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【ベース初心者のための知識“キホンのキ”】第9回 – 楽譜の読み方

  • Text:Makoto Kawabe

ここでは、“ベースを始めたい!”、“ベースを始めました!”、“聴くのは好きだけど僕/私でもできるの?”というビギナーのみなさんに《知っておくと便利な基礎知識》を紹介します。第9回目のテーマは“楽譜の読み方”です。

好きなバンドの楽曲を演奏したいときはどうしていますか? 最近はYouTubeの解説動画を観ながら弾いて覚えるなんていうスタイルも増えましたけど、じっくり取り組みたいときには譜面も便利ですよね。ということで、今回は五線譜とタブ譜の読み方を勉強しましょう。

五線譜とタブ譜、どっちが便利?

五線譜は5本の線の上にオタマジャクシ(音符)がたくさん並んでいる楽譜、タブ譜はベースの弦の本数分の線の上に数字が並んでいる楽譜ですね。日本で出版されているバンド・スコアや教則本の譜面では五線譜を上段、タブ譜を下段にして併記されることが多いですが、演奏する音符のタイミングや長さ(音価)、リズムの書き方、進行の表記などは同じです。どちらの譜面を読むにしてもこれらを覚えておく必要がありますね。

五線譜は線上と線間で音の高さを表現しています。楽曲のキー(後述)が明示され、ひと目で各音符の音名や音程(音の高さがどれだけ離れているか)もわかるので、直感的にメロディがイメージできるほか、コード理論をはじめとした音楽の法則性、つまり音楽理論を把握するには有利な表記です。ただし、五線譜を見てベースを演奏するには、指板上の音名(どこに何の音があるか)を把握している必要があります。

タブ譜は横線が弾く弦を、線上の数字が押さえるフレットを表現しているので、演奏するべき音符が直感的にわかるのがメリットですが、タブ譜だけに頼っていると音程や音名が把握しづらく、コードの理解や自発的で音楽的な演奏に発展しにくいのが難点です。

初めて譜面を読むならタブ譜のほうが簡単ですし、タブ譜は読めるけど五線譜は苦手という人も多いと思いますが、できれば両方読めるに越したことはありません。五線譜の表記のルール自体はそれほど難しくないですが、日頃から読む努力をしていないといつまでたっても読めるようにならないので、この機会にタブ譜だけでなく五線譜にも目を通す習慣をつけていきましょう。

拍子と音符の概念

音楽のリズム(この場合は)に合わせて手を叩くときに何個の繰り返しなのかを表現するのが拍子です。4回で繰り返しているなら4拍子、3回なら3拍子ですね。それぞれの拍子を1セットにして区切ったのが小節で、4回の拍を4分音符で表現すると4/4拍子、3回の拍を8分音符で表現すると3/8拍子です。楽曲の拍子は楽譜の最初の小節に拍子記号で表記されます。基本的には分数で書かれますが4/4拍子だけは“C”と書くのが慣例です。

4分音符4つ分の音の長さで全音符となります。4/4拍子では1小節分の長さです。全音符の半分の長さが2分音符、以降、半分になるごとに4分音符、8分音符、16分音符となるわけですね。1.5倍の長さには付点をつけて表現し、拍をまたぐときは音符を前後に分け“タイ”でつないで表記するのがルールです。音符が拍をまたがないようにすると譜面が格段に見やすくなるからです。また、音符と同じ長さで音を出さないという表記が休符です。

楽譜に書かれた音符のリズムやタイミングを把握するには“拍”を意識することが重要です。楽譜を俯瞰してもっとも細かい音符を見つけたら、一旦すべての音符をその音符を基準にした長さに変換して、適当な言葉を当てはめると読みやすくなりますよ。例えば16分音符を基準にするなら4分音符は“タカツカ”と読む、といった具合です。

それでは早速例題をひとつ弾いてみましょう。音はなんでも良いですが、とりあえず3弦3フレットのC音で弾いてみましょうか。譜例は16分音符なので、1拍を4つの文字で埋めて、拍を意識しつつ棒読みします。さりげなく拍をまたぐシンコペーションのリズムが入っていますが、適当な言葉を当てはめてみると……問題なくタイミングがつかめるのではないでしょうか?


