NOTES

『LOST IN TOKYO』SOIL&”PIMP”SESSIONS

ウッドならではの豊かな表情の心地よさ

 “DEATH JAZZ”を標榜する5人組の約2年半ぶりのオリジナル作品は、“東京”をテーマにしたコンセプト作だ。インスト曲を中心に、ゲスト・ヴォーカルとしてSKY-HIと向井秀徳をフィーチャーしている。ベースは、キックとシンクロしながら音価を調節して点で置いていくプレイとキックと交互に鳴らされるウラ打ちのルート弾きがコントラストを生む②、スライド感を生かして高音域から下がるループ・リフの④、ディストーションにも思える圧力の高い攻撃的音色の⑤、エレキのようなアプローチのファンキーでハズむリフながら独特の太さとサステイン感がおもしろい⑦など、ウッド・ベースならではの豊かな表情が心地よい。(中村健吾)

◎作品情報
『LOST IN TOKYO』
SOIL&”PIMP”SESSIONS
ビクター/VICL-65701(通常盤)
発売中 ¥3,330 全12曲

参加ミュージシャン
【秋田ゴールドマン(b)】社長(agitator,prog)、タブゾンビ(tp)、丈青(p)、みどりん(d)、向井秀徳/SKY-HI(vo)

『early summer 2022』小田和正

歌ものサポートの教科書的なセンスとサウンド

 ソロ歌手として全国アリーナ・ツアーを行なう最年長アーティストの記録を更新すべく、“こんど、君と”と題したツアーを敢行中の小田和正が6月に発表した、8年ぶり通算10枚目の新作。おもに人気テレビ番組のテーマ・ソングが集められ、松たか子や矢井田瞳、JUJUといった豪華なゲストが参加している。ベースはオフコース解散後1枚目、通算3枚目のソロ・アルバム『Far East Café』以来の常連となるネイザン・イーストで、それぞれの楽曲に自然と馴染んでアンサンブルを支えるパフォーマンスはさすがといったところ。それに加えて、②のエンディングでのハーモニクスや、③や⑨の美しいカウンター・メロディにも趣味の良さが発揮されている。(坂本信)

◎作品情報
『early summer 2022』
小田和正
アリオラジャパン/FHCL-3009
発売中 ¥3,300 全9曲

参加ミュージシャン
【ネーザン・イースト(b)】JUJU/松たか子/矢井田瞳(vo)、矢井田瞳(vo)、木村万作(d)、佐橋佳幸(g)、望月英樹(prog)、他

『A LIGHT FOR ATTRACTING ATTENTION』ザ・スマイル

トムとジョニーのベース合戦

 レディオヘッドのトム・ヨークとジョニー・グリーンウッド、そしてドラムはUKジャズ・シーンを牽引するサンズ・オブ・ケメットのトム・スキナーによる新バンドのデビュー作。ベースはジョニーが6曲、トムが3曲をプレイしている。レディオヘッドと同様に7拍子や11拍子などの複雑なリズム構造を持った曲が並ぶが、スキナーのしなやかなドラミングの貢献が大きいのだろう、難解な印象は感じさせない。近年のソロのライヴではよくベースを披露していたトム(指弾きも見事だ)による⑤でのポリリズムの幾何学的フレーズ、④や⑩でのジョニーのサイケ期ビートルズ風のオクターヴ・フレーズなど、痛快なベースさばきが目白押しだ。(辻本秀太郎)

◎作品情報
『A LIGHT FOR ATTRACTING ATTENTION』
ビートインク
XL1196CDJP
発売中 ¥2,860 全14曲

参加ミュージシャン
【トム・ヨーク(b,vo,g,p,k)、ジョニー・グリーンウッド(b,g,p,k)】トム・スキナー(d)、他

OUTLAST』ADAM at

“ADAM at”というジャンルで自在に躍動する低音

 ヘヴィなバンド・サウンドとラテン・ピアノが絡む情熱的な表題曲で幕が開く1年ぶりの新作は、活動10周年を彩るアニバーサリー・アルバム。美しいピアノがメタルと融合する④、FRONTIER BACKYARDからヴォーカルとドラムが参加するエレクトロな音像の⑤など、さまざまジャンルのサウンドを掛け合わせ、ADAM atらしい楽曲に昇華させている。彼が敬愛するフィーダーのグラント・ニコラスを迎えた②は壮大で感動的。また永田雄樹のアプローチは、①の激しいスラップ・ソロ、⑤のエレキ・ベースとシンセ・ベースのユニゾン、豊かなウッド・ベースが響く⑧⑨など、多才さが光る。ADAM atのレンジの広い音楽性を感じる一枚だ。(座間友哉)

◎作品情報
『OUTLAST』
ADAM at
ビクター/VICL-65702(通常盤)
発売中 ¥2,750 全10曲

参加ミュージシャン
【永田雄樹(b)】ADAM at(p)、グラント・ニコラス/TGMX aka SYUTA-LOW TAGAMI(vo)、福田”TDC”忠章(d)、橋本孝太(g)、SYU(g)、やのっく (d)、他

『Blue Smell』シナリオ・アート

“空間”を支配する、多角的低音アプローチ

 紅一点のドラム・ヴォーカル、ハットリクミコを擁する3人組の2年ぶりとなる4枚目のフル作は、ドリーム・ポップ/エレクトロ/ギター・ロックなどをかけ合わせた、文字どおり“アート”のような11曲で構成されている。ベーシスト・ヤマシタタカヒサのプレイは、ドッシリとした存在感を保ちつつ、曲ごとに表情を変える。ドラマチックな展開が感極まる①での、セクションごとに音づかいを操る多彩なフレージング、変拍子を駆使した疾走感溢れる③でのドライブ・ベース、彼らの初レコーディング楽曲を10年ぶりに再録した⑦では、ベーシストとしてバンドを支えてきた真価をメロディアスなフレージングとともに披露してくれた。(加納幸児)

◎作品情報
Blue Smell
シナリオ・アート
es.faction/ESFAC-0002
発売中 ¥3,300 全11曲

参加ミュージシャン
【ヤマシタタカヒサ(b)ハヤシコウスケ(vo,g)、ハットリクミコ(vo,d)

『クロージャー/コンティニュエイション』ポーキュパイン・ツリー

モダン・プログレッシブ・ロックの旗手の旗手、貫禄の復活作

 モダン・プログレッシヴ・ロックの旗手が13年ぶりに再始動。動と静が2曲ずつ対比するような構成で、その振り幅は相変わらずとも言えるが、これまでの理知的な描写とは異なる肉体的な躍動感を強く感じられる。その顕著な例が①で、ファンキーかつトリッキーなリズム・アンサンブル、特にギャヴィン・ハリソン(d)の頭と体をフル活用したプレイは必聴だ。また、③⑦のユニゾン・プレイや④中間部のソロなど、いつになくおいしくフィーチャーされているベースも聴きどころ。クリス・スクワイアやグレッグ・レイクの面影も感じられ、メタルからの接近ではない、あくまでもプログレッシブ・ロックの進化としてのスタイルを感じさせる。(山本彦太郎)

◎作品情報
クロージャー/コンティニュエイション
ポーキュパイン・ツリー
ソニー/SICP-31546
発売中 ¥2,750 全7曲

参加ミュージシャン
【スティーヴン・ウィルソン(b,vo,g,k)リチャード・バルビエリ(k)、ギャヴィン・ハリソン(d)