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INTERVIEW – 関将典[Kroi]

  • Interview:Zine Hagihara
  • Live Photo:Momo Angela

この曲は、ベースはずっとじゃじゃ馬でいたかった

━━今作からはレコーディング・エンジニアとして柳田亮二さん(cero、YOUR SONG IS GOOD)を迎え入れていますが、バンドのサウンドに良い影響があったのでは?

 そうですね。エンジニアの柳田さんはもちろん、楽器テックの方々も本当によくしてくれていて。今までは自分たちで音の作り方を調べてレコーディングしていたんですけど、身近に相談できるプロがいるし、想像していたことを実現させてくれる返答が返ってくるっていうことは本当に助かった点で、サウンドのクオリティにも影響していると思いますね。本当に有意義な制作だったなと思います。だから、バリエーションが広がった作品でもあるし、サウンドのクオリティ自体も高いものになっているんですよね。

━━関さんはベース・ラインを構築するとき、アンサンブルのなかでのバランスに重点を置くと以前に話してくれましたが、今作ではどのような変化がありましたか?

 バンドのスタイルもそうなんですけど、ベーシストとしての俺自身が、“同じものをやりたくない”と考えていますね。“この曲ではこういうプレイだけど、あの曲ではこういうプレイ”っていうそれぞれの違いを見せたいし、そのなかでどんな曲に対しても自分の個性とか、“関っぽいな”っていうのは残したいなと。それはサウンドメイクだったりピッキングのニュアンスで表現していけるのかなっていうことを模索したのが、今回のレコーディングでしたね。

━━「dart」はまさにゴリっとしたスティングレイのサウンドで、ベース・ソロではブーストされた音色に切り替えてメリハリを出していますね。

 ソロのところだけ、エフェクトを踏んでブーストさせていますね。怜央からデモが上がったタイミングでサビまでしかできていなくて、みんなでプリプロをしたときはわりとざっくりと作っていった感じでした。サビで終わる展開だったんですけど、それだと味気ないよねっていうことで、俺が“じゃあ、このあとにベース・ソロやるわ”と言うと、バーチー(千葉大樹/k)が“じゃあそのあとで鍵盤のソロいくわ”と。それでソロで終わるのもなあということでラストのユニゾン・フレーズを作ることになりました。

━━なるほど。

 ソロを弾くときに考えていたのは、レッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)のフリーとか、スティーヴィー・サラスと演奏しているときのT.M.スティーヴンスとか、彼らのようなベース・ソロのニュアンスですね。ゴーストノートや3連符のニュアンスをバチバチに入れてみたりだとか、そしてさらにプルがめちゃくちゃパワフルであったりだとか、そういう部分をけっこう意識して弾いています。今のこの日本のバンド・シーンにはあまりみられないようなスラップのソロっていう感じですかね。馬鹿っぽいというか(笑)、パッションでもっていくみたいなイメージ。テクニカルなわけじゃないけど、圧倒的なインパクトがあってカッコいい感じ。

━━それ以外の部分では、少し歪ませたサウンドでファンキーなプレイをしていて、スチュアート・ゼンダー的なニュアンスもありつつ、自由に弾くフレージングは関さんらしいメロディ使いになっています。

 確かに、そうかもしれないですね。歪みのニュアンスに関しては確かにスチュアート・ゼンダーの意識もあって、それに加えてレイジ(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)のティム・コマフォードがスティングレイを歪ませた感じもありますね。ティムの音はずっと好きで、彼のように一定の歪み感が曲のなかで続いている感じを出したかった。真似事で終わらせたくないので、音使いやニュアンスは自分らしさが出るように意識していますけど。例えば、俺が使っているスティングレイはアクティヴとパッシヴの切り替えができるように改造していて。この曲ではパッシヴに切り替えて弾いているので、ただ単にスティングレイっぽいサウンドのファンクではない方向に落とし込められたかなと思っています。

関が愛用するアーニーボール・ミュージックマン製スティングレイ。高田馬場の工房=アストロノーツ・ギターズでカスタマイズしたお気に入りの1本だ。アクティヴ/パッシヴの切り替え機能を搭載し、パッシヴ時のヴォリュームとトーン、それに加えてアクティヴ時のイコライザーを含めると6つのコントロール・ツマミを持つ。“なかなか馬鹿な見た目で気に入ってます(笑)”とは関の弁。本器は「dart」で使用し、そのほかの曲では、フェンダー・ジャパン製の改造プレベを「risk」、KAWAI製JBタイプを「HORN」「Page」で使用した

━━「Page」はウワモノとユニゾンしながら合間に自由なフィーリングでオブリガートを弾いていて、このプレイが楽曲に絶妙な味付けをしていますよね。

 曲のリズムがけっこう一定で、歌のリズムも流れはあるものの一定の規則性があるので、それに自分も準じてしまったら曲が単調になってしまうんじゃないかなって思ったんです。だったら、俺は好き放題やってしまったほうが深みが出るんじゃないかってこのフレーズになりました。あとは、イントロから聴けるOCTAMIZER(アギュラー製)で作ったオクターバー・サウンドが象徴的に目立って聴こえてくるわけなので、曲の途中でベースがサボれないなと。

「 Page」Official Video

━━“好き放題”というキーワードが出ましたけど、とはいえアンサンブルのなかでのバランスもあるわけで、自分のなかでの“好き放題に弾く”ときの線引きはありますか?

 その部分についてはけっこう考えたりします。プリプロのときとかでみんなと合わせてみて線引きの塩梅を探してみたり、あとは家でDAW上で自主的にフレーズを当てて実験して、考えたりしますね。

━━フリーなプレイに聴こえますが、実はちゃんと考えられているフレーズなんですか?

 そうですね。でも、部分によるんですよ。ガチっとフレーズを決めて弾いているところもあれば、ニュアンスだけを決めてあとはその場のテンションに委ねている部分もあります。それでバランスが取れているところもあると思いますね。

━━それに対してサビでは、音符を伸ばして歌を支えるようなフレーズに切り替えることでコントラストを生んでいますね。

 この切り替えはけっこう意識した部分で、Aメロでは歌のうしろでフリーに演奏して、その後のサビ……特にその後半部分ではひとりだけストレートに音符を鳴らしていくイメージというか。この曲のベースに関しては、ベースはずっとじゃじゃ馬でいたかったっていうことを意識していたんだと思います(笑)。

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