リピートやダル・セーニョの意味を知ろう

同じ小節を繰り返し演奏する場合はリピート記号を使います。リピート記号で囲われている箇所を2度演奏するわけですね。1回目と2回目で違う小節を演奏する場合は1カッコ、2カッコを使います。また、最初の小節に戻って演奏する場合はダ・カーポ(D.C.)、指定の小節に戻る場合はダル・セーニョ(D.S.)を使います。ダル・セーニョは“セーニョに戻れ”という意味なので、行き先の小節にセーニョ記号をつけ、出発する小節には“D.S.”と書きます。コーダ(coda)は指定の小節に飛ぶ記号で、出発する小節に“To Coda”と書き、行先の小節はコーダ記号で表記します。通常は数回リピートしたあとに効力を発揮するので、“To Coda”があっても1度目は無視します。

似た意味のふたつですが、ダル・セーニョは過去に戻る、コーダは未来に飛ぶという違いです。また、ダル・セーニョしたあとに指定の小節で終える場合はフィーネ(fine)、コーダで飛ぶ場合はダル・セーニョ・アル・コーダ(ダル・セーニョしたらコーダに行ってねという意味)などと表記します。

五線譜を読もう

五線譜は最初に音部記号で表記される音の高さを宣言します。ピアノの場合は右手がト音記号、左手がヘ音記号で書かれた2段構成の“大譜表”を使いますが、ベースは低音楽器なのでヘ音記号で書かれた譜面になります。ちなみに音部記号はト音(G音)、ヘ音(F音)の位置を示しています。そういわれると、ヘ音記号がアルファベットの“F”に見えてきませんか?

五線譜で表記される音の高さは音名です。音名については当連載第3回でも少し解説しましたが、改めて書いておくと“絶対的な音の高さ”という意味です。下記は日本語読み、英語読み、イタリア語読みでの音名です。

音名に対して、“相対的な音の高さを示す”のが階名です。ポピュラー楽曲の多くはメジャー(長調)マイナー(短調)の音階をもとにメロディが構成されており、例えば前者は“ドレミファソラシド”、後者は“ラシドレミファソラ”という音階です。メジャーは“ド”、マイナーは“ラ”に設定した最初の音名がキーとなります。ここでの音階による表記が階名なのですが、日本の音楽教育では音名もイタリア読みしているので混乱しがちです。音名をイタリア読みすると声に出して歌いやすいというメリットもありますが、この連載では音名は英語読みで統一します。また、コード表記と音名表記を区別するため、音名にはアルファベットに“音”をつけて表記します。例えば音名がGなら“G音”と書きます。

五線譜では楽曲のキーを調号で表記します。例えばキーがAメジャーならC音、F音、G音には♯がつくので、これらの音符が出てくるたびに臨時記号で♯をつけると譜面が見づらくなります。だったら最初に♯がつく音を宣言してしまおう、というのが調号の意味です。調号があるべき場所に何もついていない場合はCメジャーかAマイナーですが、その他は下図を参照してください。♯はひとつ増えるごとに5度上(半音7個)、♭はひとつ増えるごとに5度下(4度上)のキーとなっています。ベーシストなら♯系キーの♯の数は開放弦の音名と同じなので覚えやすいはずです。

五線譜は1番下の線を第1線といい、第1線と第2線の間を第1間と言います。音の高さが五線を超える場合は加線を加えて、上第1線、下第1間などとなります。ヘ音記号の場合、第4線がF音ということなのですが、ベースで弾く場合は最初に開放弦の位置を覚えてしまうのが良いと思います。つまり下第1線のE音、第1間のA音、第3線のD音、第4間のG音です。さらに上1線のC音、第2間のC音を覚えましょう。すべての音高を覚えるに越したことはないですが、最初のうちは覚えている音高から数えて音名を把握するのが良いでしょう。

タブ譜を読む

タブ譜の横線の数は弦の数に対応しているので4弦ベースであれば4本、5弦ベースであれば5本の譜面になります。4弦ベースの場合、1番上の線が1弦(G弦)、1番下の線が4弦(E弦)になります。各線の上に書かれた数字がそのまま押えるべきフレットになります。タブ譜を見て演奏する際に、ナット側からフレット数を数えているようではらちがあかないので、3、5、7、9、12フレットにポジション・マークがあることを覚えて、ポジション・マークでフレット数を把握するようにしましょう。

おわりに

今回はベースのみならず、音楽をやるうえでとても重要な“キホンのキ”でしたね。バンド系ベーシストは五線譜に拒絶反応を示す人も多いですけど、知っていると楽しめることも増えるし、いろいろとラクになりますよ。なにしろ筆者自身の経験談ですから(笑)。もっと早く知っておけば良かったー! と後悔するよー。

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