LUNA SEA
BASSIST：J
●2022年1月9日（日）●さいたまスーパーアリーナ

一瞬一瞬を全力で生きる。その覚悟と重み。

　2019年12月に10thアルバム『CROSS』を発表し、同作を引っさげたツアーを2020年2月にスタートさせたLUNA SEA。ツアーは、世界的パンデミックの影響により公演の延期、再延期を余儀なくされながらも、“音楽を止めない”という明確な意思のもと着実に歩みを進め、ついに、1月8、9日にさいたまスーパーアリーナにて『LUNA SEA 30th Anniversary Tour -CROSS THE UNIVERSE- GRAND FINAL』を迎えた。本ツアー終了後（1月31日、2月1日に大阪・大阪国際会議場で行なわれる振替公演終了後）に、RYUICHI（vo）が声帯にできた静脈瘤を除去する手術を受けることにともなって“充電期間”に入ることが発表されており、通常のツアー・ファイナルとはまた違った感慨を持つ公演となった。

　インダストリアルかつ荘厳なSEが流れるなかメンバーが登場し、真矢（d）のスネア・ロールとINORAN（g）のギター・アルペジオに先導されて、「LUCA」でライヴがスタート。Jは“Black Gold”のプレベを手に、音程が上がる場面でも弦移動をしない、低音弦を活用したなめらかなボトムを演出し、それが観客の体を揺らしていく。続いて、ガリガリとしたエッジィなサウンドによるJ流のロックンロール・ラインがリードする「Déjàvu」では、本来は観客とのコール＆レスポンス的に展開されるエンディングのコーラス部分をJがシャウトし、オーディエンスと感情をリンクさせていく。

　ベースのハイ・ポジションでのアルペジオ的リフが印象的な「Pulse」を経て、ブラックのマッチング・ヘッドのプレベに持ち替えた「PHILIA」ではズドーンとした深いローが冒頭で響き、ビートが入ってからは躍動する。組曲的展開をする本曲ではドラム台の横に設置されたピアノをJがプレイする場面も見どころのひとつだが、この日は、同セクションに突入する直前のRYUICHIの強烈なシャウトの熱さになんともシビれた。巨大なミラーボールが眩い光を放った「宇宙の詩～Higher and Higher～」はLUNA SEA流ダンス・チューン。グリス気味のニュアンスと休符のコントラストで躍動感を生むAメロ、大きなドラムのビートに対して16分の連打で焚きつけるサビと、Jのベース・プレイが冴え渡る。

　そして、第一部のハイライトとなったのは、スロー・テンポで幻想的な「anagram」だった。喉の事情もあり、本調子ではないであろうRYUICHIが、声をかすれさせながらも感情溢れる歌唱を聴かせる。再び“Black Gold”を手にしたJは、“ダダッダ、ダダッダ”とひたすらに同じリズムを刻む。その冷徹ともいえるボトムと、まさに魂の絶唱とでもいうべき歌のコントラストはひたすら深く美しかった。その深遠な空気感を一転させたのは、SUGIZO（g,violin）のシャープなカッティングと、底辺でウネりを生むベースが交錯する「BLACK AND BLUE」で、エンディングではSUGIZOとINORANが、本来は観客と大合唱となるコーラスを熱唱。観客もきっと“心の声”を重ねていたに違いない。RYUICHIの“俺たち5人から愛を込めて”という言葉に続けて届けられた壮大なバラード「悲壮美」では、Jがメタリック・グリーン・カラーのOPBを手にロング・トーンを主体にした深みのある低音を奏でる。エンディングではハイ・ポジションでの優しいプレイで余韻を残し、『CROSS』収録曲を中心とした第1部を締めくくった。

　換気のための休憩を挟んだ第2部は、第1部から一転し、これまでの代表曲を凝縮した内容ということで、シンプルながら力強い真矢の8ビートにSUGIZOの単音リフが折り重なって「JESUS」で幕開け。“Champagne Gold”のプレべが、アタッキーな攻撃的音色で観客を煽っていく。続いて披露されたのは『CROSS』収録の「Closer」。ベースが入ったときの太さ、ウネり、高揚感、突進力がなんとも強烈で、疾走感あふれる楽曲でウネりまくる本曲でのベース・プレイは、個人的に『CROSS』のなかでも、ある意味90年代のJのプレイを色濃く反映したものと感じていた。この位置に本曲が置かれたのは、その答え合わせとも思えたし、「Closer」に続いて演奏された「DESIRE」では、大胆なハイポジへのグリスを絡めたシグネイチャー・プレイが炸裂し、これら2曲のベース・ラインによって現在と過去が結びついていった。同じく90年代の代表曲のひとつ「SHINE」では頭打ちの軽快なドラムをドライブ感たっぷりのベースがあと押しし、観客も左右に大きく手を振って、会場全体がハズんだ。

