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    INTERVIEW – YUKI[JABBERLOOP]

    • Photo:Kokoro Niimi
    • Interview:Koji Kano

    4度の音を入れることで“いかにも感”が中和される。

    ━━ゲスト・ギターに石橋光太郎(toconoma)さんを迎えた「Orange」はしっとりした心地いいバラード・ナンバーですが、ここでは第一に、“ギターのメロディを生かす”というバンドとしての意志が感じ取れました。

     これは6年くらい前に僕が作った曲なんですけど、デモの段階からギターは入れていたんですよ。試しにピアノでもやってみたらそれはそれでアリだったんですけど、やっぱりギターが欲しいなということで、レーベル・メイトのtoconomaの光太郎をレーベルから提案してもらって。僕は彼のテレキャスターの音がすごく好きなので、おっしゃるとおり彼の良さが一番生きる展開/アレンジを狙っていきました。

    ━━永田さんが作曲したということですが、ベースとしては白玉中心のシンプルなアレンジですね。

     これは“自分で書いた曲あるある”なんですけど、どんどんベースが地味になっていくんですよ(笑)。もはやベース・マガジンのトピックとしてふさわしいのか悩むくらいベースが地味でして(笑)。

    「Orange feat.石橋光太郎 from toconoma」Music Video

    ━━いやいや(笑)。でも前半の一定した白玉から、後半ではストレートな8分弾きに移行していたりと、シンプルでありつつも細かい変化が楽曲のスパイスになっていると思います。

     ベースで音を増やして抑揚を作るっていうプレイが想像できなかったんです。だから白玉を8ビートにするとか、曲にダイナミクスをつけたりとか、そういう手法で変化を見せました。レコーディングのときにはいろいろオカズを弾いてみたりしたんですけど、ことごとくうまくいかなくて。それで結局ルートだけになりました。たぶんメンバーも同じ認識だったというか、この曲はベースが頑張る曲じゃないなっていう(笑)。

    ━━ロング・トーンだと「Canvas」も象徴的で、ルートに忠実なシンプルなアレンジですよね。こういったベーシストとして動く/支える部分の匙加減はどのように判断しているんですか?

     この曲も僕の作曲なんですけど、自分で書いた曲は同じくベースがシンプルになりがちっていう(笑)。家でデモを作るときにはいろいろなパターンを試すんですけど、結局ルートをドーンって白玉で弾くのが一番カッコいいってなるんですよ。

    ━━自分で作るからこそ、いろいろフレーズを弾いてしまいそうな気もしますが……(笑)。

     なんかね、邪魔なんですよ。弾けば弾くほど耳障りに感じちゃうというか(笑)。冗談みたいな話ですけど、楽曲に対して白玉こそが一番のアプローチだったんですよね。あとこの曲にはストリングスも入っているので、そことの兼ね合いもありますね。だから決してサボったわけではないですよ?(笑)。

    ━━「Metalic Silver」は全体をとおしておもしろいアレンジだと思いました。スウィング・ビートの部分ではジャジィなウォーキング・ベースに移行していて、鍵盤のアプローチも含めて楽曲の雰囲気が一変します。こういったアレンジはまさに玄人っぽいというか、JABBERLOOPならではですよね。

     このアレンジはMELTENが持ってきたものなんですけど、決して突飛なことをしたって意識はないんですよ。スウィングのところは本誌の連載『Feel Free Jazz!』の前回(第7回)でも紹介した親指弾きのミュート奏法で、そこがちょっと忙しいくらいですかね。

    ━━スウィングの部分はほかの部分と音の質感が違って、ウッド・ベースのようなサウンドだと思ったんですが、そもそも奏法を変えていたんですね。

     EQも何も変えずに奏法だけ変えています。“こういうこともできるんだ”っていう提示でもありますね。ジャズっぽさとか、ウッディな雰囲気を出すために親指奏法をよく使うんですけど、それが楽曲にうまくハマりました。サステインが短いぶん音程感もちょっと曖昧になるんですけど、またそれも楽曲の雰囲気にうまくマッチしてくれましたね。

    ━━「domestic」はこれまでに挙げた楽曲とはまた違って“いかにもベースっぽい”アプローチというか、ルートと5度の音を生かした一定のリフを展開していて、全体を転がしていくようなベース・ラインになっていますよね?

     コレ、実はトリックがあって、最初のFマイナーの部分は1度(F)と5度(C)の音を使っているんですけど、次のGの部分でSus4に変わっても同じくCの音を使っているんですよ。“1度マイナー→2度マイナー→3度メジャー→2度マイナー”みたいなありきたりな展開をあえて避けているという。

    ━━ようは、同じ進行が続くのを避けたということ?

     この手の進行に飽きたって感じかな(笑)。ここに4度の音を入れることで、おっしゃってくれた“いかにも感”が中和されるんですよ。仮にこれが5度の音だったらベタな感じになっていますよね。この4度のおかげで中性的な印象になりました。

    ━━そういった部分も含めて、この曲はベースとしての役割を意図的に変えているような印象を持ちました。

     ベースって、ピアノよりもある種、コード感を強く出せるんですよ。だから推進力とコード感を強く出したイメージかな。同じフレーズを弾いているようで実は違う音を入れていたりとか、ホーンやピアノとユニゾンする箇所があったりとか、そういうので雰囲気って変わるし、変わることによって場が持つ。この曲ってクラブジャズではありがちなビートなんですけど、散々擦られているビートのなかでも違うニュアンスを聴かせたい。だからベースでできるちょっとしたマイナーチェンジを加えました。

    ━━ただ、ラストに強烈なファズをかけているのがある種の“抵抗”みたいでおもしろいです(笑)。

     しかもそこだけ音量がめちゃデカいっていう(笑)。これはミックスのときにエンジニアさんにプラグインでかけてもらったんですけど、試しているうちに“もっと強くかけよう”、“もっと音量を上げよう”ってなりまして(笑)。こういうふざけた部分というか、“これ、そのまま残しちゃうの?”ってことを真面目にやってみたって感じですね。

    ━━エフェクティブなベース・サウンドも今作の聴きどころですが、「Sir」はアタマのファズやベース・ソロでのフィルター系サウンドなど、永田さん特有のエフェクター・サウンドが楽しめますね。

     まずこの曲自体に真新しさがあるわけではないので、ピアノのディレイとかロー・カットを強めていくアレンジとか、今までなら却下されていたであろう要素をそのまま入れちゃっています。アタマのベース・ファズもかなり強めではあるんですけど、“このまま残してもいいんじゃない?”ってことで、ちょっとバランスが崩れている部分も含めてそのまま楽しめるアルバムにしたかったんです。ソロのフィルター部分もベースの音量が大きいんですけど、それはそれでおもしろいかなって。

    ━━フィルターはどんなペダルを使ったんですか?

     エレクトロ・ハーモニックスのNano Q-Tronですね。僕のボードに入るサイズ感というか、あんまり大きいペダルは持ち歩きたくないんですよ(笑)。ファズに関してはプラグインでミックスのときにかけています。

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