PLAYER

UP

INTERVIEW-REITA[the GazettE]

  • Interview:Koji Kano

各楽器のロー感との兼ね合いは一番試行錯誤した部分。

――チューニングはローBまで下がったと思いますが、こういったヘヴィ・サウンドになると、ベースにもまた違ったプレイが求められたと思います。それらは現在のバンド像や自身のプレイにも通じている部分なのでしょうか?

 おっしゃるとおり当時のチューニングはローBで、ベースはESPの白いシグネイチャー・モデルを使っていました。この頃はサウンドに厚みを加えるプレイが増えてきて、『STACKED RUBBISH』のレコーディング以降、一気に機材が増え始めたんですよ。いろいろな選択肢が欲しくて毎月のようにベースを買っていました(笑)。当時の曲調は、今、バンドで目指しているものとブレていないように思うし、自分が出したい音、置きたいベースの位置という意味でも当時の経験則は大きいと思います。

――「VORTEX」や「Red」などが収録されている『TOXIC』(2011年)からは、ギター/ベースともにローAチューニングを採用していますね。これは思い切った決断でもあり、一気にベースの方向性やプレイの考え方が変わったタイミングだったと思います。

 ローAチューニングの曲は麗(g)が持ってきたと思うんですけど、正直最初は、“Aかよ……”って思いましたね(笑)。俺以外のメンバーは打ち込みベースで曲を作るんですけど、それだったらローAの音だって普通に鳴るじゃないですか? でも実際に生で弾くとキツい部分もあって最初は大変でした。特に激しい曲を弾いていると正直何を弾いているのかわからないので、レコーディングのテイクも良いのか悪いのかわからなくなってくる。でも当時はローAの音作りをわかっていなかったんでしょうね。今では逆にローAじゃないとしっくり来ない感じになりましたけど、当時はとにかく慣れるのが大変でした。

――この当時は、ピックアップにバルトリーニを搭載した35インチのモデルを使い始めたタイミングだったと思います。これはヘヴィ化するバンド・サウンドに対する、機材からのアプローチだったということ?

 まさに。いかに的確にローAの音を鳴らすかっていうところで、ESPさんに新たにレッド・カラーのスーパー・ロング・スケールのモデルを作ってもらったんです。ヘッドにテンション・バーを付けて角度を出したり、ブリッジは裏通しにできるようにしたりとか、できる限り弦のテンションを稼ごうとしていました。それまでのJBスタイルが一番馴染み深くて好きではあったんですけど、それだとよりヘヴィさを出すには難しい部分があった。それでピックアップを変更したローA仕様のモデルを作ってもらったんです。

――4弦ベースに5弦ベースの2〜5弦を張っていたと思うのですが、最初から5弦ベースを使うという選択肢はなかったんですか?

 正直、タイミングを見失ったなと思っていて(笑)。当時は“ベースは4弦だろ”っていう頑固な部分があったんですよ。“5弦は邪道”みたいな。5弦を使っていた時期もあったんですけど、1弦を張っていなかったりとか、変なこだわりを出してましたね。だから今となっては、あの頃に5弦に慣れておけば良かったなって後悔もあるんですよね(笑)。でも5弦ベース自体はたくさん所有しているので、いつか5弦になるときが来るかもしれませんが。

――なるほど(笑)。『TOXIC』には「PLEDGE」といった初期を彷彿させるメロウな楽曲もあったりと、ヘヴィさを演出するベース・プレイだけでなく、楽曲に合わせた多彩なアプローチが展開されていますね。

 『TOXIC』を出すときは東京ドーム公演が控えていて、立て続けにシングルをリリースしていたんです。だから必然的に“シングル=アルバムに入る”と考えると、バランスとしてヘヴィな曲だけにはできない。だから結果としていろいろなタイプの曲が入ったんですけど、おかげで自分のベーシストとしての引き出しは増えたと思います。

――7th作『BEAUTIFUL DEFORMITY』(2013年)を発売した2013年には初のワールド・ツアーも実施しましたよね。ここでの経験を振り返るといかがでしょう?

