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INTERVIEW – 松本駿介[Cö shu Nie]

  • Interview:Kengo Nakamura

当初はもう少し音を減らしていたんですけど、
“もうちょっといけるんじゃないかな?!”って思っちゃって(笑)。

━━「SAKURA BURST」の後半ではハイ・ポジションに急に跳ぶ部分がありますが、タッピングも絡めて弾いているんですか?

 あそこは、ライヴではタッピングでやるだろうなと思うんですけど、レコーディングでは分解して録りました。タッピングを入れたら1回で弾けるんですけど、やっぱりそれだとアタック感がちょっと違うなと思ったんです。フルトーンのOCDをかけると意外とめちゃくちゃ鳴ってくれるのでそれでもいけるんですけど、より良く聴かせるためにレコーディングでは分割して録る方法をとりました。

━━「give it back」のサビではラインを動かしていますが、1番、2番、3番と回を追うごとに動きが大きくなっていてそこにストーリー性を感じました。

 この曲は特にバラード曲のなかではうまくバランスを取れたなと思います。今まで、インディーズの頃に出していた曲ではどうしてもやっぱり動いていて、その次の「defection」(2018年10月リリースのEP『Aurora』収録)とかは逆に動きがなさすぎるかなっていうのでちょっともやっとしていて。そこを模索してきた結果、ようやく落とし込めたなっていうのが「give it back」でしたね。ルートを尊重しつつ歌を底上げするっていう感じのフレーズにできたと思っています。

━━2番のAメロは和音+タッピングですか?

 一応タッピングは入ってます。そこまで和音をバーンとしている感じではなくて、アルペジオっぽい感じで、そこに1弦の音を入れたかったから結果的にタッピングになっちゃったっていう感じかな。ファーっと優しい音で聴かせつつ、ちょっとエフェクトをかけて波のような感じを出せたらなと思いました。

give it back (Official Video)

━━「夏の深雪」はCö shu Nieとしてはすごく意外な楽曲でした。爽やかなギターロック・バンドといえばそうなんですけど、最初のイントロはルート音で弾いていたり、サビはシンプルに8分ルート中心でちょっと動きを混ぜていたりと、控えめな感じですよね。

 そうです。やっぱりコード感が大事だなって思って。あと、サビがすごくご機嫌なリズムというか軽快に行っているので、そこを乗せてあげるのがベースの役割かなって思いました。

━━そういう部分が前作とは違うところですよね。

 本当にそうだと思います。今回は特に“歌を聴かせる”を考えていたし、楽器じゃなくてヴォーカルの主役感をより強めたアルバムなので。ただイントロは、最初はルートで弾いていて、1回目のサビ終わりでイントロに戻ったところでは動きを出しているんですけど、やっぱりサビ終わりの余韻ってすごく重要な部分だったので、あそこで上昇下降はオイシイなと思ってやりたくなっちゃいましたね(笑)。その次の部分でベースが抜けるので、気持ちよく“一旦締め”みたいな感じで。

━━「夏の深雪」はエンディングで唐突にシャッフルに展開しますが、これは?

 これにはちゃんと理由があって。インディーズの頃に「ö=simple is!」っていう曲を作ったんですけど、この曲はそのセルフ・オマージュなんです。「ö=simple is!」も最後にラジオ・ノイズが入ってシャッフルになるっていう構成なんですよ。

━━わりとシンプルなアプローチの「夏の深雪」ですが、Aメロはわりとベースでガチャっとさせていますね。

 アタック強め系ですね。ただああいう場合、自分だったらいつもはスライドさせたがるんですけど、それをしなかったんです。これも『PURE』のときのアプローチとはまったく違うところで。スライドをせずにオクターヴ感とアクセントで魅せる感じに作りました。

━━フレーズ的に、“どうやって弾いているんだろう?”って思いました。

 結構歪んでいるので、細かく分解して理解するっていうのが難しいフレーズだと思います。あと僕は昔から1拍に音を詰め込みすぎちゃうクセがあるんですよね……。なので全部弾くと“え? なんて弾いてるの?”ってなるのはあるかもしれない。

━━でもそこが個性になっていますよね。

 そうですね……キレイすぎないのがいいかなっていうのは、ちょっと思っています。

━━先ほど、“1拍に音を詰め込みすぎちゃうクセがある”とありましたが、そこが松本さんの特徴でもあると思います。個人的には、松本さんのプレイって、“早送り”というイメージで。

 あぁ〜。言い得て妙ですね。

━━今作で言うと「red strand」サビ前のストリングスやドラムと合わせたオブリには、それが凝縮されているのかなと。

 そうですね。あれは“やりすぎかな?”ってくらいやっちゃったんですけど、当初はもう少し減らしていたんです。でもレコーディングで弾いていたら、“もうちょっといけるんじゃないかな?!”って思ってやっちゃって(笑)。調子に乗っちゃったやつですね。1番はスラップだけで、2番はスラップとタッピング。でもタッピングはそこまで使わなくてもいけるので、基本的にはスラップのフレーズだとは思います。

━━あの詰め込むところは、どういう風に作っているんですか? 手グセの部分もあるんですか?

 手グセではなく、まずは“こういうフレーズを入れたいな”っていうのを考えて、そのあとにコードの構成音を確認して、“このフレーズをやるならこの構成音で……”ってやっていきますね。

━━それは弾き方のテクニックみたいなものも関わってくるんですか?

 いや、まずはフレーズをどう具現化させるかで、“それならこう弾くしかないな”となっていく感じです。だから、“ここにライトハンドを入れたい!”とかはあまりないかな。テクニックに関しては、“普通の弾き方だと間に合わないからロータリーにしよう”っていう感じですね。もちろん、“そうしたら1音増やせるからフレーズもこうしよう”ってフレーズ自体に影響が出てくることもあるし、それで結果、どんどん音数が増えちゃったりするんだと思うんですけど。

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