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    INTERVIEW – 市川仁也 [D.A.N.]

    • Interview:Shutaro Tsujimoto

    D.A.N.は最初もっとロック寄りで、5弦になるとも思ってなくて(笑)。

    ━━市川さんのメイン・ベースであるアダモビッチのハイC仕様の5弦ベースはD.A.N.の早い段階から使っていますが、今やバンドの音楽性に欠かせないというか、ハイCだからこそ引き出されているプレイも多いですよね。そういった構想は最初から見えていたんですか?

     D.A.N.は最初もっとロック寄りで、5弦になるとも思ってなくて(笑)。たまたま楽器店でハイCの5弦の存在を知って、弾いてみたら単純に音がすごく良かったというのがきっかけです。ギターを触っていたとかでもなく、コードを多用する感じでもなかったんですが、キレイな響きだからと使っていたら、結果このベースのおかげで選択肢が増えていたって感じですね。

    ━━今作で、アダモビッチ以外のベースは使っていますか?

     「Fallen Angle」で、プレベの質感とアタック感が欲しかったので、去年か一昨年に購入したフェンダーのジャパン・ヴィンテージのプレベを使っています。あとは、「Encounters」と「Floating in Space」でアイバニーズのフレットレス・ベースを使いましたね。「Encounters」ではレイヤー的に少し入れているだけですが。

    「Fallen Angle」MV

    ━━市川さんは、ライヴではピックを口で挟みつつ、指弾きとピックを1曲のなかでも自在に切り替えながら演奏するプレイヤーという印象があります。さらに指弾きも親指弾きからコード・プレイまで多様な奏法の引き出しがありますし、ハイCの5弦を生かしたギター的なプレイや、最近はライヴでもチェロを導入しています。ベースという楽器をここまで自由に捉えているプレイヤーも珍しいと思いますが、これには誰かの影響があるのでしょうか?

     ジャコ(・パストリアス)は僕もベーシストの端くれとしてすごく好きで。彼もフレットをハズしちゃったり、かなり自由じゃないですか? そういう姿勢に影響を受けたというのはあると思います。でも何より大きいのは、僕が誰かベーシストを尊敬して、その人みたいになりたいと思って作品を全部コピーするとか、奏法を真似したりした経験がないってことかもしれません。バンドを始めたきっかけも、わけもわからず友達に誘われて急にオリジナルを作り始めたのが最初で(笑)。ベースって本来こういうものなんだよっていうのを知らずにいきなり曲を作り出したので、固定概念がなかったのはけっこう大きいですね。ラリー・グラハムとか大好きですし、好きなベーシストはたくさんいるんですけど、それを自分でやろうとは思わなくて。影響は受けていると思いますが、自分は自分って感じでやってますね。あと、D.A.N.というバンドが特殊というのもあって。最初は低音だけ出してたんですが、3人で演奏するってなったときに音が足りない場面が出てきて。大悟がシンセでコードを弾くってなると、リフ的なものを弾く人がいないなとか、場面場面で必要な音を考えるようになり、結果ほぼギターやシンセじゃんっていう、いわゆるベースらしくないことをしたほうが曲としてカッコよくなることが多くなってきた感じですね。

    ━━今後も市川さんの変幻自在なベース・プレイを楽しみにしています。ちなみに、今後5弦ベースがローBに行く可能性はありますか?

     いわゆるダブ・ベースというか、マッシヴ・アタックの映像とかを観ていても、ローBのベースが使われていて。やっぱりシンセ・ベースで出す低音の感じとは違った、5弦ベースの一番低い部分の恐い低音、やさぐれた低音みたいなものは、出してみたいですね。低音が欲しいときに、シンセ・ベースもあるし、ローBの5弦もあるしってなると音として選択肢が増えるので。ローBは今後導入されるかもしれないです。

    市川が2015年9月から使用しているという、オランダの工房=アダモビッチ製のハイC仕様5弦ベース、通称“The Dark”。ボディ材はトップ/バックにウォルナット、コアにアフリカン・パドゥークを使用しており、ネックはウォルナットとアフリカン・パドゥークの5ピース、指板材はエボニーだ。暗く、甘いトーンが持ち味。なお写真は掲載していないが、今作ではエレキ・ベース以外の楽器として、アナログ・シンセサイザーのSequential Circuits製PRO-1、NS DESIGN製のエレキ・チェロが使用された。
    今作では全曲、普段のライヴでのセッティングと同様に、ヘッド・アンプにウォルター・ウッズ製のM-300(上写真)、キャビネットにバグエンド製のアンプ(下写真)、DIにKHAN AUDIO製のVTDIが使用された。
    市川のエフェクト・ボード。手前右からstrymon製の、Riverside(オーバードライブ)、El Capistan(ディレイ)、Mobius(モジュレーション)、BigSky(リヴァーブ)。上段右からTC エレクトロニック製polytune 3(チューナー)、FMR Audio製A.R.C.(コンプレッサー)、3Leaf Audio製Octabvre MKII(オクターバー)。明瞭感や透き通った感を出すため、クリアな音にリヴァーブやコーラスを使うことが多く、それがハイCの5弦ベースを生かしたギターを思わせる音作りや奏法につながっている。また、高音でリヴァーブをかけて歪ませることによって、“ほぼ歪んだギターのような音”を作ることも可能とのことだ。

    10月19日発売のベース・マガジン2021年11月号にも市川仁也のインタビューを掲載!『No Moon』のベース・プレイについて、BM webとは別内容でお送りします。

    その他、JIRO(GLAY)と楢﨑誠(Official髭男dism)による表紙巻頭のスペシャル対談のほか、新作『KNO WHERE』をリリースしたOKAMOTO’Sよりハマ・オカモトの特集、ベース用ペダル型プリアンプの大特集などを掲載しています。ぜひチェックしてみてください!

    ◎Profile
    いちかわ・じんや●1993年、東京都出身。高校生の頃にバンド活動を始める。2014年にD.A.N.を結成。2016年、“ジャパニーズ・ミニマル・メロウ”を掲げたデビュー作が国内外で高い評価を受け、海外でのライヴ活動も行なう。これまでに新作『NO MOON』を含め3枚のオリジナル・アルバムを発表。ベーシストとしても安部勇磨(never young beach)や小林うてなの楽曲に参加。D.A.N.としては、11月から“ANTIPHASE OF THE MOON”と題したツアーを展開予定。

    ◎Information
    D.A.N.
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    市川仁也
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