 ワールド・ツアーの経験は本当に大きかったです。俺は昔からやりづらい環境であればあるほどライヴに燃えるタイプなんですけど、海外のライヴハウスって日本みたいな良い環境じゃない場合も多いですよね。だからそういう心構えでやってきたのが海外でも生きたと思うし、そもそもベーシストってアタフタしたらカッコ悪いと思うんです。“いつでも余裕だぜ”みたいな心構えというか、そういうのが大事だと思っています。あと海外だと初めてライヴを観ていただく人ばかりなので、昔ライヴハウスで対バン・イベントに出ていた頃を思い出しました。“あのへんの人たちがノリ始めたぞ”みたいなものは初期に似た感覚で懐かしさもありました。

――「UGLY」からもわかるように、2015年の『DOGMA』以降、一気にメタルコア/デスコアのテイストを含んだ、ラウドなアンサンブルに移行しましたよね。同じくベース・プレイにもより“重さ”が求められるようになった?

 やっぱりこういった曲調だと、より過激なヘヴィさは絶対に求められる部分。そこは改めてテーマを突きつけられた感じがありました。だから「DOGMA」という曲は難しかったですね。

――さらなるヘヴィさ、過激さを生み出すために、機材やプレイなど、工夫した点や新たに取り入れたことはありましたか?

 機材的な面だと、『BEAUTIFUL DEFORMITY』はZON製のベースで録音したんですけど、『DOGMA』では全篇ミュージックマンのスティングレイを使ったんです。ZONはどのフレットもバランスよく鳴るイメージで、動くフレーズの際には適していると思うんですけど、「DOGMA」みたいにユニゾンが多かったり、ヘヴィに特化した曲だと、スティングレイの“ハム一発”みたいなサウンドのほうが押し出しが強くてアンサンブルでも映えるんですよ。

――なるほど。ちなみにローAチューニングの際に使用している弦のゲージは?

 一番太い弦で.130ですね。だからめちゃくちゃ太いわけではなくて、わりと一般的なゲージのものを使っています。

――“ヘヴィさ”を演出するための“ローA弦の鳴らし方”という面だと、ピッキングも重要な考え方になってくると思います。そこでは何か意識していることはありますか?

 ピッキングの強さは曲によって使い分けていて、速い曲になればなるほど弱くピッキングしています。弱いほうが鳴りが安定するというか、弦の鳴りを維持できるんですよ。ミドル・テンポだとある程度リキんでも気にならないんですけど、速い曲だと優しく弾いたほうが絶対的に安定して聴こえる。それまでのような力加減で弾くと弦が揺れ過ぎちゃってついてこないことがあったので、ピッキングの強弱も大事なんだなってことに改めて気づかされましたね。

――加えてヘヴィ・アンサンブルでは、ギターやドラムのロー感に対応した音作りも必要になってきますよね? 

 まずギターも同じくロー感を出さなきゃいけない。そうなるとベースの芯の部分がギターのロー感に似てくるから、お互いにかき消しあってしまうんです。それだとバンドとして意味がないですよね。だからもっと下に潜ろうとも思ったんだけど、その下って、真っ直ぐ飛ばないような、もはやただ広がるだけのロー感になってしまうので、そこの見極めはすごく難しかったですね。バス・ドラムの口径もインチが上がっていって、初期が22インチ、次は24になって、しまいには26になった。だから各楽器のロー感との兼ね合いは一番試行錯誤した部分でした。

――“ギターのロー成分がベースとカブる”という部分に関して、ギターのおふたりと意見を共有し合うようなこともあるんですか?

 感覚的に言うと、スペースが空いている分だけ使おうかなって感じですね。ギターのふたりに“ローを抑えてくれ”と言った記憶はなくて、“そこまで出してくるならココに逃げるしかないか”みたいな受け身な感じで立ち位置を見極めています。

▼ 続きは次ページへ ▼