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    INTERVIEW – キタニタツヤ

    • Interview:Zine Hagihara

    ループでもちゃんと全部弾いてます。
    “このほうが踊れるだろ!”って。

    ――自身を器用なタイプではないと言いますが、今作のプレイは技ありなポイントがたくさんあります。「ハイドアンドシーク」では、基本的にはバスドラの動きに合わせたプレイですが、左手をルーズに動かすことによってグリスでうねりを作っていますね。

     それは狙ったところでしたね。この曲のデモを作っているときはシンセ・ベースで打ち込んでいて、キックに対してぴったりと合わせた動きになっているのはそのときの名残です。でも、実際にレコーディングしてギターとかと合わせて聴いてみたときに、生っぽいニュアンスがあるほうがおもしろいなと思ったんです。どこで生っぽさを出そうかって考えてみると、グリスの感じやノイズが少し残る感じなのかな、と。

    ――なるほど。

     音がめっちゃ歪んでいるのもポイントです。アンサンブルで聴くとわかりづらいかもしれないんですけど、単体で聴くとかなりブリブリに歪んでて、わりとロックなソウルでパンクみたいに弾いてますね。録り音でも歪んでいるし、ミックスではエレベの上にファズをかけたシンベを重ねて、さらに歪ませてもらっている感じです。歪ませたことでアンサンブルにスッと馴染んでくれましたね。

    ――「パノプティコン」はドラムとベースのアクセントやリズムがかなり近いですよね。

     そうですね。これもかなり寄せて、ぴったりにしています。なんならユニゾンしているってぐらい。スネアのタイミングでベースもアクセントを弾いているし、それを繰り返しているので、わりと考え方としてはループ・ミュージックっていうか、トラックメイカー的な発想ですね。デモはヤオヤ(リズムマシンの名機、ローランド製TR-808のこと)かなんかで打ち込んでいて、めちゃくちゃビート・ミュージック的思考で作っているんですけど、生で演奏するときは毎回同じフレーズでもちゃんと全部弾いてます。グルーヴがちょっとずつヒューマナイズされておもしろくなるんです。“このほうが踊れるだろ!”って意地でも弾き続けました(笑)。

    ――全体的にリズム体のグルーヴがタイトなものになっていると思うんですが、それに呼応するように歌のリズムもハキハキとしていて小気味がいいですね。

     この曲では歌のリズムは確かに意識していたところで、細かく早口でシャキシャキと進む感じはこういう曲の作詞をするときにはけっこう多いですね。歌詞に合わせてメロディを変えちゃうこともありましたし。あと、この曲を作っているときにめっちゃSOUL’d OUTを聴いてて、こういうリズミカルな歌は俺にはできないかもしれないけど、日本人なら日本語でおもしろい響きを楽しみたいなって思いました……SOUL’d OUT、全然日本語じゃねーけど!(笑)

    ――「デッドウェイト」は音の差し引きが際立った曲だなと思いまして、例えば部分的には伴奏はドラムとベースのみっていう潔いセクションもありますよね。

     なんか、恐れがなくなってきてますね。というのも、今回はマスタリングを海外の方(John Greenham)に頼んでいて、ビリー・アイリッシュとかをやっている方にお願いできたんですよ。「デッドウェイト」を作っているときにはすでに何曲かマスタリングしてもらっていて、そこに対する信頼感があったのでアレンジ面で音数を減らしたとしても“いや、大丈夫!”って思ってました。

    ――ビリーのアンサンブルは、本当に音数が少ないですからね。

     キックとベースと歌しかおらん!って感じですよね。

    ――ベース・フレーズとしては、作中きってのファンキーさで、細かいパッセージなどはなかなかにテクニカルな面でもあります。

     これは大変でしたね。まずはドラムが大活躍する曲が作りてえなっていうところから始まって、サウンドのイメージとしては“邦ロックなんだけどドラムが大爆発”みたいな感じでした。でも、そうなるとベースも頑張らないといけないっていう(笑)。これはちょっとムキになって弾きましたね。最初はMattと合わせて録っていたんですけど、Mattを先に帰らせて、彼のテイクに合わせてしばらくひとりで頑張ってました。

    ――Mattさんが入ったことで、楽器演奏の精度も上がったんですかね?

     そうですね、ちゃんと演奏しなきゃなって思ったところはあります、同い年ってこともあるし。楽器がうまい人に憧れる気持ちはずっとあったし、“いや別にそこまで弾けなくても……”っていう擦れ方もあったんですけど、目の前で同い年のやつが一生懸命叩いてて、ちゃんとやんねえと!って思わされました(笑)。今回のアルバムでは、本当にいろいろ成長できたと思います。

    ――「デッドウェイト」のBメロでは歌のアクセントがウラ拍に切り替わりますが、そこでベースとドラムも同様にウラ拍をアクセントとしたリズムに変わります。このフレーズは歌に対するアプローチですよね?

     そうですね。メロを先に考えてからドラムとベースをそれに合わせていくんですけど、アクセントの位置もそうだし、ゴーストを入れるのか入れないのかとかもめっちゃ考えます。でも、あくまで歌を重視していますね。感覚と照らし合わせて、何度も合わせてみて確かめる感じです。そこが明確にならないとアレンジ作業は進まないですね。

    ――歌を重視すると生まれるフレーズのタイプも偏りづらいですよね。

     そうですね。フレーズから先行すると手癖に引っ張られるけど、歌っていう絶対的な指針があるうえで考えると自然と手癖からハズれていきます。

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