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Interview – 須貝彩子[PLASTIC GIRL IN CLOSET]

  • Interview:Koji Kano
  • Photo:Hideki Ueno,Keigo Fusano

美メロと交差する、“歌う”ベース・ライン

岩手の3ピース・ロック・バンド、PLASTIC GIRL IN CLOSETが前作『eye cue rew see』から6年という歳月を経て、6thアルバム『DAWN TONE』を完成させた。2010年のデビュー以降、5枚のオリジナル・アルバムを発表し、国内のシューゲイズ/ドリーム・ポップ・シーンの最前線を走り続けてきた彼女たち。これまでバンドになかった多彩なアプローチが取り入れられた今作からは、バンドとしての“新たな決意”を感じることができる。ベーシストを務める須貝彩子は今作でこれまでとは違った斬新なベース・プレイを展開。ベーシストとして新たな一面を見せた。“3ピース”という最小人数のなかで鳴らされる、その澄みきったサウンドの本質に迫っていきたい。

例え表現が変わったとしても特に“脱シューゲイザー”は宣言しません。

━━前作『eye cue rew see』からちょうど6年という期間が空いての今作、この間にはレーベル移籍など、大きな変化もありましたね。

 『eye cue rew see』のリリース・ツアーが終わってから、このまま同じように活動していても、これ以上プラガ(PLASTIC GIRL IN CLOSET)の音楽性を広げることは難しいのかも……とメンバーぞれぞれが考えるようになりました。その結果、ひとつの答えとして前のレーベルを離れ、ご縁があって今のレーベルのお世話になることになりました。

━━なるほど。移籍したことによって何かバンドに変化はありましたか?

 移籍してからはプロデューサーのショーキチさん(石田ショーキチ/SAT RECORDS)によるレッスンを基礎から受けたこともあって、それまで自己流にやっていた歌い方や、簡単にしか弾いてこなかったベース・フレーズも以前とは大きく変わったと思っています。あと、これまで独学で音楽理論の勉強を頑張っていた祐二さん(高橋祐二/vo&g)が作る楽曲の変化も、ひとつの大きな変化なのではないでしょうか。

━━2018年にはセルフ・カバー・ベスト・アルバム『LESSON1』のリリースもありましたが、レーベル移籍第一弾にあえてセルフ・カバー作を選んだ理由とは?

 実はこれまで、スタジオ録音でエンジニアさんに録ってもらったり、音楽面のプロデュースを細かく受けるという機会がなかったんです。それもあって、今作の制作に入る前に“レコーディングがどんなものか経験しておきたい”という気持ちと、“宅録で自主制作だった楽曲をスタジオで録ってみたい”という気持ちから、あえてカバー作を制作して発表することにしました。

PLASTIC GIRL IN CLOSETのメンバー。
左から高橋祐二(vo&g)、津久井たかあき(d)、須貝彩子(vo&b)
『DAWN TONE』
SAT RECORDS/SAT-029

━━そういった大きな変化があったこの6年間、バンドとしてサウンドや考え方にも変化があったのでは?

 この6年の間にはサポート・メンバーを入れたり、それまで同期音源を流してやっていたライヴ・セットをシンプルなサウンドに戻したりと、バンドとしていくつもの挑戦があったんです。いろいろ試行錯誤してみた結果、最終的に2018年末に原点に返る形でシンプルな3ピースだけのスタイルにたどり着きました。

━━なるほど。そうなると同時にベースの音作りやプレイも変わってくるのでは?

 そうですね。ライヴでは音源に入っているシンセの音やピアノの音をギターで再現しているので、その分サウンドが薄くならないようにベースで和音感を出して全体を支えられるように、以前よりフレーズを動かしたプレイを意識しています。あとはこれまであまり使っていなかった歪みのエフェクターを1曲のなかで何回も踏むようになりましたね。

━━今作『DAWN TONE』の制作はいつ頃から開始されたのですか? またコンセプトや方向性は以前からある程度考えられていたのでしょうか?

 今作は主に2015年から2017年頃にかけて祐二さんが作っていたデモの曲で構成されています。ただ、その曲たちを詰めていくなかで、何度も何度もアレンジや歌詞は変わっていきました。2018年頃には収録曲もだんだんと絞れてきて、同時になんとなくのテーマも見えてきたように思います。ベースと歌のレコーディングは昨年の夏に丸一日かけて行ないました。

━━今作はこれまでのような“轟音ギターのシューゲイズ”という印象ではなく、R&Bや歌謡曲的なアプローチ、さらにはエレクトロ系の多彩な同期音など、これまでになかったような楽曲が印象的です。これもバンドの方向性の変化のひとつなのでしょうか?

 これまではいろいろなジャンルの音楽から影響を受けたエッセンスを、“シューゲっぽい感じ”のアレンジで演奏するスタイルを意識してやってきました。ただ、その方向性で5枚もアルバムを作ったので、これからは歪んだギター以外のアレンジにも挑戦していきたいという思いもあって、こういったサウンドの変化につながったと思います。私たちの良さはあくまでも“楽曲、メロディの美しさ”だと思っていて、歪んだギターはその一部の魅力、という認識を持っています。

M1.「HEART & SOUL」MusicVideo

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