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INTERVIEW – 小原礼[SKYE]

  • Interview:Shutaro Tsujimoto

レジェンドたちが生み出した
“ありそうでなさそうなROCK’N ROLL”

日本のロック・レジェンドである小原礼(b)、鈴木茂(g)、林立夫(d)が高校時代に結成していた伝説のバンド、SKYE(スカイ)。ここに、日本のロック/ポップスをプロデューサーとして牽引し続けてきた松任谷正隆(k)が加入し、今月ついに待望のデビュー・アルバム『SKYE』がドロップされた。全12曲収録の本作には、松任谷由実、矢野顕子、尾崎亜美、ブレッド&バター、吉田美奈子、小坂忠といった豪華ゲスト・コーラス陣も参加。また、はっぴいえんどの未発表曲「ちぎれ雲」が初音源化されたことも話題だ。そんな充実作『SKYE』であるが、今作はそういった長年の音楽ファンを歓喜させるトピックを差し引いても、“日本ロック黎明期のサウンドを今の視点から捉え直す”という意欲に溢れた、2021年の作品としての必然性と目新しさに満ちたアルバムだ。全12曲のうち5曲で作曲や作詞を務め、ベーシストとしてのみならずヴォーカリストとしても今作に大きな貢献を果たしている小原礼に、制作の背景についてじっくりと話を聞いた。

みんな丸くなったし、多少のボケも入っているかもしれないので(笑)。

━━まず、SKYE結成と今作に至る経緯を教えてもらえますか?

 僕と林(立夫/d)が中学のときにSKYEの前にバンドをやっていまして。そのとき僕はギターと歌だったんですけど、一級下のベースの子が高校受験があるからって辞めて解散になり。そのあと、当時僕らは鈴木茂(g)のことも知っていたので、“茂のほうがギターがウマいから”と思って僕はベースに転向し、3人で結成したのがSKYEなんです。僕らはオリジナルを作ろうとしなかったので、カバーをやりながらダンス・パーティーとかに出ていたのが高校時代のことですね。それから今回、松任谷(正隆/k)くんが入って4人になったのは、数年前にあった佐野史郎くんのライヴやレコーディングがきっかけで。まずは僕と林と茂で、佐野くんのライヴを2回くらいやったんですが、そのあとCDを作るときに“キーボード入れたいね”という話になり林がマンタ(松任谷の愛称)に連絡してくれて、そこから“せっかくだから4人で何かやろう”ということで今回の活動が始まりました。

「ADVENTURES 」/佐野史郎 meets SKYE with 松任谷正隆
SKYE
コロムビア/COCB-54336

━━先日NHKで放送されたSKYEの特別番組を観たのですが、そこで小原さんはSKYEについて“10年くらい前だったら多分できてないんじゃないかな。ここに来てできるべくしてできた”と言っていました。10年前と今では何が大きく違いますか?

 みんな歳も取ったし、丸くなったし、多少のボケも入っているかもしれないので(笑)、それぞれの個性が良い化学反応で混じり合うのを楽しめるようになったのかなと。もう少し若いときっていうのは、自分の思いどおりに行かないと嫌だっていうこともあったと思うけど、みんなそういう意固地なところがなくなって、今のほうが全然やりやすいなって思うんです。

━━実際にアルバムを作ってみて、そのあたりはいかがでしたか?

 最初は“やってみないとわからない”というのが正直なところで、みんながどんな曲を書いてくるのか、どういう詞を書くのか、誰が歌うのか、みたいなのが未知数なところから始まったんですよ。でも結果的に、マンタがたくさんの曲を書いてくれたのと、林が詞を4曲も書いてくれたのが僕に取ってはサプライズで、すごく嬉しかったですね。

━━本作はクレジットが共作になっている曲が多いですよね。これはまさに“良い化学反応”が起きている証でもあると思うのですが、共作はどのような形で進んだのでしょうか?

 例えば「ISOLATION」という曲の詞はもともと、茂の「ROCK’N PINO BOOGIE」という曲に林が詞を付けようと思って書いたもので。でもそれを茂に送ったら、“いや、これはインストでいく”ということだったので、 “この詞、余っちゃったんだけど……”とそれが僕のところに送られてきたんです。それをおもしろいなと思って僕がその場でAメロを書いて、マンタに“この先考えてよ”って投げたら、結局この曲は一晩のうちに完成しちゃいましたね(笑)。

━━Aメロまで書いたものを、あとは松任谷さんに任せようというのはどうしてだったんですか?

 やっぱりみんなでやりたかったんです。みんなの声も入れたいし。シンプルなロックンロールの曲なので、誰がやっても多分同じようなBメロに行くと思うんですけど、あえてマンタに参加してもらおうと。やってみたら、うまくいきましたね。

━━アルバムの方向性について、“シンプルなロックンロールをやろう”というのを決めていたんですか?

 僕に関しては、4人ですぐライヴできるような音像の曲を作りたいというのがあったので、たまたまシンプルなロックンロールが主体になったという感じですかね。あとは僕の「Less Is More」という曲が最初に提出した曲だったので、それがみんなのスタートラインになったんじゃないかなと思います。そこからマンタが違った方向性で曲を書いてくれたり、僕もまた別のロックンロールを書いたりと、みんなが良いスタートを切れたのかなと思っていますね。

━━そんな今作の起点になった「Less Is More」はアルバムの1曲目でもありますが、イントロは拍のウラとオモテが気づいたら入れ替わっているという、おもしろいアレンジになっています。

 そこは、林に“わからなくして”って言ったんです(笑)。ビートルズの「I Want To Hold Your Hand(邦題:抱きしめたい)」とかもイントロは、本当は“ン、チャチャチャー“だけど休符が最初は聴こえないから“チャチャチャー”に聴こえるとか、そういうのが小さい頃から好きだったので、この曲に関してはアタマがわからないようにしようかなと。あとは、ドラムが入って、ベースが入って、ギター、キーボードが入るというアレンジがメンバー紹介みたいになっているので、CDの1曲目にしようという話になりました。

━━━━ベース・プレイに関しては、ボトムで支えるようなプレイになっていますね。

 そうですね、シャッフル系の跳ねたやつですね。これは歌いながらやっているので、凝ったことをやるというよりは歌に変な影響がないように、シンプルなベース・ラインにしましたね。

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