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    Interview – Sacchan[DEZERT]

    • Interview:Kengo Nakamura
    • Photo:Taichi Nishimaki(Live)

    “俺はこうしたいんです”っていう感じでもなくて、
    受け入れるって決めたから一回やってみようと。

    ━━バラード・タイプの「あなたのそばにいる」は、シンプルななかにも、ベースでメロディックな部分やウネりのある部分を入れていて、今作では一番凝ったアプローチですね。

     これが実は、僕が持っていったものから一番変わった曲ですね。最初は『black hole』のときの自分がまだいて、“これはシンプルにしてしまうと、ただのいい曲になってしまう”というのがあったんです。それで、ベースが入るところからずっとウネっているようなフレーズを持って行ってアレンジャーさんに聴かせたら、“まぁ、いいんじゃない”って感じで反応が鈍くて(笑)。“おもしろいよね、こういうのも”みたいな。それでレコーディング当日に、自分が持っていったフレーズをそのまま弾いたんですけど、そのあとに、“もうちょっとシンプルなやつも録ってみようか”って言われて弾いたのが今のパターンで。レコーディングの現場でフレーズがガラッと変わったんです。

    ━━基本的には淡々と8分で弾いていますが、Dメロでは16分のシンコペーションを入れてリズムに躍動感を出しつつメロディアスなバッキングになっています。このDメロ部分が元のプレイに近いとか?

     ニュアンス的にはそうですね。そもそもはDメロ部分も今とは違うもので、全体をシンプルにしつつDメロで動く感じを残すならこうかなって、レコーディングの現場で曲を通してまるっと変わったんですけど。メロディがとってもよかったので、Aメロ、Bメロ、サビっていう一連の流れに関しては、“ベースに耳を行かせたくない”くらいのことを言われたんです。確かにそうだよなぁと思いつつ、Dメロとか、楽曲の流れで少しアプローチが変わっていいところに関しては、わりと好き勝手にやらせてもらったっていうところではありますね。

    ━━エンディングも、終盤に向けてメロディアスに、だけど歌いすぎないところで抑えていますよね?

     かなりそうですね。録りながら、“そこはちょっと抑えて〜”っていう声が聞こえてくるんです(笑)。ただ、最初に言ったように、今回は人に任せるっていうインプットのアルバムだと思っていたので、そこは、“俺はこうしたいんです”っていう感じでもなくて、受け入れるって決めたから一回やってみようっていう、前向きな感じではありましたね。

    ━━「殺されちゃう」はAメロのロックンロール的な横ノリのグルーヴが気持ちいいです。ここはベースにかかってくる部分も大きいと思います。

     グルーヴっていう言葉を僕が100%理解しているわけではないんですけど、僕がイメージしているグルーヴ感を出すのがとっても難しくて。ラージ・モニターで録ったりとか、クリックを出したりナシにしたり、録り方もいろいろと試して、結構苦労しましたね。今までだったら、ベースはドラムのキックに合わせるイメージが一番わかりやすい録り方だったんですけど、この曲に関しては合わせるとカッコよくないっていう風になって、もっとうしろにうしろにやってくれっていうニュアンスで言われたんです。それで、本当はピッキングを入れるところを入れないとか、うしろに持っていくためのフレーズに変えたっていうのもありますね。

    ━━「デザートの楽しいマーチ」はテンポ・チェンジしたあとにスラップ・パートがありますが、ここもわりとシンプルなオクターヴ・フレーズでまとめています。

     これはわりとヴォーカルからの要望というか、スラップの部分だけを抽出すると、デモに入っていたまんまなんです。デモではスラップというよりはオクターヴ・フレーズというニュアンスで、オクターヴを目立たせるんだったらスラップかなっていう感じですね。自分として、ここでスラップを入れたほうがいいなっていう感じではなくて。この曲に関しては、イントロとかに入っているフレーズはデモではまったく違うフレーズだったんですけど、スタジオで僕が“こんなのはどう?”って弾いたものに変わっていったりはしましたね。

    ━━スラップで言うと、「Your Song」の2番に入る前のピックアップ・フレーズはスマートですね。

     これも、“ここにスラップで何か入れて”って言われたんですよ。僕は、アタッキーで打楽器的なもの以外のスラップって、そんなに好きじゃないんです。もちろんカッコいいし、ベーシストとして存在感はとっても出ると思うんですけど、昨今、ベースのアタックというかハジきの音じゃなくて、違う音を入れたほうがカッコいいんじゃないかなって思うことがけっこうあって。だからスラップっていうものに対して、そんなに意識はしていないんですよね。それこそKORNみたいな、わけわかんない感じというか、“ベース”っていうアプローチじゃない違う次元のようなものは聴いていてすごいなとかおもしろいなって思うんですけど。

    ━━では、“ここにベースで何か入れて”だったら、スラップじゃなかったかもしれない?

     そうですね。僕の選択肢でまずスラップって出てくることはほとんどないので。例えば、Aメロでガッツリとスラップを入れたりする曲っていうのは、音数がそこだけ少なくなったりするときに、“リズムのハネ具合が弱いな”とか“これはもう少しリズムが大事なんだよっていうのを表現したいな”っていうところで、そういう部分にはスラップを入れちゃう傾向はありますね。

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