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INTERVIEW – 関将典[Kroi]

  • Interview:Zine Hagihara
  • Live Photo:Momo Angela

停滞していた音楽シーンで、俺らが先陣を切る

━━「Finch」は4つ打ちのドラムに対してウラ拍にアクセントを置いたフレーズで、絶妙なうしろノリになっています。音の置き位置に関してはどこまで意識してコントロールしますか?

 この曲に関しては、プレイのニュアンスや音の置き位置、ズレ具合までを全部ガチガチに決めてレコーディングに臨んだんですよ。そういう意味ではこの曲のプレイにはあまりフリーキーさはないかもしれないですね。というのも、いろんな楽器でいろんな音色を取り入れた楽曲になっているので、ちゃんとロー感でアンサンブルを支えながらも、揺れ感のあるリズムのニュアンスで怪しい雰囲気のノリを作るっていうことを考えて弾いているんです。

━━機能美的なベース・ラインであるということは、怜央さんがデモを作った段階で、ベース・ラインの方向性がけっこう定まっていた部分もありますか?

 そうですね。この曲に関してはデモのベース・ラインの影響がけっこう強く出ているかもしれない。というのも、コロナ禍で時間ができたからなのか、怜央の各楽器の演奏がめちゃくちゃうまくなっていて(笑)、デモのクオリティがめちゃくちゃ上がってきているんですよね。でも、Kroiのベーシストは俺なので怜央のベースを超えるプレイをしないといけないし、もらったデモのフレーズをそのまま弾くにしても俺にしか出せないグルーヴやニュアンスをイメージして、フレーズを変えるにしてもそのまま弾くにしてもその意識は変わらないかもしれないですね。

━━「risk」のベースは1970年前後のモータウン的な古き良きソウルのニュアンスを感じますが、楽曲のアレンジにはシンセなどが使われていて、モダンでありオーセンティックでもあるのがおもしろいですね。

 まさにそのとおりで、ベースに関してはソウルを意識して弾いています。というのも、フレーズは固めたりしているんですけど、“セッションのなかでずっと同じフレーズを弾かない”っていう感じを意識しているんです。だから曲のなかでフレーズをリフレインすることが一度もないんですよ。曲の“リスキー”な感じのイメージを表現したくて、だからベースがずっと落ち着き払って進んでいくっていうことをしたくなかった。後半のファンキーなセクションになるまでの間はベースはとにかく動き続けて、それがモータウンのスタジオ・ベーシストが自由にセッションして曲を作り上げた感じになればなと。

「risk」 Official Video

━━この曲のように古いものと新しいものをミックスするアレンジ・アプローチは常に意識している部分ですか?

 時代やジャンルをクロスオーバーさせるっていうことは、どの場面においても俺らは日頃から口にしていて、今まで混ざってこなかったものを組み合わせることで新しさにつながってくると思うんです。曲作りにおいて、“これだと当たり前な感じになっちゃうよね”っていうことは話して詰めていきますし、音作りの面に関しても、今までなかった組み合わせでアプローチすることにも恐れがないというか、とっ散らかってナンボだって思っているところはあるかもしれないですね。

今作の録音で使用したエフェクターの一部。左端のINFINITY PRODUCTS製Bass Flogger(エンヴェロープ・フィルター)は「HORN」、中央のエレクトロ・ハーモニックス製Soul Food(オーバードライブ)は「dart」、右端のアギュラー製OCTAMIZER(オクターバー)は「Page」で使用された。

━━EPのラストを飾る「HORN」のベースは1980年代のディスコ的なグルーヴ・プレイですが、それまでの曲では70年代ファンク的アプローチが多く、匂いが少し違っていてEPを流れで聴くと飽きさせないですね。

 ディスコをかなり意識したフレーズになっていると思いますね。曲に関しては、俺らの曲のなかでは初めてのソロがない曲なんです。だから単調な曲にしたくないというのもあって、後半ではベースが暴れるような細かく動き回るフレーズにしていて、オクターヴの上下も激しい感じになっています。でも基本としては、Aメロなどで弾いているようにディスコらしくグルーヴィなフレーズが一定にループするっていうことは意識していますね。あとは、INFINITY PRODUCTSのBass Flogger(エンヴェロープ・フィルター)を使っていて、タッチ・ワウっぽさがギリギリで出ないようにセッティングすることで、モコっとしたニュアンスのサウンドにしているのもポイントです。

「HORN」Official Video

━━サビや間奏のリフの後半ではほとんどウラ拍のみを弾くフレーズを展開していて、かなり思い切ったプレイになっていておもしろいですね。

 もともとのデモから怜央のフレーズがそういうニュアンスだったんですけど、ほかの楽器を入れたあとにパッと入れたようなフレーズだったので、まずはそれを整地することから始めました。ウラ拍を弾き続けるアプローチは俺が変化させたポイントですね。それは、ただ単にディスコっぽい曲で終わりたくなかったっていうことを意識していて。なおかつ、セクションが変わったタイミングで楽曲のキャラクター自体も変わるっていうこともかなり意識しています。

━━Kroiの音楽は“ミクスチャー”にカテゴライズされることもあると思うんですが、枠にとらわれない自分たちの音楽の魅力をどのように表現していきたいですか?

 音楽ってミックスされていないものはないと思うんです。カテゴライズされることに関しても自分たちでは特に何も思わないですね。そのなかで俺らの理想は、“いろんな曲を聴いて理解されるバンド”なんです。俺らの音楽を聴いてどんどん深掘りしてもらっていろんな発見をしてほしい。さらに言えば、俺らが表現のひとつとして取り入れている各年代の音楽も掘り下げて知ってほしいし、俺ら発信でみんながさまざまな音楽を知っていけるようなバンドを目指していきたいんですよね。

━━それでは、最後に今後の目標を聞かせてください。

 EPと並行して次の制作は進んでいて、もちろん今までと同じように好き放題やって良い作品にしたいなと思っていますし、それと同時に2020年のコロナ禍で停滞していた音楽シーンを、この2021年以降で、俺らが先陣を切るような勢いでどんどん活動していきたいと思います。下火になってしまったようなカルチャーに風を吹かせてまたおもしろいものを作り上げるっていうのを、このKroiというバンドの発信でやっていけたらなと思いますね。

◎Profile
せき・まさのり●1994年生まれ、茨城県出身。大学入学をきっかけに上京しベースを手にする。その後、サポート・ベーシストとしての活動を開始。その後、SNSを通じて出会ったメンバーとKroiを結成し、SUMMER SONIC 2019に出演するなど、バンド・シーンで頭角を現わし始める。2020年5月に2nd EP『hub』をドロップ。2021年に3枚目となるEP『STRUCTURE DECK』を発表した。

◎Information
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