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    INTERVIEW – 須藤満 [TRIX]

    • Interview:Shutaro Tsujimoto

    1回レコーダーに入ったものをもう一回アンプに回すんだけど、
    鳴らすのはパワーアンプの部分だけでいいって発想。

    ━━今作には、曲名に“ドンキー”や“キノコ”など『スーパーマリオブラザーズ』を思わせる言葉が出てくるのですが、“ゲーム音楽”というテーマもあったのではないでしょうか。フュージョンとゲーム音楽は歴史的にも深い関係性があると思いますし、また直近だとオリンピックの開会式でもゲーム音楽がフィーチャーされ、“ゲーム音楽”は今ホットなテーマのひとつだと思います。

     2020年はマリオが発売35周年だったそうで、どうやらそのニュースに熊谷くんがフックしたらしいんです。それで、ゲーム音楽っぽいサウンドの要素を取り入れてみたらおもしろいのではという発想が生まれたようで。でも、ゲーム音楽の要素がありそうなのは彼の曲だけでしょ?(笑)

    ━━たしかに(笑)。「ドライヴドンキーSP」はかなり速いテンポの曲で、これを16分でずっと弾き続けるというのはかなり大変だっただろうなと。

     はい、大変でした(笑)。指の皮が剥けそうになったのはけっこう久しぶりでしたね。曲がすごく速いなかでも16分の音符のツブツブ感を出さないとダメじゃないですか。あの感じを出すのがなかなか大変でしたね。気合いでやったって感じですけど。結果いい感じになったので良かったのですが、何しろ大変でしたということは強調しておきます(笑)。

    ━━「キノコ」もBPM150以上のスピードで、ウワモノの音色も目まぐるしく変わっていきます。まさにマリオがキノコでスピードアップするような印象で。

     そういうイメージで合っていると思います(笑)。あとは、チック・コリアのエレクトリック・バンドに「Got A Match?」(1986年) という曲がありまして。チック・コリアが亡くなってしまったということもあり、作曲者の熊谷くん曰くオマージュで、「Got A Match?」は基本マイナー・ブルース的な曲なんですけど、「キノコ」はそれのメジャー版ということですね。

    左から、須藤、熊谷徳明(d)、佐々木秀尚(g)、AYAKI(k)。

    ━━今作で使用したベース機材について教えてください。

     ベースは、ムーンのJB-5 Mitsuru Sutoh Modelで、レイク・プラシッド・ブルーのモデルですね。録音は、基本的にはL.R.BaggsのDIを使ってライン録音しています。アコースティック・ギターの人がよく使うDIなんですが、その音がけっこう好きで。そして、ミックスの前にベースの録音データをもらって、自宅でIK Multimediaから出ているアンプ/キャビネット・シミュレーターのプラグインに通して音作りしています。もとのラインだけの音とシミュレーターを通した音の2本をエンジニアに渡し、曲によってふたつを混ぜてもらっても、あるいは片方をクビにしてもらってもかまわないとお伝えして、最終的なサウンドを作ってもらっています。

    ━━アンプ・シミュレーターの使い方としては、アンプ・ヘッド部分をいじるというよりは、キャビネット部分を生かした音作りがしたいという考え方なのでしょうか?

     僕の発想としては、自分がラインで録った音に関しては、あまり変えたくないわけです。ですので、アンプ・ヘッドに入っているEQなどの特性はあまり噛ませたくなくて。イメージ的には、1回レコーダーに入ったものをもう一回アンプに回すんだけど、鳴らすのはパワーアンプの部分だけでいいって発想。ラインの音だけである程度充分なものは作れていると思ってるから、それにキャビのサイズ感やふくよかさが少し足されればいいな、という考え方ですね。

    ━━使用エフェクターについても教えてください。

     珍しいところで言うと、「シュプール」では全篇ベースを歪ませて録っていますね。これはライヴで使っているボスのGT-1000というマルチ・エフェクターの設定をそのまま使っています。作曲者の佐々木くんが録音のときに来てくれて、“スラップとかどうですか”とか言うから、それをやっているうちに“歪ませたらおもしろいんじゃないか”となりまして、結局は一曲通してやりましたね。あとは「Big Time」のベース・ソロでもGT-1000を使っています。これもライヴでよく使うパッチを使っていて、原音の上にオクターヴの音が鳴るようにして、あとはディレイとリヴァーブがかかっていますね。エフェクトについてはそれくらいじゃないかな。

    ━━今作の音作りに関して、ほかに工夫した点はありますか?

     コンプレッサーについては、録るときにL.R.BaggsのDIのほうで少しだけかけてますね。あとは、聴いてもわからないくらいのことだと思うんですが、ベース本体の手元のセッティングを一曲ごとに微妙に変えていて。これは今作に限らずですが、例えばロック調の曲であればピックアップ・バランスを若干フロントに寄せるだとか、スラップだと両ピックアップをレベル10の状態で全部出すか、または少しフロントに寄せるだとかしています。今作の「ドライヴドンキーSP」や「キノコ」では、パッセージが速すぎて音の粒を出さないといけないので少しリア寄りのサウンドにしていたり。そういう工夫は少しやっていますね。

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