PLAYER

UP

INTERVIEW – YUKI[JABBERLOOP]

  • Photo:Kokoro Niimi
  • Interview:Koji Kano

幾多のセッションから導き出した
“最良”の低音アプローチ

親しみやすいメロディとダンサブルなジャズ・サウンドを奏でる国内におけるクラブジャズ・バンドの先頭を走り続けるJABBERLOOP。テレビ番組の挿入歌や高校野球応援の吹奏楽などにも採用される“国民的キャッチーさ”は多くのリスナーを惹きつけ続ける要因でもあるが、6月21日にリリースされた約3年ぶりの新作『WAVE』には、彼らなりの“最新型ジャズ・サウンド”が集約されている。本誌の連載セミナー『Feel Free Jazz!』でもお馴染みのYUKIこと永田雄樹は、楽曲ごとに表情を変える多彩なベース・プレイでジャズ・インストの世界に色を添えるが、そのプレイの根底にはどこまでも“楽曲のため”という明確な思いがあった。今作の制作、そして数々の名演を生み出したベース・プレイの裏側を語ってくれた。

毎回同じ音を使ってもおもしろくないし、フレーズを決め込むのも好きじゃない。

━━今作『WAVE』は前作から3年ぶりの作品となるわけですが、JABBERLOOPは2014年の『塊』以降、3年おきにアルバムをリリースしています。これは偶然? もしくは狙っている?

 今言われて気づいたぐらいで、たまたまですね(笑)。おそらく“そろそろアルバム作らなアカンな”っていうバンドの波が来るのが3年おきだったって感じで、それがバンドとしての自然なペースってこと。ただ今回に関しては、前作を出してからデジタル・シングルを4曲リリースしてシングル曲も溜まったし、楽曲も揃ってきたのでこのタイミングになったって認識ですね。

━━JABBERLOOPはメンバーそれぞれがバンド以外にも精力的に活動を展開しているからこそ、定期的にアルバムをリリースするというのは大変なことだと思います。

 それぞれJABBERLOOPがメインのバンドとしてありつつ、それ以外の時間を使って各セッションをやるっていうのが前提としてあるんです。もちろん週末はスケジュールがカブることもありますけど、そのときはケースバイケースって感じで。だから一年に一枚アルバムを出すこともできると思うんですけど、僕らみたいに結成19年目とかになると一年ではインプットが足りないというか、3年くらい経たないと変わり映えするものが作れない。だから必然的に3年くらいの期間が必要なのかもしれないですね。

『WAVE』
junonsaisai records/XQNF-1020
左からMAKOTO(tp)、YUKI(b)、DAISUKE(sax)、MELTEN(k)。

━━作品におけるイメージとかコンセプト、具体的な収録楽曲はどのように選定していくのですか?

 僕らはそれぞれが別の活動とかライヴを並行してやりつつ、時間を見つけてみんなが曲を書いていくって流れなんですけど、作曲者が最後まで楽曲に責任を持つってスタンスはここ近年変わっていないので、それぞれどういうアルバムにしたいかって考えはちょっとずつ違うというか。全体の軸が見えてくるなかで、“こういう曲が必要だな”とか“この曲はこういうアレンジがいいな”っていう微調整をしていく感じです。だから全曲出揃ってみないとどれが一番輝いているかはわからないし、ミックス段階で何かの音を足したり引いたりしてアルバム内の立ち位置やコンセプトを明確にしていく流れですね。

━━今作には豪華なゲスト・ミュージシャンが参加していることもトピックですよね。まず田中裕梨(BLU-SWING)さんをゲスト・ヴォーカルに迎えた「Light」では、歌が入っていることもあり、これまでのインスト・セッションとはまた違った意識でアレンジが進行していったのでは?

 もともと歌モノを一曲は入れたいなってぼんやり思っていたんですよ。これまでにジャズジャズしいものからソウルなものまで、歌モノはいろいろとやってきたんですけど、今やるならこんな感じかなというところで、MELTEN(k)が形にしました。この歌を歌うなら誰がいいかなって考えたとき、レーベル・メイトのBLU-SWINGの裕梨ちゃんが一番に候補挙がったのでオファーさせてもらいました。彼女はソロ名義ではシティ・ポップをたくさん歌っているので、楽曲のイメージにもピッタリだったんですよね。

━━この曲はバンド・アレンジも凝っていて、Bメロで唐突にサンバのリズムに転調するところがおもしろいですね。

 一箇所だけ急にリズムが変わるのがおもしろいですよね。これはMELTENの案なんですけど、僕もちょっと驚きました(笑)。サンバって普通、ベースはクッたりシンコペーションしないんですよ。でも前後が16ビートのアシッド・ジャズな感じなので、そのカラーに寄せるためにシンコペを入れたりして、完全な“どサンバ”にはならないよう工夫しています。

━━ベース・プレイとしては休符で空気感を作りつつ、Bメロや2番で音価を長く取ってゆったりとしたリズムに展開したりと、メリハリのあるアレンジになっていますね。

 まさしく。サンバの部分は音価が長いので、ほかの16ビートの部分では歯切れ良くしておきたかった。2番Aメロのアタマの白玉は、音をタップリ伸ばしてニュアンスを入れつつ、次の音でバツっと切っているんですけど、これはリスナーをハッとさせたいというか、次のアタマも白玉だったらのぺっとした印象になるので、それを避けるための手段ですね。

━━この曲は印象的なキメが連続しますが、キメの部分でベースも的確にユニゾンで合わせに行っているのがこの曲のグルーヴのキモになっていると思います。

 合わせにいったほうが気持ち良かったし、ハイハットの長さとベースがシンクロしてないと気持ち悪かったんです。このユニゾンはコード・トーン内で使える音を鳴らしていった感じなんですけど、毎回同じ音を使ってもおもしろくないし、フレーズを決め込むのも好きじゃないので、箇所ごとに音づかいを微妙に変えています。でもこの曲は一発録りでBPMも速いから考えながらでは間に合わなかったので、手近に使える音をその場で当てはめていった感じですね。

▼ 続きは次ページへ ▼