古のエヴァ・ピラッツィをもらい、今試しているところです。弓はオーストリアの高純度カーボンのARCUSです。一度弾いてみて、ひと目惚れ、いや、ひと聴き惚れですかね(笑)。とにかく今でもお気に入りの1本です。

──ベース・アンプはどんなものを使っていますか?

 フィル・ジョーンズ・ベースのBass Cubです。ニューヨーク時代から使っていましたが、買ったのは日本で、以来、長年愛用しています。日本でツアーをしたときも持ってきましたし、なによりも、ニューヨークでは地下鉄での移動がほとんどだったので、小さいボディにあの音質、あの音量は重宝しましたね。

──最後に今年の予定や、今後の抱負などを聞かせてください。

 今年は大きな舞台での演奏やツアーやレコーディングなどの依頼がすでに入ってきているので、忙しくなりそうです。自分のプロジェクトも昨年に良いスタートを切れたので、今年はさらにこのプロジェクトを大きくしていけたらいいなと思っていますし、大輔とのデュオ4作目も制作したいです。とにかく、子供たちのいいお手本になれるようなうしろ姿見せてあげられるように、今年も頑張っていきたいですね!

◎Profile
つがわ・くりこ●東京都出身。高校のジャズ・バンド部に入部してベースを始め、2002年に奨学金を得てバークリー音楽大学に入学し、ジャズを本格的に学ぶ。卒業後はニューヨークに拠点を移し、さまざまなジャズ・ミュージシャンと共演を重ね、ブルーノート、ディジーズ・クラブ、スモールズなど著名なクラブに出演。また、同じくニューヨークで活動する日本人ミュージシャンとジャズ・バンド、UoUを結成し、2010年に1stアルバムをリリースすると、2010年と2011年には日本ツアーも行なった。同バンドのギタリストの阿部大輔と結婚し、デュオ・アルバムも3枚発表している。2020年2月に帰国。2021年にはUoUで3枚目のアルバムをリリースし、さらに自身の1stソロ・アルバム『プレシャス』を発表した。また、阿部との夫婦ジャズ教則チャンネル“セッションの心得”(チャンネルは阿部大輔名義)をYouTubeで展開している

◎Information
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