NOTES

『正気じゃいられない』マハラージャン

奇才が放つ音楽センスとユーモアセンスのせめぎ合い

 現代社会をファンキー&スピリチュアルに昇華しかき鳴らす、ターバンにスーツ姿の謎多きシンガー/ソングライター、メジャー2ndアルバム。ビッグバンドが猛り狂う①、体がうずくベースとワウ・ギターとホーンの絡み、リズムの緩急を縫う言葉選びと歌が印象的な②、ムーディななかでウィットがまどろむ④など、実力に裏打ちされた音楽センスとユーモアのせめぎ合いが気持ちいい。ハマ・オカモトと澤村一平のリズム体が織りなす色気漂う⑥、まきやまはる菜のスタッカート気味のベースにときめく⑧と、優雅なダンス・ナンバーに加え、奇妙なオルタナロックの⑦、爽快で極上なメロを小気味良くキメる⑩など、奇才っぷりを存分に見せる。(冬将軍)

◎作品情報
『正気じゃいられない』
マハラージャン
ソニー/SECL-2748〜9(完全生産限定盤)
発売中 ¥3,960 全11曲

参加ミュージシャン
【ハマ・オカモト/まきやまはる菜/山本連(b)】マハラージャン(vo)、江﨑文武(k)、TAIHEI(k)、澤村一平(d)、他

『Hellfire』ブラック・ミディ

この音像であえてのリッケン、センス光る痛快プログレ

 デヴィッド・バーンのようなカリスマ・フロントマン、ジョーディと超絶テク・ドラマー、モーガンが注目されがちだが、作曲やヴォーカル、レコーディングの面でもこのバンドの核を担っているのがベース&ヴォーカルのキャメロンだ。愛用のリッケンバッカー4003は複雑に構築されたホーンやパーカッション、手数の多いテクニカルなリズムによる完璧な縦軸のアンサンブルを軽快につなぎ、ギターとのユニゾンではより増したヘヴィネスでうなりを上げる。リッケンバッカーならではのトーンとピック弾きによるトレブリーなプレイは、イエスのクリス・スクワイアさながら。“リッケン使い”の称号が彼へ受け渡される日も近い。(Natsuki Kato/Luby Sparks)

◎作品情報
『Hellfire』
ブラック・ミディ
ビートインク/RT0321CDJP
発売中 ¥2,420 全11曲

参加ミュージシャン
【キャメロン・ピクトン(b,vo)】ジョーディ・グリープ(vo,g)、モーガン・シンプソン(d)、他

『TREASURE』Wienners

新世代感覚パンク・バンドの雄が放つニュー・アルバム

 モダンな疾走感を生かしたファスト・ チューンを軸にしつつスカやサンバの要素を取り入れた①やポップなダブ感が新鮮な⑤、南国リゾートを思わせる⑦、テクノっぽい⑩、和テイストを押し出した⑪など、Wiennersが幅広さを提示してみせた意欲作。多彩な楽曲と“陽”を押し出すスタンス、カラフルな男女ツイン・ヴォーカルなどが相まって、無限にリピートしたくなる魅力を湛えた一作に仕上がっている。表情豊かな楽曲に合わせた懐の深いベースも注目で、弾力感に溢れた②④やラテン・ノリの⑦、スラップを巧みに織り交ぜる⑧⑪など、聴きどころは非常に多い。高いスキルを備えたうえで楽曲に寄り添う良質なベース・アプローチが光っている。(村上孝之)

◎作品情報
『TREASURE』
Wienners
コロムビア/COCP-41825
発売中 ¥2,750 全14曲

参加ミュージシャン
【∴560∵(b,cho)】玉屋2060% (vo,g)、アサミサエ(vo,k)、KOZO(d)

SAMOEDO』SAMOEDO

朴訥なプレイがバンド・サウンドを躍動させる要に

 菅原慎一(ex.シャムキャッツ)がnakayaan(ミツメ)、鈴木健人(never young beach)、沼澤成毅と結成した新バンドの1stアルバム。ミツメやソロ、サポートでも常に一歩引いてアンサンブルを支えるnakayaan。そのスタンスは本作も同様で、⑤⑥⑧のように必要に応じて音色を変えつつも、基本は素朴なサウンドとシンプルなフレーズを展開する。小気味よくハネた①⑦や休符を生かした②では、リズムにバリエーションをつけ心地よいノリを創出。③④では歌うようなベース・ラインと粘りのある音色も印象的で、ニュアンスが伝わる演奏は血の通ったサウンドを生み出す。一聴すると朴訥なプレイが、楽曲を躍動させる要となっている。(神保未来)

◎作品情報
『SAMOEDO』
SAMOEDO
NOTT/NOTT-005
発売中 ¥2,970 全8曲

参加ミュージシャン
【nakayaan(b)】菅原慎一(vo,g)、鈴木健人(d)、沼澤成毅(k)

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