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SPECIAL TALK SESSION – TOKIE × 浅井健一[AJICO]
- Interview:Masayoshi Kondo
- Photo(AJICO):Shunya Arai
ベンジーのギターとUAの歌だけの段階で
曲の世界ができあがっている。
――それではレコーディングの様子を聞かせてください。
浅井 2019年の話だけど、まず俺の家でUAとふたりで合わせておいて、その数ヵ月後にメンバーみんなで小さなスタジオに集合したんだよね。
TOKIE あれが20年振り。まだコロナ禍の前だったからハグとかしちゃってた。あのときは久しぶりに集まれたのが嬉しかったのと、新曲のためのリハだったので、お互いのプレイの変化とかそういったことは観察する余裕もなかった。
浅井 それから2020年の1月にビクターのスタジオでプリプロをやって、さあレコーディングだという矢先にコロナ禍になって……結局、レコーディングは9月まで延期になったから、そのあとのツアーも延び延びになった。この4曲は2日間くらいで録ってるけど、そこまでに間が空いてしまって長かったね。
TOKIE 送られてきたデモ音源は昔も今も、ベンジーのギターに合わせてUAが歌っているだけのシンプルなモノ。昔に比べて録音機材が発達したからすごく音質のいいデモなんだけど、そこから作り上げていくという作業は20年前と変わっていません。スタジオでもベンジーはベース・ラインを思いつくと鼻歌で伝えてくれるし、ベースに関してはUAよりもベンジーからの要望に応えるというパターンが多いですね。でもアップライトとエレベの使い分けは自分で判断していて、今回のEPの4曲はすべてエレベで弾いています。
浅井 何曲かベースのフレーズについてのアイディアは伝えたけど、基本的にはトッキーに任せてる。歌だって俺の場合は普段は自分で歌うから、何を決めるにも話は早い。だけど、AJICOでは自分が歌わんもんだから新鮮です。重圧が少ないですね。いろんなセンスが飛び交うと言うか、戦っているというか……(笑)。
TOKIE そんなふたりだからこそ、良い化学反応が起こっている。そのまずふたりありきのところへ、わたしと椎野さんは色付けをするという立ち位置。20年前は、ただ必死でやっていたのが、今ではいろんな対応ができるようになったという自負はあります。わたしと椎野さんもこの20年間にいろんなサポートの仕事でご一緒しながら20年前にはなかったグルーヴを築けたと思う。だから、冷静かつ的確にフロントのふたりを盛り上げることができるようになったと思います。
――おふたりのギターとベースについて、それぞれが思う聴きどころなど教えていただけますか。
浅井 アレンジの関係もあるけど、今回ギターはそんなに目立っとらんよね(笑)。いろいろアイディアも出したけど、最終的にこうなったというところかな。ギターでは「惑星のベンチ」や「接続」のクリーンなトーンの透明感あるバッキングも気に入ってるかな。「L.L.M.S.D.」はお茶目な世界で、バラエティに富んだ4曲に仕上がったと思うよ。
TOKIE AJICOの曲はベンジーのギターとUAの歌だけの最初のデモの段階で、もう曲の世界ができあがっている。だから、ベースに関してもあまり悩まないです。最初に聴いたときに閃くベース・ラインで大体できあがってますね。ドラムとのコンビネーションからベース・ラインを決めていくとか、このリズム・パターンならこういう弾き方が常套句だろうとか、そういうことはまったく考えていません。
――「地平線 Ma」は低いところで這い回るようなベース・ラインが印象的ですね。
TOKIE この曲は半音下げチューニング。しかも、ローのレンジが強く出る弦を張ってレコーディングしたからでしょうね。
――「惑星のベンチ」はルートを強調するパターンと、逆にコード・トーンをしっかりと踏んで動き回るパターンの対比が躍動感を生み出していると思いました。
TOKIE う~ん、そこまで考えていないですが……(笑)。この曲では特に、デモを聴いたときのインスピレーションを大切にしています。曲を自分なりに解釈して、自分のフレーズにして弾く。それだけです。
――「接続」はAメロの部分での下降するベース・ラインで、印象的なアレンジの一因になっていますよね。
TOKIE ベンジーが“こんな感じで”ってスキャットで歌ってくれたのを、ベースのラインとして整えたのがこのパターンですね。
――「L.L.M.S.D.」はブレイクするリズム・パターンも印象的で、緩急の付け方がカッコいいです。
TOKIE これもベンジーからもらったデモの段階で、こういう風に作ってあったんです。そこをベースとドラムで強調しています。あと、全体を通して言えることは、20年前のAJICOのときとは私自身もそうですが楽器も機材も全部替わっていますから、まず音が違うことを楽しんでもらえたらいいなと思います。
――これからAJICOとしてのツアーも始まりますが、フル・アルバムの制作も含めて今回は継続的な活動を期待しています。
浅井 レコーディングではまたUAの番長っぷりが健在で俺にはコントロールできんかったけど(笑)、今回のツアーはみんな一丸となってやっていますね。AJICO名義の曲だけじゃなくてUAのヒット曲もいくつか織り交ぜたり、とにかくお客さんに楽しんでもらうことを優先順位の一番に置いてる、当たり前か。世界中のビッグな歌手を見てると、演出にしてもアレンジにしてもそれぞれに専門家が仕切っていて、歌手はその歌を歌う。それだけに自分の心を集める。超一流のモノを作るには、そういう体制が一番強いのかなと思う。今回のツアーは俺の意見と彼女の気持ちがちょうどあっている部分が見えるので、21年前のライヴとはまた違う世界がやれると思ってる。そうだね、今はとにかく良いライヴをやることしか頭にない。その先に何があるのかはわからないけど。俺たちもすごく楽しんでるから、みんなも楽しみにしていてほしい。
◎Profile
ときえ●1993年にニューヨークへ渡り、バンド“サルファー”として活動する。1996年に帰国、1997年にはJESSE(vo,g)、金子ノブアキ(d)と“RIZE”を結成した。同年、UAと浅井健一らの“AJICO”に参加。2001年にRIZEを脱退、中村達也率いるロック・ジャム・バンド“LOSALIOS”に加入。2006年には“unkie”を、さらに2012年には“ACE OF SPADES”を結成した。バンド活動の一方、ジャンルや世代を超えて、多数のレコーディングやライヴ、ツアーに参加している。
あさい・けんいち●1964年12月29日生まれ、愛知県名古屋市出身。1987年にBLANKEY JET CITYを結成し、2000年に解散。その後は自主レーベル“SEXY STONES RECORDS”を拠点にSHERBETS、AJICOなどのプロジェクトを発足し、ソロ名義でも活躍。音楽だけでなく詩や絵画の才能も注目を浴びており、作品集の発表や個展の開催なども行なう。2001年に活動を休止したAJICOが2021年に復活し、5月26日に新作『接続』を発表した。
◎Information
TOKIE Official HP
浅井健一 Official HP
AJICO Official HP