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INTERVIEW – 桐木岳貢[神はサイコロを振らない]

  • Interview:Koji Kano

楽曲をブラッシュアップさせる最善のベース・ラインを
もっと極めていきたい。

――「パーフェクト・ルーキーズ」はテンポの速い4つ打ちのダンス・ロックですが、こういった楽曲はどこか腰高になるイメージもあります。でもローB弦を用いてロー・ポジションで動きを出すことでヘヴィな仕上がりになっています。

 この曲のベース・ラインは最初、“丁寧すぎる、お利口さんみたいなベースだ”ってメンバーに言われたんですよ。“もっと不良になれ”って言われたので、グチャッとさせて荒い感じを出しました。あえてリズムからズラしてみたりもして、今作のなかでは特に尖ったベース・ラインになっていると思います。速い曲はもともとメタルをやっていたこともあって得意なので、やりたいように、自分の好きな感じにできたと思っています。

――間奏ではランニングするような高速リフがありますが、この部分は先ほどの話で言うところのかなり尖ったプレイに感じました(笑)。

 この部分も最初はお利口さんに弾いてたんですよ(笑)。でももっと動きを出してノリを作りたかったのでこのアプローチにしました。この曲はデモだと4弦ベースの一音下げチューニングの想定で作られていたんですけど、僕はスケールを変えるのがイヤだったので、そのまま5弦で弾いています。だからちょっと運指がムズイんですよね。

「パーフェクト・ルーキーズ」【Official Lyric Video】

――20曲目、ラストを飾る「僕だけが失敗作みたいで」はイントロ〜Aメロは打ち込みのドラム、サビは生ドラムになりますが、それぞれでベースのニュアンスも変えていますね。例えば打ち込み部分は細かく音を切った機械的なアプローチになっています。

 打ち込みビートの部分はガチガチに縦に合わせにいってますね。何ならもうベースも打ち込みでいいじゃないかって思うくらいなんですけど、ギターが入っているということもあって、機械的ななかにもバンド感を出すために生ベースを選択しました。

――なるほど。反対に生ドラムの部分はグリスを生かした伸びやかな温かみのあるラインになっています。

 よりベースらしい音を出そうっていう意識はありました。打ち込みから生ドラムになったことでベースも人間味のある感じにしようと。結構インディーズ時代はこういうギターのキラキラしたエモい感じの曲は多かったんですよ。だから自分が神サイを始めた頃に弾いていたようなベース・ラインを思い出す感じでフレーズを構成しました。

――こういった部分も含めて“ベースで楽曲を演出しよう”という姿勢が伝わってきます。同期もガンガン鳴っているので、シンプルに行くことも考えられますけど、ベースをひとつのウワモノ楽器のようなイメージに捉えているようにも感じます。

 僕は自分のキャラクターを出したいとか、自分らしいフレーズを弾きたいとか、そういうことは全然考えてなくて。あくまでも曲に合ったフレーズを弾けばいいと思っているので、“エゴ”みたいなものはあんまりないんです。神サイは曲の幅がすごく広いので、あくまでも曲に合ったベースを弾こうって意識は常に持っていますね。

――曲に合わせて自然に生まれたベース・ラインが20曲分入っているというイメージ? 

 そうですね。でも先輩とかには“もっと自分の音を出したほうがいいんじゃない?”って言われることもあって。僕はあくまでも曲が呼んでる方向にいければいいと思っていて、その考え方は今後もブレずに持ち続けていきたいです。自分のエゴを出そうとはしてないけど、“桐木っぽいベースだね”って言ってもらえることもあるので、この考え方は間違ってないなって思います。

――では今後、いちベーシストとしてどのようなプレイヤーになっていきたいですか?

