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【第88回】なんだかぎこちないペンタをなめらかにする技術 石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜

  • Text:Jun Ishimura

ペンタを使うとき、“なんかしっくりこないな……”ってこと、ないですか?

いろんなスケールがあるけど、ロック、ブルース、R&B、ソウル、ファンク好きとしては個人的になんだかんだ一番使っているのはペンタです。

ただ、ペンタ単体で使うとちょっと牧歌的というか童謡っぽい感じに聴こえてしまうこともあるので、どちらかというと、ペンタを核としてイメージしつつ、そこに文脈に沿った音を付け足す感じで演奏することが多いです。ペンタ単体で使う場合でも、あえてメカニカルに聴かせたい場合はともかく、普通はなるべくメロディックに聴こえるように表現します。

一応簡単におさらいしておくと、ペンタトニック・スケールは名前のとおり5音の音階で、代表的なのがメジャー・ペンタマイナー・ペンタの2種類です。例えばAマイナー・ペンタはこうなっています(注:ここでは1オクターヴ上のルートも付け加えて6音書いてあります)。

ほかの押さえ方もありますが、僕はこの形をイメージして演奏することが多いですね。左手は1の指(人差指)と4の指(小指)だけで弾いています。A音-C音-D音を4-1-4と弾いたら、4をE音までシフトしてE音-G音-D音を同じく4-1-4と弾きます。4-1-4という運指がふたつ重なっているイメージです。

次のex.1のようにAマイナー・ペンタをルートから1オクターヴ上の5度まで上がって降りてくるスケール練をする場合、これを全部ピッキングして弾くと少し硬い感じがするので、僕は例えばこんな風にスライド(s)とかハンマリング(h)/プリング(p)を使って弾くのが好きです。

こういった左手のテクニックをどこで使うかは人それぞれだけど、僕は“このフレーズのリズムはこんな感じで弾こう”という自分なりのリズム解釈をして、それに沿ってスライドやハンマリングを使っています。強弱をつけずに全部ピッキングすると“いかにもスケール練”って感じですが、下の譜例のように3音ずつ動いていると解釈して強弱やアーティキュレーションをつけると、なんかフィル・インとかで使えそうな感じもしますね。

今度はCメジャー・ペンタを見てみましょう(注:ここでは1オクターヴ上のルートも付け加えて6音書いてあります)。ほかの押さえ方もありますが、僕はこの形をイメージすることが多いです。

実はこれは、先ほどのAマイナー・ペンタと構成音はまったく同じです。Cメジャー・ペンタをA音から始めるとAマイナー・ペンタですね。

このCメジャー・ペンタをルートからオクターヴ上の3度まで上がって降りてくるスケール練をしてみます。

このex.2は先ほどのex.1を2音目から並べ直しただけなんですね。ex.1では1音目だった低いA音がここでは最後の音になっています。でも、フレーズがほぼ同じでも、スライドやハンマリングの位置がAマイナー・ペンタのときと違うのがわかりますか? このフレーズはこのフレーズで下記のようなリズム解釈をして、それに沿って強弱やアーティキュレーションをつけた結果、こんな運指になっています。

こういう風に、フレーズのリズム解釈をしてそれに沿ってアーティキュレーションをつけると、なめらかにもなるし抑揚もついて、変なぎこちなさも解消されるのでオススメです。ペンタトニック、どんどん使っていきましょう。石村順でした!

石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。

◎Information
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