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【第19回】 CDと同じ音色を作るな! 音作りの落とし穴!①/石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜

  • Text:Jun Ishimura

BASS MAGAZINE Web『石村順の低音よろず相談所 ~Jun’s Bass Clinic~』の第19回です。

好きなベーシストと同じ音色、出したくなりますよね。最終的には、“誰かの真似じゃない自分の音”が出せるといいですが、その出発点として“憧れの音”があるのはいいことだと思います。

で、その音を出すために、楽器を買ったり、機材を手に入れたり、弦を試したり、ケーブルを変えてみたり、弦高やネックの調整をしてみたり、弾き方のニュアンスを研究したりしますよね。そういう試行錯誤やプロセスってめっちゃ大事なので、どんどんやってください。ただ、ひとつ、大前提として知っておかなきゃいけないことがあります。これを知らずに音作りしてるとまずいです。

それは、配信音源でもCDでもレコードでも動画でも、コンサートでもライヴでも、そこで聴こえてくるベースの音色は、そのベーシストがアンプの前で音作りした音色そのものではないっていうことなんです。

どういうことかというと、まずは録音物の場合、レコーディングの段階でエンジニアさんがだいたいコンプをかけたりEQしたりしたうえで録ってます。あと、マイクやミキサー卓の種類によっても音が変わってきます。つまり、この段階で、すでにベーシストが作った音からは変化してるんですね。で、さらにミックスの段階で、またコンプかけたりEQしたりしなかったりして、音色が変化します。ライヴやコンサートの場合も、必要に応じてPAのエンジニアさんが同じような処理をします。つまり、プレイヤーが作った音色はリスナーの耳に届くまでに加工されて変化しているってことですね。

もっと大事なのは“ほかの楽器によるマスキング”です。“ベース単体での聴こえ方”と、“アンサンブルのなかでのベースの聴こえ方”は違うってことです。例えば、ベース単体だとちょっとギラっとしてても、バンドのなかだと意外と落ち着いて聴こえるっていう場合があります。それは、ドラムのスネアのアタックやシンバル、ギターやピアノなどの高い周波数の音によって、ベースの音のギラっとした成分の周波数がある程度マスキングされて、ベース単体で聴くよりも落ち着いた音に聴こえるんですね。そういうふうに楽器同士がお互い影響しあって、いろんな周波数帯域で似たようなことが起きます。

まとめると、僕らが好きになるベースの音色っていうのは、実はベーシスト本人が音作りをしたあと、いろいろ加工されたり、バンド全体のサウンドのなかに混じり合った結果の音色ってこというですね。

しかし、音作りをするときは、基本的にはベース単体の音色を聴いて判断しがちですよね。ベースだけで“理想の音”を作ろうとしてしまいがちですが、これでうまく音色を作れたとしても、バンドのアンサンブルのなかで聴くと、結果的に、作った音とは異なった音色になってしまうんですね。ライヴやレコーディングだと、さらにエンジニアさんのさじ加減とか、会場の響きとかでも音が変わるわけです。なので、音作りをするときは、ベース単体のことだけ考えていたらダメなんです。

じゃあ具体的にどうアプローチしたらいいか、というのを次回取り上げようと思います!

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石村順でした~!

石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライヴや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。

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