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    INTERVIEW – 桐木岳貢[神はサイコロを振らない]

    • Interview:Koji Kano

    大きな期待値を秘めた
    多角的かつ攻撃的ベース・アプローチ

    2015年の結成以降、ハイペースでシーンを駆け上がってきた、神はサイコロを振らない。時代を的確に捉えた多彩なサウンド・アプローチを展開する彼らは、SNS世代から圧倒的な支持を獲得し、着実にステージを拡大してきた。満を持して発表した1stフル・アルバム『事象の地平線』は、これまでのバンドの歴史を総括する、総曲数20曲(2枚組)の超大作。ジャンルレスに彼らなりのロックの形式が描かれている。ベーシストの桐木岳貢は、楽曲のキャラクターに合わせた柔軟なベース・プレイを展開。その適応力の高さは、今後に大きな期待を感じさせる。ネクスト・ベース・シーンの主軸になり得る可能性を大いに秘めた彼のルーツのほか、今作で魅せたいくつもの名演に迫っていきたい。

    僕はもともとメタル出身なので、
    やっぱりそっちに行きたがる傾向はあるかもしれませんね。

    ――まず最初に、神はサイコロを振らない(以下略称、神サイ)はどんな経緯で結成されたバンドなのか教えてもらえますか?

     みんな同じ大学のサークル・メンバーなんですよ。僕はもともと違うハードコア・バンドをやってたんですけど、それを辞めるってタイミングで神サイからサポートに誘われて今に至ってます。なので実は今でも“正式に入ります”とは言ってないんですよね(笑)。

    ――そうなんですね(笑)。そのまま流れでメンバーになっていたと。

     はい(笑)。ヌルッとって感じで、気づいたらメンバーになってました(笑)。

    ――神サイはもともとどんな音楽性を目指したバンドなんですか?

     僕らはただみんなで酒を飲んで、好きな音楽を言い合うってことしかしてなかったので、具体的に目指した音楽性っていうのはないですね。ただ自分はもともとハードコア・バンド出身ということもあって、開放弦を使った速弾きみたいなことばかりやってきたので、神サイに参加した当初からそういったテクニカルなプレイはしたいなと思っていました。

    ――桐木さんのルーツもテクニカル系のベーシストなんですか?

     そうですね。僕はメタリカのロバート・トゥルージロが大好きで、僕が一番最初にコピーした曲は「Master of Puppets」なんです。最初はもう見様見真似でやってたので、一曲を2年くらいかけてコピーしました(笑)。もちろんメタリカ以外のバンドでの彼のプレイも聴きましたけど、どのバンドでのプレイも好きですね。日本人だと、School Food Punishmentの山崎英明さんのプレイには特に影響を受けました。

    左から、桐木岳貢、柳田周作(vo)、黒川亮介(d)、吉田 喜一(g)。
    『事象の地平線』
    Virgin Music
    TYCT-69234(初回限定盤)
    TYCT-60192/3(通常盤)

    ――バンドでの作曲方法、ならびにベース・ラインの作り方を教えてください。

     柳田(周作/vo)が作ったデモ音源をメンバーで発展させていく形ですね。ベース・ラインは曲によって作り込んであるときもあれば、ルートだけが打ち込んであるときもあります。ただ僕は理論とかにあまり詳しいほうではないので、最初は思ったようにグチャグチャに弾いてみるんです。それこそ不協和音とか鳴ってるぐらいの。それを実際にメロディに当ててみて、曲に合うように修正することでベース・ラインを作っています。

    ――今作『事象の地平線』は満を持してのメジャー1stフル・アルバムになりますが、総数20曲(2枚組)というヴォリュームからも気合いが伝わってきます。

     今作はメジャー・デビューして以降に録り溜めていった曲が入っているんですけど、ずっとレコーディングしていたこともあって早くアルバムを出したいとは思っていたんです。でもなかなかタイミングが難しく……やっと今回フル・アルバムを出せるので、すごく嬉しいですね。高校時代はよくCDショップでジャケ買いをしていたので、何となくその楽しみを思い出しました。でも今はサブスクが主流になったこともあって、その文化がないのは寂しいですね。

    ――1曲目「イリーガル・ゲーム」から大胆に攻めたベース・プレイが楽しめますね。全体を通してかなり攻撃的に歪んだサウンドですが、音作りはどのように?

     この曲はもう攻めに攻めたベース・ラインになってますよね。音作りはこの曲のためにダークグラスのMICROTUBES X ULTRAを買いました。歪みゴリゴリなサウンド感にしたかったんです。

    ――なるほど。それもあってかサウンドの傾向がラウド系なイメージです。

     僕はもともとメタル出身なので、やっぱりそっちに行きたがる傾向はあるかもしれませんね。MICROTUBES X ULTRAはもともと先輩にお薦めしてもらったエフェクターなんですけど、試奏してみたらすごく良くて。その時点でこの曲に合いそうだなと思ってたんですよね。

    ――フレーズについても聞きたいのですが、1番2番ともにAメロはリフで構成しつつ、サビはグリスを使ったメロディアスなフレーズに切り替えていますね。どういったフレーズ感をイメージしたんですか?

     もともとサビはデモ段階だともっと単調なベース・ラインだったんですよ。でももっとメリハリを効かせて楽曲にノリを出したかったので、ウネらせたフレーズにしました。僕はこういうウネり感を出したベース・ラインが好きなんです。

    ――ウネり感を出しつつも、あくまでも桐木さんのベースはうしろノリに構えている印象を持ちました。

     まさにそのとおりで、そもそも柳田のヴォーカルがうしろノリなので、ベースもそこに合わせないと曲がゴチャゴチャなるなと。僕だけじゃなくて、メンバーみんなその意識は持っていると思います。

    ――桐木さんは5弦ベースを使っているとのことですが、「イリーガル・ゲーム」や2曲目「タイムファクター」など、特にローB弦のニュアンスが際立っていますね。意図的に重心を低く保っているようにも感じます。

     「タイムファクター」は柳田からのデモ時点ではそこまでローB弦を使ってなかったと思います。だからもっとゴリゴリに重くしてやろうと思ったんですよね(笑)。弦の使い分けに関してはレコーディングのときにもメンバーで話し合うことがありますね。

    「イリーガル・ゲーム」【Official Music Video】

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