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【Live Report】 J – 2022年7月24日(日)/Zepp DiverCity Tokyo

  • Report:Kengo Nakamura
  • Photo:Keiko Tanabe

J
BASSIST:J
●2022年7月24日(日)●Zepp DiverCity Tokyo

積み重ねた深みと、変わらない芯の強さ。

 1997年7月24日、LUNA SEAとしての活動を休止したJは初のソロ・アルバム『PYROMANIA』を発表した。あれから25年。途切れないようにロックの炎を燃やし続けてきた彼が、1997年当時のライヴを再現する記念ライヴ『J 25th Anniversary Special Live PYROMANIA 2022 -pyromania is back-』を開催した。
 
 開演予定時刻からしばらく過ぎたあと、コロナ禍ということで静かな緊張感でJを待つ会場から自然に手拍子が起こり、荘厳でシネマティックなSEに合わせてメンバーが登場。鮮烈な轟音とともに「PYROMANIA」でライヴは幕を開けた。アルバム・タイトル曲であり、現在でもライヴの定番曲である本曲だが、強烈なキックが響く迫力のあるドラムと重心の低いベースが合わさって生まれるウネりの心地よさにはいつも驚かされる。間髪入れずに演奏されたロックンロール・ナンバー「BUT YOU SAID I’M USELESS」にしてもそうだが、シンプル極まりないリフながら、いや、だからこそ、オーディエンスの気持ちをダイレクトに煽ってくる。この高揚感は、そう味わえるものではない。

 ソロ活動では、もちろんヴォーカリストでもあるJだが、やはり本誌としては、ベース・プレイに大いに着目したい。ソロでのベース・プレイは、先ほども述べたようにシンプルなものも多いが、そのなかでもJの表現力の高さが特に感じられたのが、続けて披露された「ONE FOR ALL」と「A FIT」というミディアム・テンポの2曲だ。「ONE FOR ALL」ではギター・ストロークのような大きな振りでのオルタネイト・ピッキングを中心にしつつ、間奏などでは意図的にシンコペーションのアクセントをダウン・ピッキングで入れていたり、基本ネック・エンド付近のピッキング・ポイントをクレッシェンド部分ではブリッジ寄りに変えたりと、緩急のあるウネりを生んでいた。一方、「A FIT」は全篇ダウン・ピッキングで、ある種の緊張感を持った冷淡で直進性のあるグルーヴが、“綺麗なままでいるには どれ位汚れればいいのさ?”とシリアスに歌う切迫感をあと押しした。

  • 2022年7月24日(日)/Zepp DiverCity Tokyo

 曲に入る前に、Jがひとり、ピッキング・ニュアンスも生々しい音色でフリーキーにベースを奏でながらステージを左右に闊歩したスロー・チューン「LOOP ON BLUE」は、ズドーンとしたベースのロー感がmasasucks(g)の泣きの長尺ソロを包み、“今日は、当時の行き場のない怒りや憤りを連れてきた”とのMCを挟んだインスト曲「PUNK FLOYD」では、重厚なリフ・セクションとスペイシーな浮遊感のあるセクションを交錯させながら、キメ部分では体全体で弾くようなアクションを見せた。そして、“25年前から何も変わらない想いを込めて”と呟いてから奏でられたロック・バラード「ACROSS THE NIGHT」は、抑制されタメにタメた前半から、大サビの大きな空間へと突き抜ける展開のダイナミクス表現がなんともドラマチック。“壊れたのなら また最初から 創り始めればいいさ”という言葉が、25年のときを経て、大きく飛躍したJの歌唱とともに深く胸に響いた。

 早くもライヴは後半戦。オルタナなギターとシャウト気味なヴォーカルで煽る「WHAT’S THAT MEAN?」、テンポを段階的に変えながら躍動したブロンディのカバー「CALL ME」(1stシングル「BURN OUT」のカップリングに収録されていた)、そして突進するパンク・チューン「LIE-LIE-LIE」と駆け抜けていく。「LIE-LIE-LIE」のコール&レスポンス・パートでは、コロナ禍で声の出せない観客がより大きなアクションで応える。途中、Jはベースを置き、ステージ上手側の客席用スピーカーに登って観客を煽り(一瞬、“ダイブするんじゃないか?”と思わせる不穏な笑みを浮かべていた)、さらにはドラム前にあったスポットライト照明を肩に担ぐ。Jとしては抱えた照明で観客席を照らしたかったのだと思うが、担いだ照明からは光が出ておらず、それに気づいたJは照明を投げ捨て、“アドリブ効かねぇな! 何年ライヴやってんだよ!”と叫ぶなど、やりたい放題。記念すべき1stシングルでもあるキラー・チューン「BURN OUT」では曲終わりに“途切れないように!”と連呼し、2本目のフェンダー製シグネイチャー・モデルの名前の由来にもなった「CHAMPAGNE GOLD SUPER MARKET」(もちろんこの曲でJが手にしていたのは、フェンダーカスタムショップ製プレシジョン・ベース“CHAMPAGNE GOLD”だ)の間奏では“何年経っても変わらないものはあるって、みんなで証明しないか!?”と繰り返すなど、まさに“パイロマニア”の面目躍如でオーディエンスの心に火をつける。そんなJに煽られた観客もヒートアップし、masasucks、溝口和紀(g)、有松益男(d)という鉄壁のメンツから届けられるタイトで重厚な音塊を全身で受け止めていた。

  • 2022年7月24日(日)/Zepp DiverCity Tokyo

 アンコールで登場したJは、“あまり昔のことを懐かしんだりする人間ではないんだけど”と前置きしつつ、“これからも当時に思い描いていた自分の意志を忘れずに、とことん突っ走って行こうと思ってますんで、よろしくお願いします”と語り、この日のライヴが映像化される(オフィシャル・ファンクラブ『F.C.Pyro』会員限定商品として完全受注生産にて販売される)ことと、8月12日に開催されるバースデー・ライヴの生配信がされることを告知。さらに、“あっという間にライヴは終わっていくよ。だって、当時は1枚しかアルバムがないからね”と笑い、1997年当時のライヴと同じく、ダムドの「NEW ROSE」、シド・ヴィシャスの「MY WAY」のカバーを披露して、記念ライヴの幕を閉じた。

 以前、Jは自身のソロ活動について、“ずっと同じ絵を描いているんだけど、それをより太い線で描きたい”と語っていた。それは、もちろん作品ごとに新たな試みは取り入れ、“同じようでも以前とまったく同じではない”という螺旋階段を登るような筋の通った活動姿勢を表わしているわけだが、まさにその原点となる『PYROMANIA』を“今”の音で体感できた今回のライヴは、Jが25年という年月で積み重ねた深みとともに、どれだけ時を経ようとも変わらないその芯の強さも、改めて感じられるものだった。

  • 2022年7月24日(日)/Zepp DiverCity Tokyo

■2022年7月24日(日)@Zepp DiverCity Tokyo
セットリスト
01.PYROMANIA
02.BUT YOU SAID I’M USELESS
03.ONE FOR ALL
04.A FIT
05.LOOP ON BLUE
06.PUNK FLOYD
07.ACROSS THE NIGHT
08.WHAT’S THAT MEAN?
09.CALL ME
10.LIE-LIE-LIE
11.BURN OUT
12.CHAMPAGNE GOLD SUPER MARKET
アンコール
13.NEW ROSE
14.MY WAY

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