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INTERVIEW – YUJI[HEY-SMITH]

  • Photo:Naoto Iwabuchi
  • Interview:Koji Kano

パンクスとして鳴らす“旋律”

スカ/メロディック・シーンを牽引する6人組HEY-SMITHが、記念すべきメジャー・デビュー作となる6thフル・アルバム『Rest In Punk』を11月1日にドロップした。彼らの代名詞でもある軽快なスカ・パンクと疾走感溢れるメロディック・パンクが共存する本作において、ベース・ヴォーカリストYUJIが放つ歌と低音は、確かに楽曲の核として存在している。ここでは、10月19日発売のベース・マガジン11月号に掲載されたYUJIのインタビューより前半部分を特別に公開する。Webと誌面の両記事から、YUJIそして『Rest In Punk』の魅力を感じ取ってほしい。

もし違うバンドをやることになってもベース・ヴォーカルをやりたい。

━━記念すべきメジャー・デビュー作となる今作『Rest In Punk』は、YUJIさんがHEY-SMITHに加入してから3作目(バンドとしては通算7作目)のアルバムになりますが、前作『Life In The Sun』からは5年というバンド最長のスパンを挟みましたね。

 この5年間はコロナ禍もありましたけど、コロナの自粛期間は活動が制限されたこともあって、バンドマンは正直モヤモヤしていたと思うんですよ。だから“5年”と言われると今までの自分たちとしては長いのかもしれないけど、そういう時期もあったからそんなに長いようには感じていなくて。2021年には“Back To Basics TOUR”も回っていたから、止まっていた感覚もないですしね。

━━YUJIさんがHEY-SMITHに加入して今年で8年目になります。加入前はギター・ヴォーカルとして活動していて、加入を機にベースを始めたわけですが、身も心もベーシストになった感覚はありますか?

 例えば、もし違うバンドをやることになっても、ギター・ヴォーカルではなくベース・ヴォーカルをやりたいって意識になりました。前身バンドでは歌うためにギターを弾いていたけど、この8年間で“歌うためにベースを弾く”ってことが自分のなかに定着したと思います。それにHEY-SMITHでベース・ヴォーカルをやってきた8年が、それまでのバンド人生を上回りましたし。

━━ベースが自分に合っていたということ?

 どうなんですかね。でも正直、歌うのが楽なのはギター・ヴォーカルなんですよ。つくづくベース・ヴォーカルって難しいパートだなと思います。でもベース・ヴォーカルの楽しさを教えてくれたのはほかでもないHEY-SMITHで、ただルートだけを弾くのではなくランニング・フレーズも弾くし、メロディアスなプレイも求められる。だからベーシストとしてメロディを弾きながら歌うっていうカッコよさが、このバンドのベース・ヴォーカルにはあると思います。

『Rest In Punk』
ポニーキャニオン/PCCA-06231(通常盤)

━━HEY-SMITHが得意とするスカ・パンクでは、スケールやコード的なアプローチが必要になったりと、ベースの重要度がすごく高いと思います。今作含め、ベース・ラインはどのように作成しているんですか?

 猪狩(秀平/g,vo)さんがベース・ラインも含め、デモの段階で曲を作り込んできてくれるので、基本的にはそれを弾くことが多いんですけど、自分でフレーズを変えることもけっこうあります。今作だと「Inside Of Me」の後半のシャッフル部分は、猪狩さんから“何か変えたいんだよね”と言われたので、俺から何パターンか提案して採用されたフレーズなんです。

━━その「Inside Of Me」はゆったりとしたリズムのなか、ウラ拍に細かい動きのフレーズを入れ込んだ軽快なスカ・ベースの一曲で、ドラムとの兼ね合いも心地いいです。

 俺って、Task-n(d)がいるから自由にやらせてもらっている部分が大きいんですよ。俺が自由にやっているのをTask-nが補ってくれているというか。HEY-SMITHは“ギター・ヴォーカルがふたりいる”と思われることもあるみたいなんですけど、そもそも俺は歌うためにベースを弾いているので、バンドのベーシックを支えるという気持ちはあまりなくて(笑)。だからそこはほかのバンドのベーシストとは違う部分かもしれませんね。

━━イントロとアウトロではフレーズの最後をグリス・ダウンで落とす、という構成がいいフックになっていると思います。今作ではグリスのニュアンスが生かされた箇所が多くありますよね?