　本ツアーでは公演ごとに異なるレア曲を演奏してきた彼ら。そのレパートリーからファン投票を募り、このグランド・ファイナル2日間では、上位2曲が披露された。前日8日には「a Vision」、そして、この日は「FEEL」。重厚なギター・リフが轟くヘヴィ・ロックと美しく浮遊するセクションが融合したドラマチックなこの曲で、Jは16ビートのウネりでサウンドを底上げした。

　ライヴもいよいよ終盤。Jがメタリック・グリーン・カラーのOPBで極上極太の低音を奏でた「I for You」は、RYUICHIの全身を使った歌唱に鳥肌が立つ。続いて、間奏で恒例のJによる“マイクスタンド・ブレーンバスター”が決まった「ROSIER」はINORANがサビのコーラスを歌い、RYUICHIをサポート。本公演ではこのようなINORANのコーラスも印象的だった。本篇最後の曲「BELIEVE」では、JとSUGIZOが向き合って弾いたり、歌とINORANのギターだけになる中間部ではRYUICHIとINORANが寄り添ったり、ギター・ソロではRYUICHIとSUGIZOが肩を並べ、真矢とINORANがアイコンタクトするなど、メンバー間の結びつきもより強固に。RYUICHIは余力を残すどころか、シャウト気味のフェイクも入れながら最後まで攻めの歌声を聴かせた。

　観客がスマートフォンのライトをつけて会場に大きな光の海を作り出してメンバーの再登場を待ち、アンコール1曲目はコロナ禍を受けて生まれた楽曲「Make a vow」。Jは、力強いRYUICHIの歌とSUGIZOの優しいギター・ソロを弾力のあるローで支え、後奏ではハイポジにも上がって空間をたゆたう。

　メンバー紹介では5人それぞれが想いを語り、真矢は男泣き。Jは“加速していくためのヒントがいっぱいあった2年間だったと思います。なんか俺たち、強くなったんじゃないかな”と頼もしいコメント。手術を控えたRYUICHIの、“光しか見えていません。その先には、もっともっと強い光があって。今日何より実感したのは、本気になれることや人生をかけられることが、LUNA SEAの音楽であること。不安を言ったらキリがないけど、そんなことよりも本気になれる人生や仲間と出会えた、そしてこの景色を見られた。必ず帰ってきます”という力強い言葉のあと、“お前ら、かかってこい！”という激しい煽りをきっかけにライヴの大定番曲「WISH」、そして、INORANがアコギ、SUGIZOがヴァイオリンを持った「so tender…」の壮大な空間でライヴを締めくくった。「so tender…」でJはネック・エンドをピッキングして太く温かみのある音を演出。包容力にあふれたそのビートは、なんとも言えない安心感で会場を包んだ。

　それにしても、この日のライヴはRYUICHIの歌唱に尽きる。喉の状態を考えれば、いつもどおりのピッチが取れないことも、声がかすれてしまうことも致し方なかっただろうし、今後のことを考えて“温存”させることもできただろう。しかし彼は、声を振り絞り、自分の“今”を全身全霊のシャウトでぶつけることを選んだ。その姿は、MCでSUGIZOが語った“命ある限り、俺たちはLUNA SEAという旅を続けます。でも、明日、誰かがいなくなるかもしれない。明日がないかもしれない。今、この一瞬一瞬を全力で生きましょう。そして、最後までお互いLUNA SEAでいましょう”という言葉ともリンクするものだった。そして、その鬼気迫るRYUICHIを、さまざまな角度から全力で支えたメンバーたち。その絆の深さを改めて感じるとともに、この“奇跡の5人”の揺るぎなき存在感が、観客ひとりひとりの胸に刻まれたライヴだった。

■2022年1月9日（日）＠さいたまスーパーアリーナ
セットリスト
【第1部】
01.LUCA
02.Déjàvu
03.Pulse
04.PHILIA
05.宇宙の詩～Higher and Higher～
06.anagram
07.BLACK AND BLUE
08.悲壮美
【第2部】
09.JESUS
10.Closer
11.DESIRE
12.SHINE
13.FEEL
14.I for You
15.ROSIER
16.BELIEVE
アンコール
17.Make a vow
18.WISH
19.so tender…

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