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    日野“JINO”賢二が教える“ロジックとフィーリングの両面”

    • Text:Takahisa Kondoh
    • Photo:Takashi Hoshino

    SPECIAL INTERVIEW

    日野“JINO”賢二(JINO’s School of Music校長)

    2019年春に開校以来、海外経験豊富なトップ・ミュージシャンによる実践的な授業により、ミュージシャンとしてのさまざまなスキルを伝授しているJINO’s School of Music。生徒の特性や要望に合わせた授業を行なう独自のカリキュラムが好評の当スクールであるが、この秋より、3期生の募集がスタート。校長である日野”JINO”賢二に、授業における取り組みについて、熱い思いを聞いた。

    ◎JINO’s School of Music校長:日野“JINO”賢二
    幼少期から約30年をニューヨークで過ごし、音楽と芸術の名門“ラガーディア高校(LaGuardia High School of Music & Art and Performing Arts)”を卒業。ジャコ・パストリアス、マイルス・デイヴィス、マーカス・ミラー、ロバート・グラスパーといった、数々のグラミー賞受賞ミュージシャンと共演、今も彼らから厚い信頼を得ているベーシストでありコンポーザー、プロデューサーでもある。2003年に帰国後は、MISIAやAI、Def Techなど数多くのアーティストのライヴ・サポートを行ない、アレンジャーやプロデューサーとしてBoyz II Men、西野カナなど数々のレコーディング・ワークスなど、第一線で活躍している。その彼が立ち上げた音楽スクールが、JINO’s Schooi of Musicである。
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    スケールを覚えたあと、それを忘れて自然にプレイするっていうことを教えている。

    ──昨年、JINO’s School of Musicが開校しましたが、これまでを振り返っていかがですか?

    生徒たちがどんどんうまくなって成長していくのを見るのは嬉しいね。すでに自分たちのセッション・イベントを開催している生徒もいて。ある晩、セッション・バーに寄ってみたら、その子が演奏していたっていうこともあった(笑)。そういったときは本当に喜びを感じるね。

    ──受講者のなかでも、レベルの違いやそれぞれの個性もあると思うのですが、どのように接していますか?

     レッスンでは質問コーナーを設けたり、“自分は何を乗り越えて、1年後にどういうふうになりたいか?”っていうことは、全員に聞いているんだよね。そうやって、生徒ひとりずつ、自分の進みたい方向に背中を押したいと思ってる。俺自身、“校長先生”っていうイメージじゃなくて“JINOさん=ベースのうまいフレンドリーなおじさん”みたいな感じだと思うんだけど(笑)、だから“一緒にジャムりたい!”って言われれば“いいよ!”って一緒に演奏するし、そのなかで、“アドリブしてごらん”って導いて、例えば“ここはEペンタトニック・スケールでやるのもいいけど、次にやりたいことはない?”っていうことを提案したりとか、“じゃあ、ディミニッシュはわかる?”って聞いて、知らないっていうことであれば、いろんな方法があることを教えたりして。もちろん、ペンタトニックしかやらない人もいるし、それぞれのやり方でいい。そうやって、いろんなアイディアを提示していくことが大事だと思っているよ。

    ──スケールなどの理論も学べるのでしょうか?

     スケールは基礎なので、当然ながら教えるけど、スケールをなぞるだけではなくて、それをどうやって“音楽”にするか、そういったアドリブのコツを教えるのが、この学校ならではだと思う。そもそも“モード”っていう概念は、他パートとコミュニケーションするためのインフォメーション(=案内)だと思っていて。“このスケールを弾きます!”じゃなくて、スケールを覚えたあと、それを忘れて自然にプレイするっていうことを教えてる。普通、“スケールを覚えないといけないんだよ”って学校で習うじゃない? でも、さらに“覚えたことを忘れてください!”って言うんだ。

    ──そのほか、アドリブを取るための具体的な手法も伝えたり?

     例えば、“ベース・ラインとメロディを覚えたので、アドリブしてみよう”っていう場面になったら、“トーナリティ(=調性)を探せ”と伝えている。コード進行をすべて追って弾くのもOKなんだけど、曲全体をもっと大きく捉えて、この曲のトーナリティは何か?っていうのを探す練習もしているね。

    ──理論以外のことも伝えることは多いのでは?

     今の時代は少し難しいかもしれないけど、“クラブに行って踊りに行け”とはよく言っているね。ダンス・ムーヴによって、8分音符や16分音符のクイってどういう感じなんだろうって体感できる。踊ることでリズムが理解できるんだ。あとは、アクセントもベーシストにとって大事。8分音符でルート音を弾き続ける場合、8分音符のルート弾きを“つまんないな”って思って弾いている人と、反対に、アクセントだけでリズムを変えることを体感できている人とではグルーヴが変わるよね。

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