PLAYER

UP

INTERVIEW – 山田貴洋[ASIAN KUNG-FU GENERATION]

  • Interview:Shutaro Tsujimoto
  • Photo:Tetsuya Yamakawa

現代のロック・バンド像を更新する
革新的な低音の追求

2021年に結成25周年を迎えたASIAN KUNG-FU GENERATIONが待望の10thオリジナル・アルバム『プラネットフォークス』をリリースした。“現代のロー”にロック・バンドとしてどのように向き合うか、がひとつのテーマとなった2018年の前作『ホームタウン』。そこから4年を経て、ベーシストの山田貴洋は何を考え、どのような思いを今作に託したのか。ロンドン・レコーディングや、下村亮介(the chef cooks me)、GuruConnect(skillkills)といった外部プロデューサーの起用、また3曲で5弦ベースを使用するなど、新たな実践が功を奏したという今作の制作についてじっくりと話を聞いた。

ロンドンのRAKスタジオで録った音が
“素晴らしいな”ってなりまして。

━━2021年はアジカンの結成25周年イヤーでしたね。そんななか届けられた今作ですが、制作はいつから始まったのですか?

 25周年に合わせて出そうっていうことは、そこまで考えてなかったんです。2019年にロンドンのRAKスタジオで録った音、特にドラムの音がメンバー的に“素晴らしいな”ってなりまして。この感じでアルバム1枚をとおしてロンドン・レコーディングできたらいいなっていう話がちょっと盛り上がったんですよね。でも2020年に入って、パンデミックですぐに活動がままならなくなっちゃって。そうなると一旦いろいろ滞ってしまいますよね、そういう話は。

━━そもそもロンドンで録ろうと決めた理由は何だったんですか? アジカンは海外レコーディングを過去にも経験していて、前々作の『Wonder Future』(2015年)はアメリカで録っていますが。

 ライヴでロンドンに行ったときに滞在日程がけっこうあったので、“何曲かレコーディングできたらいいよね”っていう話になったのがきっかけでしたね。シングルに向けてその前から日本でセッションしていた曲を録音しようって。それが「ダイアローグ」と「触れたい 確かめたい」の2曲でした。

━━RAKスタジオのドラムの音はすごく良かったとのことですが、ベーシストとしては、スタジオの環境に対してどういう印象を持ちましたか?

 海外に行くと大体、ベースはあんまり環境的に待遇がよくなくて(笑)。“アンプとかキャビネットはどこに置かれちゃったのかな?”くらいな感じで、ちょっとないがしろにされるパターンが海外レコーディングあるあるな気がします。サウンドについても、ドラムやギターほど作り込む時間がないというか。だからベースに関しては、ポスト・プロダクションで詰めていくことに重きを置いているのかなって思うことが多いですね。過去にニューヨークとロサンゼルスでやってますけど。

━━アンプは鳴らすんですか? それとも全部ライン録りなんですか?

 アンプは一応マイクで録るんですよね。でも鳴ってるキャビがどこにあるか分からなかったり、自分の弾く場所も部屋の片隅とかで、“あれ山ちゃんどこにいるんだ?”みたいな状況になることが多い。あれはどういうことなんでしょうね……(笑)。

プラネットフォークス
キューン

KSCL 3367
左から、山田貴洋、伊地知潔(d)、後藤正文(vo,g)、喜多健介(g)。

━━そんなことが(笑)。でも、欧米のスタジオのほうがドラムまわりにかける時間が長いっていう話はよく聞きますよね。

 ドラムは特にそうですね、海外に行くと大体いい音で録れるイメージがあります。RAKスタジオに関して言うと、部屋の鳴りがもうずっと昔からあった建物にしか出せないものだったなとは思いますね。マイクの違いとかもあったとは思うんですけど、やっぱり時間とともにいろんな環境が複雑に絡んであの音になってるという感じでしたね。

━━イギリスの音は、アメリカのカラッと乾いた音とはまた違うイメージですよね。

 そうですね。確かその日も天気は良くなかったです。確実に日本でこの音は出せないだろうなっていう感じは、「ダイアローグ」を聴いてもらえるとなんとなくわかってもらえるかもしれないですね。ちょっと言葉で表わすのは難しいですけど、大らかさのなかにもちゃんと“点のある音”というか。

「ダイアローグ」Music Video
▼ 続きは次ページへ ▼