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Interview – デリック・ホッジ

  • Interview:Zine Hagihara and Tommy Morley
  • Photo:Chris Baldwin

メロディに合わせてもらったことでベースが曲の核になった

━━「Not Right Now」や「You Could Have Stayed」など、全体を通して聴ける歪みとディレイを組み合わせたサウンドが歌うようなメロディとマッチしていますが、どのように作っているのですか?

 あまり派手なディストーションは好きじゃなくて、軽く歪んでトゲトゲしいくらいが好ましい。それにもっとも合うボスの灰色のペダルがあって、今回のアルバムで初めて徹底的に使いまくったんだ。ギター用なんだけど、名前は確か、ME-80(マルチ・エフェクター)かな。ディレイ・エフェクトもこのペダルで作っているよ。あとは、MXRのM288(オクターバー)も組み合わせている。このアルバムでは、エフェクターはこれら2台だけを使ったんだ。

━━「19」は地を這うような低音のリフがカッコいいですが、ときに弾いたり、弾かなかったり、そのさじ加減がとても不思議ですね。

 この曲での興味深かったポイントは、その瞬間その瞬間を感じながら、足し引きを意識することだった。結果的にうまくいったことも多くて、基本的には、ほとんど事前にフレーズを決めることをせずに弾いていたよ。あとは、低いオクターヴを使ったフィーリングを求めて、Statusのフレットレス・ベースもプレイしている。驚くかもしれないけど、メインのメロディはヴォーカルじゃなくてベースの低音でプレイしているんだ。そして、みんなにはメロディに合わせてプレイしてもらったことで、このベースのサウンドが曲の核になっている。それ以外は、本当にその場で手探りでみんなで作っていた感じだったよ。一緒にプレイしていったなかで生まれたものが収録されている。

━━「Fall」はベースの音の伸び方がほかの曲と違うように感じましたが、これもフレットレス・ベースですか?

 そう、この曲もStatusのフレットレスを使っている。この曲だけが唯一、エフェクトをかけずに、コンプレッションすらかかっていないダイレクトな音でプレイしたものだね。ニーヴ(ルパート・ニーヴ・デザイン)のDI以外には何も通していなかったよ。

━━ほかにはどのようなベースを使用したんですか?

 ほかの曲ではすべて、MB-R(ヒロ・ミウラによる米国の工房Miura Guitars U.S.A製)というベースでプレイしている。ヒロはとてつもなく素晴らしいベースを作ってくれたよ。このアルバムのレコーディングに何本かベースを持っていったけど、信じられないことに結局はメインで使っているMB-Rの5弦でやり切ってしまった。曲にマッチする“声”を持っていて、僕が長い間プレイしてきたこともあってキャラクターも充分に持っている。

━━ベースはどのように録音するんですか?

 スタジオで録音するときはDIをしっかり使うことにこだわっているよ。僕のプレイのダイナミクスに対して、ちゃんと反応するような信号の大きさにこだわっている。僕のプレイから生まれる、そのままのサウンドを録音したいからね。それに、あとからバランスを取ったり、調整したりするのが好きじゃないから、エフェクトをかけてからダイレクトにラインへとつないでいて、それでいてエフェクトに入る前の時点で分岐させた信号をマイクプリに通している。

━━ドライとウェットの2系統のライン音を録っているんですね。

 もちろんアンプも使うよ。TCエレクトロニックのBlacksmith(アンプ・ヘッド)と10インチ4発のキャビネットを組み合わせて鳴らして、マイクで録音している。それをライン音とミックスしているというわけだ。

━━なるほど、わかりました。話は変わりますが、新型コロナウィルスの流行、そして反黒人差別デモが大きな社会問題となっている最中でのリリースとなり、これについて重要な意味があると、あなたはSNS上でポストしていますが、あなたが音楽を作る理由はどう変化しましたか?

 このアルバムをレコーディングしたとき、僕は自分の経験を音楽を通じて伝えたいと思っていた。強引に引きずり出すんじゃなく、自由に吐き出したかったし、そのストーリーを伝えるために素晴らしいミュージシャンたちにその手助けをしてもらいたかったんだ。その結果、僕の音楽は正直で美しいものになったよ。このアルバムのレコーディングをしていた数ヵ月後にこんな騒動になるなんて思ってもいなかったけど、こうやって僕の音楽が世のなかに出せていることをとても嬉しく思う。このアルバムもみんなにとってのストーリーを繰り広げる手助けになってほしいし、僕らは誰もが人間として権利を持つべきだと強く感じている今だからこそ、誰にでもストーリーを語り合ってほしい。

━━そういった話を聞くと、あなたにとってベースは単なる道具ではなく、何かを伝えるあなたの声であり体の一部のような存在なのでは?

 本当にそのとおりだよ! そう言ってもらえて本当に嬉しい。僕はたまたまベースを弾くことになったミュージシャンであり、アーティストだと思っている。ベースを使って自分なりのやり方で音楽を奏でているのさ。そして、僕が伝えたいと思うフィーリングを大切にして、楽器を通じて歌いたいと思っている。ベースに強制させるのでなく、自由に語らせたいんだ。ベースはあくまでも語るための乗りものであり、僕が日々世界の平和を願っているように、何らかの形で癒しをもたらしてくれればいいなと思っている。素晴らしい質問をしてくれてありがとう!

━━最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。

 日本は僕にとって常に特別な場所であり続けてきた。僕の1枚目のアルバム『リヴ・トゥデイ』を演奏しに行ったときは1日目からたくさんのサポートがあって、愛が深まるばかりだった。だから、このアルバムを引っ提げてプレイしに行くのが待ち遠しいよ。僕のアーティストとしての心臓の鼓動が伝わってほしいし、君たちと一緒に楽しみたい。ぜひ、君たちのストーリーを僕に教えてほしいな。僕の住んでいるところから見たら地球の裏側に住んでいるような人たちにも、美しい形で語りかけたいと思うし、君たちとつながることが僕の願いなんだ。

【お知らせ】
7月18日発売のベース・マガジン2020年8月号 SUMMERにも、デリック・ホッジのインタビューを掲載! BM webとは違った内容でお届けします。

◎Profile
でりっく・ほっじ●1979年7月5日生まれ、米国フィラデルフィア出身。小学生の頃にベースを弾き始める。その後、クリスチャン・マクブライドに師事。2000年頃からプロ・ミュージシャンとして本格的に活動を開始し、ジル・スコットやミュージック・ソウルチャイルドといったソウル系、コモンなどのヒップホップ系、ロバート・グラスパー・エクスペリメントやテレンス・ブランチャード・バンドなどのジャズ系など、多方面で活躍する。2013年頃からはソロ活動も行ない、これまでに2枚のアルバムをリリース。そして、2020年6月に3rd作『Color Of Noize』をドロップした。

◎Information
Derrick Hodge Twitter Instagram HP