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    【BM web版】歪みベーシストという生き方②━━辻怜次[Bentham]

    • Interview:Takahisa Kondo

    腰高にならないようには心がけていて、バンド内で音を積層できるように意識していますね。

    ━━ライヴでの音作りについては?

     いつもライヴで担当していただいているPAさんは、基本的に“せっかくロック・バンドをやっているんだから、自分がステージ上で背負っている音が正解だと思ってほしい”という考え方の人で。それもあって、なるべくアンプからの出音も含めた自分の音をステージ上でちゃんと作って、どういう音にしたいのかっていうことを意思表示するっていうことは意識していますね。とはいえ、ラインの音も使いますし、アンプで鳴らした音が必ず正義ではないとも思ったりして、僕も一時期、めちゃめちゃ悩んだこともありました。

    ━━ローディさんやPAさんと話し合うことはやはり重要なんですね。

     そのうえで、なるべく自分の出したい音を出せるようにっていうことは心がけていまして、まだまだ自分のテクニックとかスキルが足りない部分が多いとは思いますが、機材でカバーするのか、テクニックでカバーするか、というせめぎ合いのなかで音作りをしています。ちなみに最近、音作りについて参考にしているのが、ラッシュのゲディ・リーなんです。これまで、プログレやハードロックはあまり通ってこなかったんですけど、歪みについて探求しているうちに、ゲディに行き着きまして。彼の、タイトかつガツンときて歪んだサウンドはすごく参考にしてますね。

    ━━最終的に、1970年代頃に生み出された歪みに行き着いたと。

     そうですね。先日、レコーディングでお借りしたベースが1973年製のジャズ・ベースで。リア・ピックアップのマウント位置のせいか、60年代のものよりもパキッとするサウンドのイメージだったんです。そこで、そういう音が自分の好みなのかなっていうことに気づきまして。加えて、レッチリのフリーや田村さん、そしてゲディ・リーも、ルーツの行き着く先がジョン・エントウィッスルなんですよね。これはもう、好き嫌いしている場合じゃないと思って、ジョン・エントウィッスルの音も聴いてみたり。今は、そういった音楽を聴き直したりして、参考にしていますね。

    ━━歪みの探究って、本当に終わらない旅ですね。

     いや、本当に終わらないんですよ(笑)。ベース・アンプで歪ませたり、手元で歪ませるっていう人も多いと思いますし、いろんな要素が重なることで、歪みのサウンドは成り立っているんですよね。そのなかで歪みエフェクターって一番身近にあるエフェクターじゃないですか。そう考えると、ほかの空間系などと比べると奥深さがあるというか。実際、何かやればやっただけ変わるし、おもしろいなと思って、常に研究をしていますね。

    ━━バンド・メンバーの理解があるという話もありましたが、アンサンブルのなかで、ベースの歪みについて心がけていることは?

     なるべく腰を落ち着かせたサウンドにしたいなとは考えていまして、腰高にならないようには心がけていますね。例えば、うちのドラマーは低いチューニングが好きで、なおかつギターふたりもロー・ミッド寄りなサウンドが好きみたいで。そのなかで、自分まで腰高になってしまうと、ぶつかってしまう帯域が出てくるんです。なので、バンド内で音を積層できるように、自分の立ち位置も意識して音作りをしています。加えて、Benthamでは歌が生きないといけないと思っているので、そこも踏まえて考えていますね。

    ━━アンサンブルのなかでバランスを保ちながら、自分の好きな音を出す、という。

     そうですね。ベースって、昔から“リズムとメロディとの接着剤”と言われますけど、その接着剤になるためには、音質や音色も大きく関わってくると思っていまして。なるべく各パートを接着するために、歪みを活用するっていう意識もありますね。

    ━━辻さんの音作りについて、今後はどうように進化していくのでしょう?

     今はアンプの歪みと足下の歪みをいかに気持ち良く混ぜるかっていうことを研究しています。ここ数年でも、エフェクト・ボードの中身はガラッと変わりましたし、何か新しいものだとか、これまで出ているものも含めていろいろ取り入れて、どんどん変化していきたいなと思ってますね。

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