 確かに言われてみればかなりやっていますけど、ギター時代からのクセのような気がします(笑)。例えば歌でも“しゃくる”とかありますけど、そういうイメージで、グリスを入れることで歌うようなベースになる。だから色気とか味つけのひとつとしてやっています。“このベース気持ちいいな”、“歌っているようなラインだな”って思わせる方法としてグリスは効果的だし、色気が出ますよね。だからベース・ラインをカッコよくするための手段のひとつだと思っています。

━━「Fellowship Anthem」は一定したランニング・フレーズで構成されたスカ曲ですが、ドラムはウラ拍での4つ打ちということもあって、こういったフレーズとの噛み合い方が抜群ですね。

 そうなんです。特にこの曲でおもしろいなと思う部分がイントロで、アタマで合わせにいくところがあるんですけど、ここもグリスの具合でちょっと遅らせているんです。そこがただのウォーキングとは違うところですね。サビでひたすらランニングをしているところもおもしろいと思います。ランニングすることによって、コード感だけじゃなく、そこにメロディも乗ってきますから。やっぱり俺って、リスナーが口ずさめるようなベース・ラインが好きなんですよね。

━━「Into The Soul」からは、文字どおりソウルとスカ、両方の世界観を感じますが、ベースは低音域での一定したリフで構成されていて、同じ“スカ”でもそれぞれベースの表情が違っているのがおもしろいです。

 ちょっとルード感があるような“往年のスカ・パンク”って感じがおもしろいですよね。猪狩さんからデモをもらった時点でこのフレーズだったんですけど、この曲はそのニュアンスを出すために指で弾いているんですよ。今作はピックがメインではありますけど、何曲かは指でも弾いていますね。

━━ピックと指はどのように使い分けするんですか?

 やっぱりピックと指ではアタック感が全然違う。だから楽曲のキャラクターに合わせて必要なアタック感を選択するようにしています。そもそも俺って、メンバーから指弾きができると思われてないんですよ(笑)。だからレコーディングのときにも、“YUJI、この曲指で弾ける?”って聞かれて、“あ、そうするつもりです!”みたいな(笑)。

━━なるほど(笑)。ちなみに指弾きとピック弾きで音作りは変えているんですか?

 レコーディングではほぼ変えてないです。EQとかは変えずに指のニュアンスで音色をコントロールする感じですね。ライヴだと指弾きのときはより丸みを出すために、EQを指用に調整したりします。

━━約1分の高速ショート・チューン「Money Money」では、また違った方向性のフレーズで構成されていて、ハイポジでの高速リフも出てきますが、ここでの唐突な動き方は意外性があって、驚きました(笑)。

 このフレーズはランシドのマット・フリーマンをイメージしました。特にウラ打ちしているわけでもないけど、フレーズをランニングさせるというか、メロディ・ラインがありつつ、ベース・ラインが歌っている感じを出せたと思います。

左から、イイカワケン(tp)、かなす(tb)、YUJI、猪狩秀平(g,vo)、Task-n(d)、満(sax)。

本誌では、『Rest In Punk』に収録されているその他楽曲でのベース・プレイのほか、YUJIの最新機材を紹介しています。続きはベース・マガジン2023年11月号にて!

続きは発売中のベース・マガジン2023年11月号をチェック!

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◎Profile
ゆーじ●1986年6月23日生まれ、石川県出身。地元石川県金沢市を活動拠点とするロック・バンドTHE BONUSTRACKでギター・ヴォーカルとして活動し、活動休止後の2015年4月にベース・ヴォーカルとしてHEY-SMITHに加入する。HEY-SMITHは2009年にミニ・アルバム『Proud And Loud』でデビューし、以降、国内のスカ・パンク・シーンを牽引し続けている。また2010年からはバンド主催のロック・フェス“OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL”を毎年開催している。2023年11月1日にメジャー・デビュー作となる6thフル・アルバム『Rest In Punk』をリリースする。

◎Information
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YUJI:X Instagram