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【第35回】ドラムに合わせるな! ベースとドラムの健全な関係/石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜

  • Text:Jun Ishimura

ベースとドラムは、“リズム体”と呼ばれたり“夫婦みたいなもの”だと言われるように、密接な関係にあります。どちらもアンサンブルの土台を担う楽器で、ドラムとベースが良ければバンド全体が良く聴こえるし、逆もまた然りです。だからこそ、“ドラムとベースが合ってない”“もっとドラムに合わせて”みたいな事がよく指摘されたりするわけです。じゃあ、そんなときどうすればいいのかというと、いろんな考え方があると思いますが、ここでは敢えて“ドラムに合わせる な”という考え方を紹介します。

なぜドラムに合わせてはいけないのか?

◎理由1 それでは合わない
“ドラムに合わせようとするマインド”で演奏していても、結局は合わないことが多いと思います。どうしても“ドラムの 音を聴く”➡“演奏する”という順番になるので、ドラムに対してベースが遅れがちになるのでは、と思います。

ドラムに頼って演奏するのではなくて、ベースはベースで責任を持ってリズムを出しつつ、自分の演奏の結果(つまり自分が弾いたベース・ライン)を、ドラムの音と同時にトータルで聴こうとするのがいいです。その結果、もしベースとドラムがズレてたら、ドラムに合わせようとするのではなくて、トータルで聴こえるサウンドがまとまるように微調整する。 この違い、わかりますかね? なかなか難しいですが、聴き方を変えるってことですね。

言うまでもなく、音楽って“聴く”ものなんですが、“聴く”にも、いろんなレベルがあります。ただ単に“なんとなく聴こえている”程度の、無意識に近い“聴く”もあれば、全神経を集中して音を受け取るような、高いレベルの“聴く”もあるわけです。で、楽器を弾いていないとき、注意力をすべて“聴く”に向けているときは集中して聴けるのですが、楽器を弾いている最中って、実はあまり聴けていないんですよ。“演奏する”っていう“行為”に注意力の大部分を向けてしまいがちで、“聴く”ことに向けられる注意力が少ないため、あまりちゃんと聴けていない状態なんですよね。

例えば、ライヴやリハをしていて“めっちゃいい感じに弾けている、気持ちいい!”と思っていたのに、録音したものをあとで聴くと、ありえないくらいハシっていたり、演奏中に“あ~、ドラムが突っ込んでいるなあ”と思ってあとで録音を聴くと、 実はドラムはバッチリで自分がモタってたり……っていう経験、ないですか? 僕はいまだにあります。で、これはまさに“演奏中は自分の音をそれほど聴けていない”のが主な原因のひとつですね。

ということで、演奏中は演奏だけに注意を向け過ぎず、自分の出した音も含めたトータルのサウンドを能動的に“聴く”ほうにも注意を向ける訓練をしましょう。そして、ドラムがいなくても、ベース単体でも安定したタイムとグルーヴで演奏できるスキルを身につけるのも大事です。

理由2 グルーヴしない
“ドラムに合わせようとするマインド”で演奏すると、“ドラムに合わせようとしている演奏”に聴こえます。要は、勢いがなかったり、グルーヴがなかったり……。

どれだけタイミングが合っていても、グルーヴしていない演奏って、聴いていて楽しくないんですよ。逆に、ドラムもベースもそれぞれがグルーヴしていれば、多少リズムの縦が合わない瞬間があっても(タイミングが合わない瞬間があっても)気にならないものです。

そんなわけで、あくまでも僕の考えですが、ベーシストとして大事なのは“ドラマーに合わせる”ことではなくて、“しっかり自分でグルーヴを提示する”ことです。もしその結果がドラムとズレているなら微調整するっていう順番ですね。これは、バンドで生演奏するときはもちろん、打ち込みのトラックと一緒に演奏するときにも当てはまります。

ということで、今は人と演奏する機会が減っちゃってるご時世ですが、ぜひ、ベースひとりでもグルーヴするスキルと、聴くスキルを磨いていきましょう!

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石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライヴや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。

◎Information
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