 柳田が詞曲を作る楽曲が本当にいいと思ってるので、自分個人にはそこまで関心はなくて、神はサイコロを振らないというバンドや柳田が原曲を作る楽曲をさらにブラッシュアップさせる最善のベース・ラインをもっと極めていきたいです。バンドとしてもっと多くの人に曲を届けたいし、そのために最大限に曲を生かすためのベースを弾き続けていきたいですね。“こう弾きたい”っていう自分のエゴとかプライドは二の次で、そういうのはSNSとかで出せばいいと思うので、あくまでも神はサイコロを振らないというバンドと楽曲をよりよくするためにベーシストとしてスキルアップしていければと思います。

――今作の録音で使用したメイン・ベースを教えてください。

 メイワンズのPRESTIGE CLASSICで、買ったのは4年くらい前ですね。メイワンズを選んだ理由としては、ポーランドのヴォイテク・ピリホフスキっていうベーシストが使っているのを見てひと目惚れしたから。すごく好きな音なんですけど、扱いが難しくて最初は手こずりましたね。馴染むまでは一日中ずっと触ってました。

桐木のメイン・ベースであるメイワンズ製PRESTIGE CLASSIC。本器はアギュラー製のピックアップを搭載したアクティヴ・モデルだが、桐木はパッシヴの状態で使用している。その理由を“アクティヴだとレンジが広すぎて暴れすぎちゃうんです。だからエフェクターとの兼ね合いも考慮してパッシヴで使っています”と語る。

――最後に、神サイは2015年の結成以降、急速にシーンを駆け上がってきたわけですが、今後どんなバンドになっていきたいと考えていますか?

 僕らは性格上、いろんなことをやりたいっていうバンドなので、これからもジャンルは決めずに、イレギュラーなことをやっていきたいですね。もしかしたら見る人によっては“こいつらどこ目指してんの”って思われるかもしれませんけど、それもいいじゃんって思うので、根底にロックはありつつも、より柔軟に対応しつつ多彩な曲をやっていきたいと思います。だから“いろいろな音楽をやるバンド=神サイ”だと思うし、そのイメージはこれからも持ち続けていきたいです。

◎Profile
きりき・がく●1994年3月22日生まれ。神はサイコロを振らないは2015年に結成された4ピース・ロック・バンドで、バンド名は現代物理学の父、アルベルト・アインシュタインの言葉に由来している。2020年7月にデジタル・シングル「泡沫花火」でデビュー以降、精力的な音源リリースを展開し、TikTokを始めとしたSNSでも人気を拡大させる。2022年3月2日に初となる1stフル・アルバム『事象の地平線』を二枚組で発売した。“東阪野音Live 2022「最下層からの観測」”を2022年3月20日に日比谷野外大音楽堂、4月10日に大阪城音楽堂にて開催。5月から、全国13都市・14公演で開催される全国ツアー“Live Tour 2022「事象の地平線」”を開催する。

●東阪野音Live 2022「最下層からの観測」 東京公演
開催日:2022年3月20日(日)
会場:日比谷野外大音楽堂

●東阪野音Live 2022「最下層からの観測」 大阪公演
開催日:2022年4月10日(日)
会場:大阪城音楽堂

●Live Tour 2022「事象の地平線」
-Tour Schedule-
福岡公演:5月21日(土)福岡 UNITED LAB 
宮崎公演:5月22日(日)宮崎 LAZARUS 
山口公演:5月28日(土)周南 RISING HALL 
島根公演:5月29日(日)松江 B1 
宮城公演:6月4日(土)仙台 Rensa
北海道公演:6月11日(土)札幌 PENNY LANE 24
広島公演:6月18日(土)BLUE LIVE 広島
香川公演:6月19日(日)高松 festhalle 
新潟公演:6月25日(土)新潟 LOTS 
石川公演:6月26日(日)金沢 EIGHT HALL 
愛知公演:7月3日(日)名古屋 DIAMOND HALL
大阪公演:7月10日(日)Namba Hatch
東京公演:7月16日(土)LINE CUBE SHIBUYA 
東京公演:7月17日(日)LINE CUBE SHIBUYA 

◎Information
神はサイコロを振らない
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桐木岳貢
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