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細かいパルスが体に流れていると、大きく弾いているときでもわりとどこにでも行ける。
━━「踊りかける」はボトムで深く沈むようなロング・トーン中心の前半・後半と、中間部の16分音符によるミニマルなベースの対比があります。こういった違ったリズムで展開する楽曲の場合、自身の根底に流れる基本のリズムごと違うものなんですか?
いや、基本的にはリズムが変わっても同じに保つようにしていますね。細かい16分のパルスが頭のなかに流れていつつ、実際に出す音はゆったり目っていうことはありますけど、基本的に自分のなかで感じているパルスっていうのは細かいものかもしれないですね。
━━「踊りかける」では、アレンジ的にも、ベースが音を伸ばす前半・後半ではハイハットが16分でチキチキと刻み、逆にベースが細かくなる中間部は細かなハットがなくなって途中から入ってくるという構造になっていますね。
これはすごく青柳っぽいところというか。全部を埋めないっていう美学は、彼が作る曲にはありますね。普通はドラムも一緒になってワーッと行きたくなるところをグッと抑えるというのは、青柳らしい引き算するところ。でもその分、演奏は難しんですけどね。頼れるものがないから。
━━だからこそ、自分のなかにきちっとしたパルスを持っていたほうがいいと。
そうですね。ベースだけに限らず、どの楽器でも、それはみんな持っていたほうがいいと思います。いいプレイヤーって、みんなそれを持っているんじゃないかな。そのパルスの感じは、けっこう人それぞれ違ったりするところもおもしろかったりするし、そこをうまいこと歩み寄るというか。それはお互いの演奏を聴きながら細かくアジャストしていると思うし、それが合奏の楽しいところですよね。誰かひとりが先走っているなって思ったら、ついて行かずにそこはあえてキープするっていうこともあるだろうし、そういうことがずっと演奏中は起きていますよね。
━━「ことわり」は、曲始まりは大きな8分が基本で、曲に入ると16分音符を詰めたパターンになりつつ、曲の後半ではまた大きな8分に戻りますよね。ただ、曲最後では8の裏打ちでありつつも、休符部分に16分ふたつのゴーストノートを入れていて、通底する16のパルスを感じます。
こうやってインタビューで話すまで自分で意識したことはなかったけど、確かにそうですね。基本に細かいパルスがあって、その細かいパルスが体に流れていると、大きく弾いているときでもわりとどこにでも行けるというか。パッと切り替えることができるんですよね。
━━なるほど、8で感じているところに急に16は入れられないですよね。
わりと、どっこいしょって感じになっちゃいますもんね。そうならないためには、わりといろんなものが同時に流れているほうがいいのかな。細かいものと、その細かいものをいくつかまとめた大きなものを同時に感じているというか。それで状況によってパッパッと切り替えて行く。
━━リズムの展開がおもしろいというと、「悲しみのゆくえ」はイントロからアタマ抜きで16分連打の粒立ちのいいベース・ラインが躍動感やスピード感を生んでいますが、2番になると8分音符でしかもアタマを弾いてどっしりとした印象にと、音符の選択を変えつつ緩急を作り出していますね。
これは栗原(務/d, perc)の曲で、これも栗原が全部ベース・ラインを考えてきたんです。なんかね、みんなベースが好きみたいだし、しかも弾くとけっこう上手なんですよ(笑)。
━━曲後半はスラップでさらに加速させる展開が見事です。
これも栗原の案なんですけど、よく考えたら謎の展開ですよね(笑)。なんであそこであれが出てくるんだって。でも、その変な感じがおもしろいなと。しかも、僕はあんまりスラップっていうかチョッパーって得意じゃないから、普段あんまりやらないんですよ。でも、これはおもしろいからいいかなって。
━━スラップの部分の音色はパキパキ系ではなく、パッシヴ・ベースのイナタめの音で特徴的ですね。
そうですね、これはプレベでのスラップなんです。個人的にパキパキ系の音って苦手なんですよ。それはスラップに限らず。どうもパキッとした音って弾きづらく感じる。だから、どうしてもトーンを絞ってしまうんですね。