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INTERVIEW – 山田貴洋[ASIAN KUNG-FU GENERATION]

  • Interview:Shutaro Tsujimoto
  • Photo:Tetsuya Yamakawa

ベース・アレンジも
ほかの人の発想をあえて取り入れてみる。

━━アルバムの音楽的なコンセプトについても聞いていきたいと思います。前作『ホームタウン』がパワーポップだったとしたら、今回はそういうテーマみたいなものってあったんですか?

 今回は、一番古くて「Dororo」、「解放区」という曲が3年前のものになるんですけど、当時はアルバムのこととかを考えていない、『ホームタウン』を作った直後の時期でもあったので、そのあたりの曲を収録するかどうかっていうところでしたね。でも気にし始めるとコンセプトやテーマを絞るのも難しくなってきて、だったらもう、ロンドンでレコーディングをするという話も一旦断たれてしまったし、いろんな曲があっていいんじゃないか?みたいになって。最初の発想としてメンバーで話していたのは、4曲のEPを何枚か作ってそれを最終的に1枚にまとめるような作り方が時代にも合ってるんじゃないか?というもので。LP的な考え方ですよね。

「Dororo」Music Video

━━2枚組LPのA面B面C面D面みたいな。

 はい。2020年ぐらいのうちから、そういう発想でアルバムを作っていくパターンはどうだろうという話し合いはありました。結果的に、ちょっとずつ録りながらEPとしてリリースしていくことにはならなかったんですけど、その発想は最後まで生きていたと思います。プレイリスト的な部分にもフィットするやり方というか。

━━バンドのいろんな側面を見せていこうと。リスナーによって引っかかるところが違う作品になっている気がしますね。パワーポップ路線の曲もあれば、ブリットポップを感じさせる曲もあります。

 ロンドンに行くならちょっとサイケデリックな要素がある曲を録ってみたいとか、当初の思いがちゃんと生きている曲もあります。細かいところで言えば、一貫したテーマはあるといえばあるんですよね。“華やかさ”のバリエーションが局所的にあるというか。あと今回14曲入りで1時間ぐらいあるんですけど、これを1枚にするっていうのはなかなか大変な作業でしたね。あまり長さを感じさせないさせないようにもしたかったし、そこはけっこう話し合ったり悩んだりしたところではあります。

━━「星の夜、ひかりの街 (feat. Rachel & OMSB)」について聞きたいです。アルバムのなかでも、かなりグルーヴィなフィーリングの曲ですが、ベース・ラインをどう発想したのかが気になっていて。ラップが乗ってくるトラックでベースを弾く経験も新鮮だったのではないでしょうか?

 これはプロデュースしてくれたGuruConnect (Skillkills)がベース・プレイヤーでもあるので、彼がデモで基本となるアレンジを作ってくれたものに対して、発想していく形でした。ここまでラップが乗る楽曲というのはやったことがなかったので、ビートのアプローチに対してどういうものを弾けばいいのかっていう部分でスグル(GuruConnect)君にはとても助けられて。今回は、ほかの曲でプロデュースしてくれたシモリョー(下村亮介)もそうですし、ベースがプレイできる人のアイディアを新たに解釈するというか、いろいろ参考になった部分が大きかったです。ベース・アレンジに関しては、これまでずっと自分ひとりでやってきたけど、いろんな人の力を借りてみるというか、ほかの人の発想をあえて取り入れてみるっていうトライアルをしましたね。

━━ちなみに、そういうときってデモにシンセ・ベースが入ってるものを、エレキでアレンジし直していくみたいなイメージなんですか?

 エレキ・ベースで弾けるようにっていうことはちゃんと考えられていて。やっぱり“アジカンのサウンドとしてやってほしい”っていうことを前提にしてくれていました。そこから生のベースでブラッシュアップしていく感じですね。

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